第十四話

この世


勇者「あ、皆!ちょっと用事があるから一旦F国に立ち寄っても良いか?」

魔法使い「良いけど…何の用事よ?」

勇者「ふふふ…秘密だ!」

戦士「あ、俺もちょっと用事があるんだよ。僧侶、一緒に来てくれないか?」

僧侶「う、うん…」

トキラ「僕は…そうですね…あっちでトレーニングでもしておきます。」

ゲホーデン「…では、私は妹と語らうとしよう。」

魔法使い「そうね。積もる話もあるから、あんたら用事はゆっくり済ましてきなさい。」

勇者「おう。」

戦士「分かった。」


F国 城下町


勇者「さ〜て、お目当ての物はと…お、あれかな?すいませ〜ん!」

屋台のおじさん「お、いらっしゃい!」

勇者「それじゃあ…これを6個ください!」

屋台のおじさん「6個かい?ありがとね!」

勇者「はい!ありがとうございます!」

屋台のおじさん「まいど!また買ってくれよ!」

勇者(へへ…皆で食べよ〜っと…)


ファビュラス廃坑


戦士「…よし、まだあるな。」

僧侶「あ、これ…早口言葉を言わないと抜けない剣だよね?」

戦士「ああ。それで、僧侶に頼みがあるんだ。俺の代わりにこの剣を抜いてくれ!」

僧侶「え、ええ…?どうして私が?」

戦士「実は…俺、早口言葉が苦手なんだ!だから、普段魔法の詠唱で噛まない僧侶にお願いしたい!」

僧侶「そういう事なら…よし、頑張るよ!え〜と、早口言葉の内容はっと…[5秒以内に10回素晴らしい]と言う…だったよね?」


僧侶が剣に手をかける。


僧侶「フゥ〜…アメンボ赤いなあいうえお…赤巻紙青巻紙黄巻紙…滑舌はOK!素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい!」


僧侶が早口言葉を言い終えたその瞬間、剣がフッと軽くなった。


僧侶「おわっ!?」

戦士「だ、大丈夫か?」

僧侶「大丈夫…あ、抜けた!剣が抜けた!」

戦士「おお!やったな!」

僧侶「それじゃ…はい。」

戦士「助かった…どわっ!?」


僧侶が戦士に剣を手渡した瞬間、剣がズシリと重くなった。


戦士「お、重い…!そ、僧侶…お前こんな重い物を持ってたのか…!?」

僧侶「えっ!でもこの剣そんなに重くない…よ?」

戦士「あれ…?僧侶が剣を持っている間だけ剣が

軽くなってる…のか?」

僧侶「そ、そうみたい…どうする?私、剣の扱いはからっきしだよ?」


その瞬間、魔物が襲いかかってきた。


戦士「…不意打ちか!」

僧侶「うわっ…身体が…え?」

魔物「ギャァァ…」

戦士「…僧侶?お前、びっくりするほど剣の扱いが上手いじゃないか。練習でもしてたのか?」

僧侶「いや…私は何もしてないよ…?さっきは剣が勝手に動いて…あ、この剣…もしかして自分で判断して勝手に動いてくれるのかな?」

戦士「そ、そうなのか?…だったら、この剣は僧侶が持っていてくれ。その方が安全だろう。」

僧侶「ありがとう…でも、戦士は剣を変えなくても良いの?この剣が欲しかったんじゃないの?」

戦士「俺は良いさ。…こういうのはな、一目見れば分かるんだよ。この剣、先端が茶色く変色してる。汚れとかそういう類のものじゃない…長年ず〜っとここで地面から抜いてくれる人を待ってたんだよ。だから、この剣は僧侶が持つべきだ。」

僧侶「…分かった。それじゃあこの剣は私が持つ。それにしても、杖と剣の二刀流か…ふふ…」


F国外れの草原


トキラ「はっ…ほっ…せいっ…」

ゲホーデン「…妹よ」

魔法使い「…何?」

ゲホーデン「…お前にだけは言っておこう。」

魔法使い「何なのよ。」

ゲホーデン「私は…本物の魔王ではない。勇者たちを騙すための人形だ。」

魔法使い「………それを何で私に?」

ゲホーデン「私は人形ではある…が、本物の私とは違う。個々に動いているのだ。だから、本物の私は私が最適な行動をすると…本物の私は信じているのだろうな。だが…例え偽物であろうと、私は私だ。自分の好きなように生きたい。…妹よ、今の私の姿はどのように見える?」

