第5話:此先家に訪ねてきた二人組。

「おはよう〜ミッチー」

「お〜き〜て〜」


「え〜〜頼むからさ〜もうちょっと寝かせてよ・・・」


「本当に寝起き悪いね」

「起きないとまた顔じゅう・・・」


「分かった・・・分かった、起きるから」


僕はしぶしぶ眠気まなこで目をこすりながら上半身だけ体を起こして、目も前に

いるシャーベットを見た。


「誰?・・・」


「また寝ぼけてる?・・・私、シャーベットだよミッチー」


「え?だって・・・頭、ちゃんと髪あるし、しかもスーツ着てないし・・・」


「髪はウィグだよ、イメチェンしたの」


「イメチェン?・・・なんでまた?」


「だってミッチー、このほうが人間の女の子みたいでいいって言ったじゃん?」


「ああ、たしかに言ったな・・・それでなの?」

「起きたらいきなりそれだから、驚くだろ?」


「サプライズだよ・・・でも嫌なら元に戻すけど・・・」


「いや、いや、いや、いや・・・戻さなくていい、それがいい」

「もうずっとそれでいい」


親父も普通の女の子になったシャーベットを珍しいものでも見るみたいに、

何度も見ていた。


「お父さん、私どこか変ですか?」


「あ〜いや、そんなことはないよ・・・うん、いいんじゃないか?新鮮で」


「さ、ふたりとも朝食にしましょ?」


僕も親父も黙ったままトーストをかじりながら、ちらちらシャーベットを見ていた。


「あの、ふたりとも、私の顔になにかついてる?」


僕も親父も同時に首を降った。


「あの、この姿が気に要らないのなら元に戻りましょうか?」


僕はすがさず言った。


「反対」


親父がつづいて手を挙げた。


「私も反対」


「じゃ〜珍しいものでも見るみたいに、じろじろ見ないで」


見るなと言うほうが無理だよ・・・だって、めっちゃ可愛いんだもん。


朝食のあと親父は早出だって言って先に家を出た。

で、僕とシャーベットがまったりしてたら朝早くから玄関のチャイムが鳴った。


「あら、誰かしら・・・宅配便?」


シャーベットがドアを開けるとサラリーマンふうの男がふたり立っていた。


「つかぬことをお伺いしますが・・・こちらにシャーベットさんとおっしゃる

方がいるとお聞きしたのですが?」


キッチンから見えたその人たちはサングラスをかけた怪しげなアジア人?

日本人じゃなさそうな男がふたり。


「あの・・・どのようなご要件で?」


「シャーベット・・・誰?」


僕がシャーベットの後ろから声をかけた。


「それがね、私に用って人が来てるんだけど・・・」


「あなたがシャーベットさん?」


二人組の一人が流暢な日本語で言った。


「はい・・・ですけど、私に名前を確認するってことは、あなたがたは

私を一度も見たことないってことですよね 」


「そんなことはどうでもいいんです・・・余計なことは言わず私たちと

一緒に来てもらいましょうか?」


「知らない人について行っっちゃいけないんですよ」

「小学生の時、親や先生から教わりませんでした? 」


ふたりの男はお互いの顔を見合わせてから、ひとりの男が言った。


「わけの分からないことを言って拒否するなら強制的に連行しますよ 」


「私は此先家の家族です」

「あなたたちに勝手に私を連れていく権利はありません」


僕は辛抱たまらず急いで玄関に走った。


「あんたたち、なんなんですか?」

「いきなり失礼だろ?」

「本人が嫌だって言ってるんだから・・・帰ってくれ!!こっちはあんたらに

用事なんかないんだ」

「私達も無理強いはしたくないんですがね・・・」


「どうぞ、おひきとりください」


僕は男たちに強めに言った。


そしたら男のひとりが僕に手を出そうとしたので、シャーベットは

めっちゃ早い速度で、その男の腕を持ってひねった。


「あいたた・・・痛いだろう?・・・離せコラ」


「おとなしく帰ります?・・・それとも警察呼びましょうか?」


「いたたたたた・・・わ、分かった、分かった・・・だから手を離してくれ」


シャーベットは男の腕を掴んでいた手の力を緩めた。


「なんてバカヂカラな女なんだ・・・」


シャーベットが男の腕を離すと、男は憎たらしそうに暴言をはいた。


「覚えてろよ・・・このままで済むと思うなバカ女」


そう言うと男たちは腹いせみたいにドアを勢い良く締めて帰って行った。


「なんだ、あいつら・・・」


「なんで、あの男たちが訪ねてきたか・・・私に思い当たる節があります・・・」

「きっとたぶん、そうだ」

「ミッチー私、あなたに話さなきゃいけないことがあるの?

「あの人たち、どこかの組織かどこかの企業関係の人間だよ、きっと」


「組織だって?・・・どちらにしてもブラックだな・・・」


「彼らが言ったように、私が目的だと思う」

「さっきの人たち、きっと私を回収しにやってきたんだよ」


「なんでこんなことになるんだよ、なんでそんなことが分かるんだ?」

「僕には意味が分かんないよ。平和にやってるのにさ・・・」


「お父さんが私を連れて帰ってきた時からこれは始まってたんだと思う」


「そういうことだからミッチーにはちゃんと話しておかなきゃ」

「これから私が話すことに驚かないでねミッチー」


この話もご多分に漏れず、いち青年とロボットとのラブラブな話になるかと

思ったら、なんだかちょっと違うみたいね。


とぅ〜び=こんて乳。


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