第八話

あの世


勇者(…)

戦士(……)

僧侶(………)

トキラ(…………)

勇者(…お前何でここにいるんだ?)

トキラ(僕にも分かりません…本来、魔物は死んでしまったらそのまま魂が消滅するはずなんですが…どうして僕だけ魂が消えずにいるんだろう…)


そこに、異様な空気を放つ存在が姿を現した。


女神「私が説明しましょう。」


勇者(え!?)

戦士(女神様!どうしてここに!?)

僧侶(トキラ君を助けてくれたのって…もしかして女神様!?)

女神「ええ。彼は魔に属する者でありながら、

魔王を打ち倒すために勇者の仲間となりました。

先の戦いでも勇者たちを手助けし、果敢に戦場を

駆け巡りましたね。あなたの心は清く正しく、勇者たちの力になると判断しました。ですので、特別にトキラにも私の加護を与える事とします。」

トキラ「あ…ありがとうございます!」

勇者(良かったなぁ〜!トキラ!)

戦士(…ん?ところで魔法使いがトキラにかけた

変化魔法がまだ解けてないようだが…)

女神「私がトキラに加護を与える際、魔法使いが

かけた魔法に少し手心を加えさせてもらいました。これからは効果が永続的となりますが、自分の意思で自由に姿を変える事が出来るはずです。」

トキラ「そ、そうなんですか?」

女神「ええ。試しになりたい姿を思い浮かべ、

その姿になりたいと強く念じてください。」

トキラ「は、はい!…む…む…む…」


トキラが念じると、姿が変わった。


トキラ「…ふぅ、とりあえず死ぬ前に変化魔法で変わってた人の姿に変わってみたけど!念じるだけで変化出来るって便利…!ありがとうございます!」


女神「気に入られたようで何よりです。それでは、今から魔法使いをここに連れて来ます。」


魔法使い(いや連れて来るって言ってから転送するの早ぁ〜…流石女神様ね…)

僧侶(あ、魔法使い。どこ行ってたの?)

魔法使い(神域よ。ちょっと確認したい事があって女神様にお願いして連れて行ってもらったの。)

勇者(そこで何してたんだ?)

魔法使い(私たちが初めて魔王に負けた後、なんやかんやで転生したじゃない?それで、あっちの世界とこっちの世界を繋ぐ携帯用ゲートみたいなものは無いかな〜って思ったのよ。)

戦士(それで、どうだったんだ?)

魔法使い(あったわ。こっちの世界に来る時のあの箱と石がね。)

僧侶(あの石?という事はまた壊したらあっちの

世界に行けるんじゃない?)

勇者(今行っても良い事無いだろ?向こうの世界に石が無いと戻ってこれないかもしれないだろ?)

女神「そこは心配ありません。今後は壊さずとも、掲げるだけで行き来出来るようにしました。」

勇者(マジか、ありがとうございます!)

トキラ「それって僕も行けるんですか…?」

女神「もちろんです。ただし、周りに無関係の人間や魔物、動物がいる場合は使用不可能になっているので、注意してくださいね。」

僧侶(…あっ、G国が危ないんだった!)

勇者(ヤッベ!女神様色々とありがとな!今から

魔王止めてきます!)

魔法使い(ちょっと勇者、失敬でしょ!)

戦士(女神様、行って参ります!)

僧侶(よし…皆、行こう!)

トキラ(まだまだ頑張ります!)

女神「皆さん、お気を付けて…」


勇者一行にトキラを加え、再びこの世に降り立つ。


一方G国では、阿鼻叫喚となっていた…


勇者(やべぇ…やべぇよ!)

魔法使い(あんなにきらびやかだったG国が…こんな姿に変わり果てて…!)

戦士(急いで魔物を殲滅するぞ!)

僧侶(この街中で分かれて行動するなら、集合場所を決めよう!全部終わったらG国城門前で!)

トキラ(分かりました!グループはどうします!?)

魔法使い(勇者1人、私と僧侶、戦士1人、トキラ1人でどう?)

勇者(よし、決まりだ!)

トキラ(皆さんに脚力補助魔法、かけておきます!)

魔法使い(戦士、剣に炎魔法かけておくわね)

戦士(助かる!よし!行くぞ!)