魔法使い「…あっちの世界と変わらないわね。」

ゲホーデン「そうだ。あの時、魔王は咄嗟に魔力で偽物の私を生み出し…魔王の代わりに私を向こうの世界に転送した。だから私は姿が変わらないのだ…私はこの先、老いる事も出来ずに…孤独に消えるのだろうか?」

魔法使い「…だったら、あんたが本物になれば良いじゃないの。あんた、一応魔王の片割れなんだから禁断の術も使えるでしょ?」

ゲホーデン「禁断の術が使えるかは…分からない。それに…魔王の気分次第で、私をいつでも消す事が出来る…」

魔法使い「…任せなさい。私たち5人で魔王と戦うから、弱らせた所で禁断の術を使いなさい。」

ゲホーデン「…分かった。」

勇者「お〜い、戻ったぞ〜!」

トキラ「…あ、勇者さ〜ん!それに戦士さんと僧侶さんも〜!」

戦士「遅くなってすまない!だが目的の物はゲットしたからな!」

僧侶「じゃじゃ〜ん。僧剣士〜。…なんちゃって」

魔法使い「あ、あの時の剣じゃないの。…あれ?

何で僧侶が剣を…?」

僧侶「まあ、なんやかんやでこの剣は私が持つ事になったから。あ、呼び方は今まで通りで良いよ。」

勇者「いや〜マジでびっくりしたぜ…まさか僧侶が剣を持つなんてよ…」

トキラ「僧侶さん、ちゃんと扱えるんですか?」

僧侶「もうバッチリ。何も考えなくても良いから

楽だよ〜。」

ゲホーデン「…さあ、行こうか。」

勇者「あ〜待て待て、まず決戦前のおやつタイムにしないか?」

ゲホーデン「…私はいい。」

勇者「そうか…皆!餅食べないか!?」

魔法使い「あ、食べる食べる〜。…勇者、用事ってもしかしてこれの事?」

勇者「おう!腹が減っては戦は出来ぬってな!」

魔法使い「…ありがと。」

戦士「よし!それじゃあいただこう!」

僧侶「あ〜む…美味しい!」

トキラ「これがお餅…ごっくん…んむ!?」

勇者「…トキラ!?餅を喉に詰まらせたのか!?」

トキラ「ん…!むぅぐぅ〜!」

ゲホーデン(…転移魔法の応用でも試すか。)

トキラ「んぐ〜…ん…ふぅ〜…はぁ〜…」

僧侶「お、お水お水…ほら、飲んで。」

トキラ「ゴクゴク…ぷはぁ~…危なかった…」

戦士「餅は喉によく詰まりやすいから、これからは気を付けるんだぞ?」

トキラ「は、はい。」

勇者(とりあえず残りの1個は懐にしまっておくか…)

ゲホーデン「…行くぞ。」

勇者「おう。腹もいっぱいになったしな。」

魔法使い「…ねえ、さっき変な魔法使わなかった?私の気のせい?」

ゲホーデン「…使ってない。断じてな。」

魔法使い(…使ったのね。なんだかんだで優しい所あるじゃない。)


魔王城


ゲホーデン「…この扉の先に魔王がいる。」

勇者「ああ…なんだか恐ろしいぐらいに魔王の魔力を感じるぜ…!」

魔法使い「…魔王がどれぐらい強くなったのかまだ分からない。戦士、先頭でお願い。」

戦士「分かった。」

ゲホーデン「…私はここで待っている。もしも何かあったら逃げてこい。」

僧侶「わ、分かったけど…ゲホーデンさんは魔王と戦わないの?」

ゲホーデン「…色々あってな。」

魔法使い「まあ大丈夫じゃないの?私たちなら必ず勝てるでしょ。」

トキラ「…そうですね!僕たちなら絶対勝てる…!脚力強化魔法、かけておきます!」

勇者「助かる。…それじゃ、開けるぞ!」


勇者が魔王の間の扉を開ける。


魔王「…待っていたぞ!」

勇者「…お喋りは無用だな。」

魔王「私は…!貴様らを倒し、女神も倒し…世界を征服するのだ!」

戦士「…まず俺から行くぞ!…でやぁっ!」


キィン!


