第81話 金髪イケメン


「アキ、どうして……」


「……」


 スノウさんと向かった先には彼がいた。

 落ち着いたホテルのみたいな病室だ。


 アキ君は、病衣のまま目を瞑っている。

 本当に眠っているようだ。


「……治癒師、この世界で言う、お医者さんが言う所では……原因がわからないみたいです、で、でも、それってほら、悪い所は無かったって訳ですから……」


「なるほど」


 ふむ、確かに見た所何も変わった所はない。

 アキ君のちょんぎれていた腕は、俺が鮮血血盆経典で完全な縫合を施している。

 ふ、ライフ・フィールドの手術ミニゲームのおかげだ。


「……アキ、ごめんなさい、私は、また……何もできない、無力だ……」


 スノウさんはまたなんかダウナーになっている。

 ふむ、ここはあれだな、俺の愉快な学園友情シナリオの為に少し動くか。


 呪力眼。

 これでアキ君の身体を検査する!!


 ……あれ?

 なんかもうアレだな、既にこれ、アキ君おかしいぞ。

 頭の周りに、アキ君のものじゃない魔力が渦巻いている。


 ふむ、なーんかこれが悪さしているような――。



 コンコン。


 ノックノックノック。


「……すみません、どなたかわかりませんが、今は身内で看病をしています、また別の機会にしてくださいませんか?」


 スノウさんが、扉に向かって答える。


 こんこんこん。

 ノックノックノック。


 止まらない。

 スノウさんの言葉は届いているはずなのに。


 そして。


「やあ、失礼するよ。アキ・フォン・シュバルツの病室で合ってるかな?」


「お……?」


 なんか、凄い金髪イケメンが現れた。

 すげえ装飾のついたキラキラ衣装。

 髪まであるおかっぱロング。


 エメラルド色に輝く瞳に、小さな顔。


 アキ君からつっけんどんな感じを覗いた綺麗なアキ君みたいな感じだな。



「あなたは……なぜ、ここに……」


「おいおい、そんな冷たい事言うなよ、スノウ?」



 苦虫をかみつぶしたような顔のスノウさん、きらりと白い歯を輝かせる王子様イケメン。


 おお、スノウさんのこういう表情見るのは初めてかも。



の兄が倒れたんだ、様子を見に来る事くらい当たり前だろ?」


「……殿下のお気持ち、ありがたく。しかし、私達の関係は、あくまで婚約者候補、ですね。それも貴方の妾の」


「帝国の男は正妻も妾も同様に愛するものさ。ああ、アキ、残念だ、君がいないと張り合いがないね。ふふ、君を守る忠実な犬もこうなっては形無しだね」


「……アキは犬ではありません、訂正してください」


「おっと、これは失礼、番犬の間違いだったかな」


「え、両方犬じゃん」


「……そういえば、君は? あまり見た事のない顔だけど、学園の生徒かい?」



 おっと、ついネームド同士の会話に入ってしまった。

 ふむ、なんかこいつからは……主要キャラの香りがしないな。

 興味ないや。


「あ、はい」


「ふーん、その顔つき、転生勇者かい? スノウ、友人は選ぶべきだよ、君の品位に関わる」


「お生憎ですが殿下……友人は自分で選びます」


「ははは、ほんと、生意気な女め、可愛いね、スノウ」



 2人の会話のすみっこ。

 空気になりつつ、俺はまたこっそり呪力眼を使う。


 うん? なんかあの金髪イケメンのつけてる指輪……魔力が漏れてるな。

 ……あの魔力、アキ君の頭にまとわりついている魔力と同じ……?



《プレイヤー、どうやら彼の装備している指輪、アレは、アーティファクトのようです。強力な精神魔法が込められています》


 うん? どういう事?

 それってまさか。


《はい、どうやらアキを眠らせているのは、彼の仕業のようですね》


 おい、マジか、どうしてまたそんな真似を?


《不明です、彼にとってアキが邪魔だったとか?》


 なるほどね。

 そうかそうかよくわかった。


《プレイヤー?》


 つまりこいつ、俺のシナリオを邪魔しようとしている敵、だな。


《敵認定が早い》


 しゃ、邪魔したろ。

 とりあえず、アキ君の頭に纏わりついている魔力剥がすか。


 こそこそ、スニーキングでアキ君の傍に移動。


「くくく、スノウ、その生意気な態度、君は本当にかわいい子だね」


「まあ、ありがとうございます、殿下。しかし、やはり殿下には許嫁様がお似合いですわ。彼女の可憐さと比べれば私などとても、とても」


「ふ、花に貴賤はない。どの花にもその花独自の美しさがあるというもの。だが、君の一番の可愛さは、その仮面と内面のギャップだ。完璧な貴族としての顔の裏にある、儚くて脆い少女の顔を、剥いてみたい……」


「ふふ、殿下。女性に幻想を抱きすぎでは?」


 スノウさんと金髪イケメンはなんか貴族トークしているし。

 うーん、この魔力……あーはいはい、アキ君の脳みそに干渉してんな。

 なるほど、なら、まあ、うん。


 アキ君が死なない程度に、呪力を流し込んで――。



「おっと、君、何をしようとしているんだい?」


「あ、いや、別に」


 普通にばれた。


「別に……? 随分な口の聞き方だ、僕が誰だかわからないとは言わないよね」


「……」


 誰だ? 

 もうめんどくさいから殺していいかな。


 ――殺すか


 う~ん、でも、スノウさんに見られるよな、この場所だと。

 異世界ファンタジー難しいぜ。


「うん? 君、待てよ……まさか……君、あのG級ギフテッド、家無し、か?」


「あ、はい」


 俺がそう答えた瞬間、金髪イケメンは表情を変えた。





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