それぞれが分かれてG国の国民を襲う魔物たちを

撃破していく。


あっちでは…


勇者(スーパードゴゴン切りィ!…って言っても、ただ剣に雷纏わせてるだけなんだけどな!)


こっちでは…


戦士(…せいっ!どりゃぁっ!…あっ、そこの人!大丈夫ですか…テレパシーは通じないんだった!)

G国の国民A「誰か助けて…瓦礫が足に挟まって…

誰か…あっ、そこの人!助けて!」

戦士「今…ゲホッ!助けまっ…ゲホッ!」

戦士(どうする…!?腕の力は使えないし…脚力が強化されてるとはいえ瓦礫を動かせるだけの力は

無いぞ…!どうする…あっ、これならば…!)

G国の国民A「ううっ…痛…い」

戦士(瓦礫を…せいっ!)


戦士が剣で瓦礫に斬りかかる。すると、ボウッ!という音とともに瓦礫が燃え上がる。


G国の国民A「…!何して…!?」

戦士(魔法使いはいつもあんな態度だが…本当は

優しい!神護の無い魔法は善の心を持つ者が善の心を持つ者に対して撃っても効果が薄いという性質を利用して…この人を助ける!)


G国の国民A「ぎゃぁぁぁ!熱い熱い!うあぁ!」

戦士(…何故だ!?善の心を持つ者には…これは!

服に金メッキが付いている…!?)

G国の国民A?「この…畜生野郎が〜!」

戦士(な…こいつ…ゴールドメッキ族…なのか?)

G国の国民A?「わざわざ変化魔法を覚えたのに…やっとあんなクソみたいな所から逃げ出せたのに…お前のせいで…こんな所…で…と…!ギャァ…!」

戦士(すまない…すまない!)


そっちでは…


魔法使い(えいっ!ほっ!…僧侶!危ない!)

僧侶(えっ!?)

魔物「ゲシャハ〜!」


ドゴシャッ!


僧侶「うっ…」

魔法使い(僧侶!…はっ!)

魔物「グェァァァ!」

魔法使い(…僧侶!大丈夫!?)

僧侶(だいじょうぶ…あたまがふらふらするけど…)

魔法使い(テレパシーで送られてくる文章が全部

ひらがなじゃないのよ!ちょっと休んでなさい!)

僧侶(ごめん…すこしやすんだらかいふくまほうもつかえるようになるとおもうから…)

魔法使い(とりあえず、僧侶が魔物に襲われたら

大変だから私がしっかりと守らなきゃ…)


どっちでは…どっちではって何?まあいいや…


トキラ「でいやっ!脚力だけは自慢出来るんだ!」

魔物「ぎィ…なんなんだァテメェは?人間のくせにおかしな匂いがしやがるなァ!?ゲヒャハハ!!」

トキラ(時間がかけたら正体がバレそうだ、早く

ケリをつけないとまずいか…?)

魔物「まァなんでもいいがよォ、そろそろ殺させてもらうぜェ!?ゲヒャヒャハハハハァ!!」

トキラ(ひっ!?…怖がらない怖がらない!冷静に避けて…)

トキラ「せいっ!ヒット!」

魔物「ぐえアァァ!頭がかち割れそうだァ…!」

トキラ「まだまだ!だだだだだだだだだぁ!」

魔物「ガァァァ!!その異常な…足技…て…めェ…ま…ぞく…かよ…ォ…」

トキラ「ふぅ…最後の最後でバレたけど、なんとかなったな…そろそろ他の皆も終わった頃かな、城門前に行ってみよう。」


城門前にて


勇者(ぜぇ…ぜぇ…エンジン飛ばし過ぎた…呪いに慣れてきたとはいえ流石にまずかったな…)

戦士(…今まで倒してきた魔物にも、それぞれ違う人生があったのだろうか?魔物は…本当に悪い存在なのか?トキラのように…良い魔物もたくさんいるんじゃないか…?)

勇者(いきなりどうしたんだ?お前らしくないぞ?)

戦士(…先程、瓦礫に挟まって動けなくなっていたゴールドメッキ族がいてな…変化魔法で人の姿に

化け、逃げ出したようなんだ…善なる心を持った

ただの一般人と思い、俺は瓦礫を魔法使いの炎を

纏った剣で燃やしたんだ…だが…)

勇者(お互いに善の心があれば効果が薄いもんな。で、どうだったんだ?)