魔王「ぬるいわ!ハァ!」


ベキィッ!バギッ!ドゴォッ!


戦士「が…ふ…!」

僧侶「ホワイトヒール!」

戦士「ふぅ〜…助かった僧侶!…死刻斬!」

魔王「馬鹿のひとつ覚えのように…!ぬん!」


ドカッ!


戦士「ちぃっ…!」

魔法使い「バルーン!」

魔王「もう効かぬわ!」

魔法使い「バルーンバルーンバルーン!」

魔王「な…重ねがけだと…!だが…バルーン!」

魔法使い「…!?早く身体に魔力を…」

魔王「そちらに気を取られたな!はっ!」


魔王が魔法使いに向けて無数の熱光線を放つ。


魔法使い「しまっ…!」

僧侶「よっ!はっ!ほっ!」


僧侶が魔王に向かって熱光線を弾いていく。

キカカキカン…ドドドドド…


魔法使い「僧侶…!?」

僧侶「私が強いんじゃなくて、剣が強いんだよ。

…デバヒール!」

魔法使い「ふ、ふぅ…助かったわ!」

魔王「…黒煙に乗じて不意打ちのつもりか?」

トキラ「…でやっ!…駄目か!」

魔王「私に不意打ちなど通用せんと学ばないのか…トキラ?クックック…さあ、死ぬと良いぞ。」

勇者「させるかぁぁ!!アルティメットスペシャルウルトラスーパーミラクルファビュラスハイパー

スマートダイナミックワンフォーオールファイナルヒーロースラッシュ!」

魔王「アルティメットスペシャルウルトラスーパーミラクルファビュラススマートファイナルデビル

ダークネスブラッディスマッシュ!」

魔王(…勇者の技名が長くなっている。)

勇者「まだまだァ!スーパードゴゴン切りィ!」

トキラ「僕だって!どりゃりゃりゃりゃ…!」

魔法使い「戦士!氷炎魔法よ!これを剣に!」

戦士「あい分かった!…応用魔法か?」

魔法使い「まあそんな所よ!さあ、さっさと勇者のサポートしてきなさい!」

戦士「おう!…うおおぉ!」

魔王「ぐ…ぬぬ…ぬえぇい!」

トキラ「うわっ!?」

勇者「ぐおっ!く…戦士!頼む!」

戦士「行くぞ魔王!てぃやぁっ!」

魔王「ぬ…?氷と炎を合わせた魔法を剣に…だが!ハイウォーター!」

戦士「これは…?」

魔法使い「…戦士!剣が!」

戦士「な…氷が溶けて…炎が消えている…!」

魔王「…退場してもらおうか、勇者のお荷物よ。」


魔王が拳に暗黒魔法を纏わせる。


戦士「しまっ…」

魔王「消えろ!」


ドッ…グァァァァァン!


戦士「ギャァァァ!…ァ…が…」

勇者「戦士ぃぃぃぃぃ!」

僧侶「あ…ホワイトヒール!」

魔王「させんぞ!…デコイ!」


戦士に向かって放たれたホワイトヒールは、魔王が生み出した魔力を取り込む人形に吸われていく…


僧侶「な…!」

魔王「トドメだ!」


魔王が戦士に向かって熱光線を放つ。


戦士「が…!ぁ…」


戦士死亡。


魔王「…デコイは魔力の消費が激しくてな、あまり使いたくなかったのだが…着実に数を減らしていくには仕方あるまい。」

魔法使い「く…!バルーン!」

魔王「…?これは、ただ風船を生み出しただけか?クックック…こんなちっぽけな風船がいったい何の役に立つと言うのだ?」

魔法使い「…スパーク!」

魔王「どこを狙っている………!?」


ビビビバチバチバチ!!


