第4話 あれから一ヶ月ちょっと…
そんなこんなであの日、不意に女子校生とコミュニケーションをとるなんてイベントがあった太郎。
あの日から約一ヶ月ちょっと…
ここは太郎が勤める㈱猫丸産業。
この会社は現会長であるアメリカ人の《猫丸パルプ》氏が戦後日本人女性と結婚、帰化して築き上げた貿易会社が起源である。
そして現在…
業界内ではナイスミドルな恐妻家で有名な二代目の《猫丸翔利(しょうり)》氏か社長に就任し事業を拡大した会社なのだった。
その本社ビル2階にある生え抜き部署として名を馳せた第二営業部。
なんとあのコミュ障の太郎が課長としてこの部署をまとめあげてるのはにわかに信じられないのだが…
ここは以前プレゼンが通った企画イベントも先週無事に大成功を収め、今はその時契約に至った受注を各メーカーに発注する手配に追われていた。
そんな午後の休憩時間…
「え?課長…本当に連絡先とか交換しなかったんですか!」
営業部の切り込み隊長的位置にいる太郎の部下、お調子者の諸星は、何気に話したあの日の出来事を聞いて信じられないといった顔をしながら太郎を咎めた。
「ん?世間話以外別にする必要は無いだろう、逆にその娘も聞かれたら気持ち悪いだろうし」
太郎は何故そんな驚かれるのか理解できず、ちょっぴりムッとしながら言い返した。
「それ勿体無くないですか?まぁ〜その女子校生は年齢的に無理でも、知り合いに年上でフリーの女性とかいるかもしれないじゃないですか」
そんな二人のやり取りに第二営業部の主任である早田も諸星の言葉に賛同し追加攻撃を仕掛けてきた。
太郎より一つ年下でありながら妻帯者である彼の言葉は、諸星の驚きを補足するには充分な重さがある。
「そうですよ〜♪折角のチャンスだったのに、また婚期を延ばしちゃいましたね(笑)」
トドメはこちらも既婚者であるミセス北都の一言だった。
他にもこの部署は、外回にでている剛と東を合せて六人で構成されている。
おそらくこの二人も太郎の話を聞いたら他のメンバーと同じ反応をするだろう…
まぁ〜
皆仕事は出来るがそういう所が変に不器用な太郎の事を慕っているからこそ出てくるセリフなのだが。
「別にいいだろ、さぁ無駄話もいいがそろそろ仕事にかからないと今夜の打ち上げに間に合わなくなるぞ」
自分が不器用だと自覚しているから強く否定出来ない太郎は、取り敢えずその場の不味〜い空気を変えようと話題を変えていた。
奇しくも今夜はイベントの大成功を祝って、太郎の部署では、飲み会を主催していた。
それをこの空気の仕切り直しのネタにして躱そうとする太郎…
「「「は〜い」」」
しかし…
『そ、そうか〜!そんな事考えもしなかった…』
心の中でそんな反省を真剣にしている…
当の本人は色々ハードルが高いと思いはしているものの、少なからず結婚願望は心の片隅に持ってはいるらしい(笑)
ちなみに彼は仕事になるとスイッチが入り、プライベート時のコミュ障とかの部分を微塵も表に出さない。
ある意味流石プロである(笑)
※まぁ〜社内では周知の事実なのだけど…
…一方…
ここは一ヶ月前にオープンしたばかりのコスプレ衣装をメインにオリジナルブランドの服や小物を展開しているブティック《HANAKO》♪
店舗販売は勿論だが、特にネットや来店するお客様の口コミで、かなり精密なコス衣装をリーズナブルな価格帯で制作してくれると噂が広がり、オープンして数日で上々の繁盛ぶりを発揮していた。
そんな店内では…
「ハナっちさ〜なんか変じゃねぇ?」
お客様がいない時、溜息混じりで《心此処に在らず》的なオーラを振り撒きながらディスプレイの整理をするあの女子校生が働いていた。
今日は制服じゃなく、見えそうで見えない位際どくて派手な服装でキメている。
その彼女だが…
実は…
先月の追試の結果、無事単位を取ることに成功して高校を卒業できた。
その後、母親がオーナー兼店長をしているこの新店舗のブティックで、接客及び経営者修行&デザイナー見習いとして三人の同級生と一緒に働いているのだった。
「あ〜アレね♪
こちらも彼女に負けず劣らず、かなり派手な服を着こなしながらパソコン作業をしてるこの細身の女性…
華恋(ハナコ)の同級生の一人、凛夜(リンヤ)は、ちょっぴり呆れた感じで彼女に視線を泳がせながら、自分に話しかけてきたもう一人同級生…
淫靡なフェロモン全開なセクシーな服を着こなす茅野(カヤノ)の問いに答えていた。
「はぁ〜〜?ハナっちの方からか!」
「しかもメタボでハナっちよりちっせ〜ダサいおっさんだって」
驚く茅野に追加攻撃をする様に更に詳しく詳細をリークする凛夜。
そこに補充用の服を奥から大量に持ってきた後一人の同級生…
ちょっぴりふくよかで超巨乳&セクシーなゴスロリ服を着こなす麻音(マノン)が、もっと衝撃的な事実をぶっこんできた!
「あ、その枯れオジって
「「マジそれ!?」」
「マジマジ♪だって
「なぁ…もしかしてそいつ…スゲ〜テク持ちでさ、一発でハナがハマったとか?」
更に驚く凛夜に、麻音が持ってきた服をテーブルに置きながらその事実をサプライズすると、それを聞いてふと茅野がニヤつきながらスケベな事を想像してそんな疑問を口にだしていた。
「違う違う♪ほら〜この店の開店準備で超〜忙しくてなにも食べずに徹夜した日があったじゃん、その次の日の帰りになんでか公園でメシ奢ってもらって、ちょっとダベっただけらしい…」
そうなのだ。
実はあの日の前日、華恋は高校で一人追試を受けた後、制服のままこの店のオープン準備の作業に徹夜で取り掛かっていたらしいのだ。
「なんだ餌付けか〜(笑)でもマッちん、よくそんなとこまで知ってんじゃん」
笑いながらそう答える麻音に、凛夜はまた別の疑問が頭に浮かび彼女に質問した。
所で余談なのだが普段四人は…
華恋=ハナっち
凛夜=オリン
茅野=カーヤ
麻音=マッちん
と、呼び合う程の
「あ〜それね♫聞こえたのよ…
「ふ〜ん…あのハナっちがね…」
「ハメ放題、食べ放題のハナっちがさ…」
※勿論性的な意味である(笑)
「オトメじゃん…」
「「「ウンウン」」」
「…アンタ達…聞こえてんだけどさ〜(怒)」
本人が側にいるにも関わらず言いたい放題言っている三人…
どうやら話に夢中になり過ぎて、華恋が近づいている事に気付かなかったらしい。
「オラーー!逃げんなし!!」
色んな意味で《怒MAX》状態の彼女は、後退りする彼女らを捕獲し懲らしめようと、にじり寄って行ったのだった。
顔をほんのり赤くしながら…
…続く…
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