第47話 やっぱり尾行されてたっぽい
クリスティーナさんに足止めを食らっていた男がしっかりと合流した。
「それで、キラさんたちは何してんだ?」
「尾行がバレた」
「マジかよ。全員!?」
カムロと呼ばれた男が目を丸くしてみてくる。私は笑っておいた。
内心は違う。と心臓がバクバク鳴っている。これ心臓の音気づかれてたら恥ずかしい。
視線が外れているうちに消えれへんかな……。
『シャドウステップ』
「ん」
「逃げたな」
「あの子学習しませんね……」
走り出したら、急に腕を掴まれて転んだ。
「わぁっ!?」
「……すまない」
猫耳ローブの人、しゃべれたんや。
男は自分の腕を見て、力加減を確かめるようにグッパーしていた。
すっ転んだ留美は目をパチクリとさせて見上げる。打った場所は痛いし、擦った場所も痛いけど。一瞬で反応してきた人に対して、純粋にときめいていた。
すごいっ。と。
猫耳ローブを着ている男の後ろに、彼の仲間の三人がいた。
砂を払って立ち上がると、笑いたいのを必死に堪えて、手で顔を隠す。
留美もさっきの出来るようになるかなっ。うんん、出来るようにするんや。うひひっ、相手の跳ぶ位置を予想して追いかける、か。
…………留美、練習に付き合ってくれそうな友達おらんかった……。
「うん? 結局何の用なんですか?」
「用事はない。見つかったのは予想外で、君の人どなりでも見れたらなって」
「ついて来ないで下さい」
「どうせ君のスキルじゃ振り切れないんだから諦めたら?」
確かにその通りや。
留美はここに来たばかりで、スキルのことも全然知らない。必死に逃げてたのに、ずっと距離を保つようについてきてるこの人たちから逃げられない。
覚えてるスキルの数も凄いやろうし。どうあがいても誰一人勝てなさそう。しかも一人は留美じゃ感知できひんし。
それでも『シャドウステップ』
あっちが諦めるまで逃げ回るしか出来んのなら、そうするしかない。
走り出した私に四人はついてくるようだ。
「時間の無駄だってのに……」
「嬢ちゃん遅いなぁ」
「探知に特化してるとかですかね?」
なんか煽られてる。
いつまでついてくる気やろう。
そんなことを考えていると、クリスティーナさんに止められてた男が楽しそうに笑う。
「アハハハ。堂々と追っかけんのな」
「バレたしな」
めっちゃ怖い!
逃げろ逃げろ。人混みに紛れて。細い入り組んだ道を使って。置いてある箱を倒して通せんぼ。ちゃっかり箱積み直してるし……。
逃げても逃げても振り切れん。体力バケモンかよ。
ついに体力の限界がきて、私は止まる。
こっちの体力ないだけか……も。
うっ、酸素が。頭クラクラする……。
あ、急に止まると、体に悪い。
息絶え絶えの私はトコトコと歩く。そしてそれに堂々と付いてくる四人。
「はぁ。はぁ。全く、……いつまで、ついて……来るんですか……」
「さぁ。何時までだろうね」
青い髪の青年は少し息が荒い。
黙ったままの人は、よくわからない。
ギルドで捕まっていたカムロさんはまだ大丈夫そうだ。
チャラそうなキラさんは、少し汗をかいている程度。
全く撒ける気がしない。……なんで、留美、追いかけられてるんだろ。
「そういえば、何を目的としてるんでしたっけ?」
「ん? 君の事が知りたいなーって」
「はぁ。えっと……はぁ?」
ぺたりと腰を下ろす。
「とりあえず、私が倒したものを直してくれてありがとうございます」
「お、おお」
戸惑ったキラさんを見上げながら考える。
やっぱ答えはアルさんかな……。昨日ってことはないやろう。……たぶん。
「原因はアルさんですか?」
「分かってるなら大人しく……うん? なんで執拗に追いかけてんだ俺たち?」
「あいつなんかヤバいって、ロヂナが騒いだからだろ」
「無害だって見てくるって話でしたよね?」
え、なにそれ。留美ただ怖がらされただけってこと? 人工的な肝試しかな?
はぁ? ふざけんな。石投げんぞ。
「貴方達のせいで余計な汗かいたじゃないですか」
「いや、それは君が逃げるから」
「追いかけられたら、逃げますよ」
私がムッとしたら、キラさんも不機嫌そうに態度が悪くなる。
「お前が怪しい動きするから、ついこっちも敵追いかけてる感じになったんだろ」
とりあえず偉い人の護衛? ってことがわかったて。
えっと、仲間が怪しんだから、この人らは無害確認のために追ってきたけど。留美が怪しい動きしたから、怪しんだって感じ?
四人で追ってくるのはちょっと戦力過剰じゃない? 暇なん? 暇なんやろうなぁ……。
留美が思ってたみたいに強盗じゃないっぽいし、……違うよな? いやまだ分からん。
「あの、アルさんの赤い髪って染めてたりします?」
「は? アル様の髪は黄色だぞ」
「目、大丈夫ですか? あの綺麗な黄色が目に映らないなんてどうかしてます」
嘘吐きの強盗じゃないっぽい。少なくともあのお店のアルさんの知り合いではあると……。そんでもって、様付けってことはほんまに部下なんかもしれん。
あぁ、めっちゃパニクさんの目が冷たいよっ。
「疑いは晴れたか?」
キラさんには私が確認したかったことがバレているようだ。恥ずかしいぃ。
指先を弄びながら、気まずげに見上げる。
「えっと、まぁ。アルさんと関係ある人で、強盗じゃなさそうだとは……思いました」
「えっ、僕らのこと強盗だと思ってたんですか!?」
「まぁ確かに、大人四人に追いかけられたら怖いよな……」
「ああキラさんの言った疑いが晴れたって。さっき髪の色間違えたのはわざと……そういう。……嬢ちゃん疑り深いな」
疑り深くもなるわ!
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