魔王「なんだ…身体に纏わりついて…!」

魔法使い「これはただの風船なんかじゃないわよ!そのまま感電してなさい!」

魔王「が…ぐ…!」

勇者「ここで俺の出番だなぁ!」


勇者がそう言うと、懐からある物を取り出す。


トキラ「勇者さん…!?それは!?」

勇者「はは…餅だよ!これを魔王の喉に突っ込む!前に俺やトキラもこれに殺されかけたんだからな!威力は十分だろ!ちゃんと食べろよ!魔王!」


勇者が餅を魔王の口に向けて放つ。


魔王「が…ふうっ!?ん…む…!むぅ〜!!」

魔王(くそ…!餅が喉に詰まるとは…!これでは…バリアが唱えられない…!)

勇者「よし!総攻撃だ!アルティ」


割愛!


魔王「む…んぶっ!」

勇者「おいおい魔王、ちゃんと餅は飲み込めよ!?食べ物への感謝を忘れるな!魔王!」

トキラ「喉から餅を動かさないように…狙うは頭!はあっ!」


バキィッ!


魔王「…〜!!ん…む〜…!」

魔法使い「さあ、次は私の番!魔王の火球魔法から着想を得て作った、蒼火球魔法よ!魔王の作り出す火球とは温度が桁違いだから、あんたらはさっさと離れた方が良いわよ!」

勇者「そんなに!?善の心を持っている者同士でも熱いってどんだけ熱いんだ…!?」

僧侶「炎が青くなるのが約10000℃だから…善同士で威力9割減でも約1000℃!2人とも早く離れて!」

トキラ「えっ…!そんなに…!?」

魔王「うむ〜っ…!」


ゴクンッ!


魔王「はあ…はあ…飲み込めたぞ…!バリア!」

魔法使い「バリアまで溶かしてやるわよ!」

魔王「ならば…城を崩す!」


カラ…カタ…


魔王「…!?何故崩れん…!」

僧侶(もしかして…城が崩れないようにゲホーデンが留めてくれた…?)

魔王「く…そぉ!…こんな姿は晒したくなかった…晒したくなかったァァァ!ウオォォォ!」


魔法使い「…!?何を!」

勇者「なんか…ヤバそうだ…!」

僧侶「魔王が…変身していく!?」

トキラ「もしやこれが…魔王の真の姿!?」


魔王が変身していく…


勇者「魔法使い!早く撃て!」

魔法使い「ああもう!はっ!」


蒼火球は魔王を飲み込む程の爆発を起こし…


トキラ「ど…どうだ!?」

魔法使い「…手応えが無い!」

僧侶「そんな…!魔王はどうなったの…!?」

勇者「…!」

魔王「ハア…ハア…貴様ら…皆殺しだ…!」

勇者「あ…ヤバい…!直感で分かる!これは絶対に勝てない!無理だ!逃げるぞ!」

魔王「…捕らえよ。」


無数の鎖と茨が勇者たちを縛り付ける。


勇者「が…!?見えなかった…!」

魔法使い「う…くうう…!」

僧侶「きっ…はっ!やっ!せやっ!」

トキラ「あっ…ぶない!!」

魔王「…2人外したか。」

勇者「あ…ぐ…あぁぁ!」

魔法使い「魔力が…奪われ…ぎぁ…!」

僧侶「はあ…はあ!勇者!魔法使い!」

トキラ「間一髪で避けられたけど…どうしよう!」

僧侶「この剣が無かったら危なかった…!そうだ!トキラ君!私はこの鎖と茨をほどいてみる!だからそれまで魔王の攻撃を引き付けて!」

トキラ「分かりました!」

魔王「…勇者と魔法使いにはまた呪いをかけた。

死にたくても死ねずただ衰弱し続ける呪いだ…!」

勇者「はっ…はっ…う…あ…!」

魔法使い「た…すけ…」

トキラ「…魔王、今度は負けないぞ。」

僧侶「頑張って…ホワイトヒール!」

トキラ「…僧侶さん、任せてください。」

魔王「醜い私の姿を見た者には…絶望あるのみ…!捕らえよ!」


トキラ一人に狙いを絞り、鎖と茨が飛んでくる。


トキラ「…はっ!えいやっ!ぎっ!」

トキラ(攻撃を入れるなんて事は出来そうに無い!今は避ける事に集中しないと!)

僧侶「魔法が複雑すぎる…!すぐにはほどけそうに無い…!」

勇者「そう…りょ…おれに…ま…りょく…を…」

僧侶「…勇者!何か策があるの!?分かったよ!

…マジックプレゼ!」

勇者「…勇者オーラ!」

魔法使い「ぜぇ…ぜぇ…たすかった…」

僧侶「良かった………ねえ、前の呪いもそれで解除出来たんじゃないの?」

勇者「…忘れてたんだ。許してくれ…」

魔法使い「…アンタ、この戦いが終わったら一発

ぶん殴らせて。」

勇者「…しゃぁねぇな!後でな!ほら、今はトキラの援護するぞ!脚力強化魔法は切れてるけどな!」

魔王「む?もう解かれたか…だが、何度解かれようとも再び捕らえるのみ。捕らえよ!」

トキラ(…!こっちへの攻撃が緩くなった!今だ!)

トキラ「だあっ!」

魔王「そんな蹴りは隙だらけだ。」

トキラ「が…!う…」

勇者「トキラ!…魔法使い!僧侶!俺が勇者オーラを纏って突っ込む!その隙に僧侶はトキラを回復、魔法使いは魔王の隙を作ってくれ!」

魔法使い「了解!なら手数で行った方が良いわね!熱線魔法連打しとくわ!」

勇者「よし!うぉぉあ!」

魔王「この拳に魔力を込め…」

僧侶(よし…こそこそ…ホワイトヒール!)

魔王「…デコイ。」


魔法使いの熱線と僧侶のホワイトヒールがデコイに吸収される。


僧侶「あっ…!」

魔法使い「くっ…!」

魔王「…飛び上がったハエを叩き落とす。」

勇者「せやぁっ!」

魔王「…ぬんぁっ!」


バチィッ!


勇者「ぎっ…!勇者オーラが…!」

僧侶「えいっ!背後から!」


キン…


魔王「…剣は中々の代物だが、使い手が弱い。」


ドムッ…!


僧侶「うっ!あ…うぁ…」

勇者「くそ…何か…何か手は…」

魔王「あらゆる策を講じても徹底的に潰す。打開の一手なぞ無い。…捕らえよ!」


勇者に向けて鎖と茨が放たれる。


勇者(しまった…!避けられねぇ…!)

魔法使い「えいっ!」


魔法使いが勇者を押し飛ばし、身代わりとなる。


魔法使い「勇者…!早く…決めなさいよ…!」

勇者「魔法使い!?…やってやるよ!待ってろ!」

魔王「仲間との絆か…クックック…素晴らしいな…そして…愚かだな…!」

勇者「…魔王、次の一撃で決める。避けんなよ?」

魔王「…良いだろう、来い。」

勇者「やっと気付いた。…最強の技は覚えるもん

じゃない。創り出すものだ。」

魔王「行くぞ…アルティメットスペシャルミラクルウルトラスーパーファビュラススマートギガデビルダークネスブラッディファイナルスマッシュ!」

勇者「…無駄だ。技名を長くしようがな…俺はもうその先にいるんだよ。」

魔王「なに…?」

勇者「勝!愛!!剣!!!」


ス…パァァァン!


魔王「ガ…ガ…ァァァ!」

勇者「…愛は勝つってな。生きとし生ける者全て…愛してやるって決めたからな!」

魔王「クォォ…クゥゥ!」

魔法使い「はあ…ふう…ほどけた…」

僧侶「う…う…ヒール…ふう…生きてる…」

トキラ「…うあ、ここは…はっ!魔王は!?」

戦士「やっと戻ってこれた…あ、勇者!もしかして魔王を倒したのか!?」

勇者「ああ、やったぜ。ははっ!」

魔王「ぐ…ぐぅ…!まだだ…!まだ…やれる…!」

勇者「…もう諦めろ。さんざん暴れたろ?」

魔王「諦める…ものか…!…この城を爆破する!」

戦士「な…!」

勇者「待て待て!魔王、それお前も死ぬだろ!」

僧侶「に…逃げよう!」

トキラ「魔王様…!やめてください!」

魔法使い「アンタ…どこまで性根が腐ってるの!」

ゲホーデン「…私の出番だな。」

魔王「!?な…何故…!?」

ゲホーデン「単純な事だ。自分で自分のやっている事が気に食わない。だから、勇者たちに力を貸す。それだけの事だ。」

魔王「それで…どうするつもりだ…!」

ゲホーデン「私が本物になってやる。そして貴様を永久にこの肉体に閉じ込める。」

魔王「ふ、ふん…!戯言を…!やれるものなら…」

ゲホーデン「…禁忌魔法、ボディスワップ!」

魔王「な…なっ!?貴様の…魔力…で…な…ぜ…」

ゲホーデン「入れ替え寸前でこの身体に入っている魔力を全て捨てる…!これで完璧だ…!」


2人の身体が入れ替わる…


魔王「…くぁっ…身体に…力が入らん…」

ゲホーデン「…上手くいったようだ。」

勇者「…?」

戦士「…??」

僧侶「…???」

トキラ「どういう事ですか…?」

魔法使い「作戦大成功ね。」

魔王「こんな…事…こんな…終わり…嫌…だ…!」

勇者「こっちが魔王…で、良いんだよな?…魔王、お前に魔王は向いてない。」

魔王「何を…!」

勇者「お前さ、なんやかんやで全力出してなかっただろ?何で全力出さなかったんだ?」

魔王「く………私はな、どこか心の底で…誰か私を止めてほしいと思っていた…!だから…だから…」

魔法使い「ミサイル攻撃から私を守ってくれた事もあったわね。…あれもアンタの優しさ?」

魔王「…もういい。殺せ。」

僧侶「私たちを捕らえた時も…故意での苦痛は絶対与えなかった…」

魔王「だが鎖に苦しめられていただろう…」

トキラ「でも、僕に修行をつけてくれた…」

魔王「…貴様を洗脳し勇者たちを確実に殺すための駒として育成したのだ。」

ゲホーデン「…私を監視しなかっただろう。」

魔王「…私ならば!…私自身ならば私の思う通りに動いてくれると思った!なのに!貴様は…!」

勇者「…もう、終わりにするか。」

魔法使い「…じゃ、勇者。あんたがやって。」

勇者「ああ………ッ。」


ザンッ…


魔王「ア…ァ…」

勇者「…終わったな。」

ゲホーデン「…私はここに残り、人々を襲っている魔物を全て鎮静化させる。お前たちはこれから先、どうしていくのだ?」

勇者「…俺らはA国でゆっくり過ごすよ。」

魔法使い「そうね。王様に報告もしないとだし。」

戦士「俺は…帰ったら修行するかな。」

僧侶「とりあえず私たちは皆一緒に暮らすけど…

トキラ君はどうする?」

トキラ「僕は…あの世に戻ります。魔王の魂が浄化されるまで付き添いたいんです。」

勇者「…そうか。頑張れよ。…さ〜て、帰るか!」


勇者一行は王への謁見と報告を済ませ、ひとまず

A国にある自宅へと帰った。


勇者「…これからどうするよ?」

魔法使い「…とりあえず勇者を一発ぶん殴る。」

勇者「…ほら、一発だけだぞ?」

魔法使い「それじゃ失礼して…せいっ!」


ボカッ!


勇者「いってぇぇぇぇ!」

魔法使い「ふう…あ〜スッキリしたわ〜…そうだ、今後は食っちゃ寝生活でもしようかしら…」

戦士「それは駄目だろ…修行して今の力を維持するのも大事だぞ?ほら修行修行!」

僧侶「そうだ、私も戦士に剣の扱いを色々と教えてもらおうかなぁ…」


勇者一行は平和になった世界で毎日楽しく過ごしていた…しばらくは。


数ヶ月後


勇者「クソ…!」

魔法使い「してやられた…!」

戦士「まさか…こんな事になるとは…!」

僧侶「どうして…!」


魔王の策はまだ続く…勇者一行の旅も…!


次回に続く

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