戦士(駄目だった…そのまま大火傷を負い…)

勇者(…そうか。でもそれは、誰かが悪いって事

じゃないだろ?気を落とすな…とは言わないが、

あんまり引きずらない方が良いぞ。)

戦士(ああ…ありがとう。)

トキラ「お〜い、勇者さ〜ん!戦士さ〜ん!」

勇者(お、トキラ!そっちも終わったか?)

トキラ(はい。怖かったけどなんとかなりました…あれ?魔法使いさんと僧侶さんは?)

戦士(それがまだ来ていないんだ…探しに行くか?)

勇者(そうだな、早く見つけようぜ。)

トキラ(とりあえずこっちに行ってみますか?)

勇者(おう。一応魔物がまだいるかもしれないし、

3人固まって行くぞ。)


「こっち」へ行く3人。


勇者(お〜い、魔法使い〜?僧侶〜?いるか〜?)

戦士(返事してくれ〜!)

トキラ(こっちにはいないのかな…?)

戦士(そうみたいだな…次はあっちに行ってみるか)

トキラ(…危ないっ!)

勇者(どわっ!?魔物かっ!)

戦士(この程度なら…はっ!)

魔物「ピギィ〜!」

戦士(…心が痛む。)

勇者(…とりあえず、引きずるのは一通り終わる

までだ。良いな?)

戦士(ああ…分かった。)

トキラ(…とりあえず、あっちに行きましょうか。)


「あっち」へ行く3人。


トキラ(大声を出したら他の魔物に気付かれるかもしれないのがもどかしいですね…)

勇者(そうだな…大声出せたら探すの楽なのかな?…お〜い!いるか〜!?)

戦士(大声を出した所で、結局テレパシーでしか

意思疎通出来ないんだから意味は無いと思うぞ…

お〜い!魔法使い〜!僧侶〜!)

勇者(このあたりにもいないか…じゃあどっちに

行けば良いんだよ〜!)

トキラ(とりあえず、城門前に戻ってみませんか?もしかしたら入れ違いかもしれませんし…)

戦士(そうだな、一度戻ってみるのも手だな…)

勇者(…いるなぁ、右後ろにある家の屋根の上に。)

トキラ(えっ?魔法使いさんと僧侶さんが?)

勇者(違うぜ…魔物だよっと!)

魔物「ヂィ…フイウチ…シッパイ…」

勇者(…おらっ!)

魔物「…?トオリスギタダケダゾ?」

戦士(いや、こいつは気付いてないだけだ…)

トキラ(え…?)

魔物「コナイナラコチラカ…ラ?ナンダ…セカイガマワッテ…」

勇者(…あばよ!)

魔物「ネムクナッテ…キタ…コイツラ…イッタイ…ナニ…モノ…」

戦士(なあ勇者…俺に気を遣ってくれたのか?)

勇者(まあな。グロテスクな倒し方じゃなくて、

もうなんかスパーンとスッキリ気持ちよく倒した方が良いかなと思ってよ。)

戦士(…優しいな。お前は…こいつが苦しまずに

死ねるようにわざわざ難しい剣技を使ってくれて)

勇者(そんなんじゃねぇって…ほら、行くぞ…)

トキラ(ふふ…)


「どっち」に行けば良いか分からず、とりあえず

城門前に戻る3人。


勇者(うーん、いねぇな…)

戦士(いったいどこに…そういえば、そっちって

行ってなかったよな?)

トキラ(あ、確かに…行ってみましょう!)


「そっち」に行く3人。


勇者(…いない?)

戦士(本当にどこに行ったんだ…?)

トキラ(ここ、微かに魔力が残っています…)

勇者(そうだな…このちょびっとある魔力を辿って行くか?)

戦士(ああ…ひとまず国民たちは避難出来たよう

だしな…行こうか。)

トキラ(魔力は…こっちか…?)


微かに残留する魔力を辿っていくと、そこには…


勇者(…ワァ〜オ。こりゃ見つからないわけだ。)

トキラ(堀の底に何か通路のようなものが…?)

戦士(まさかこの中に…?)

勇者(とりあえず、潜ってみるか。)


お城の堀の底にある通路に入る3人。


勇者(…危ない!)

戦士(ぎっ!)

トキラ(はっ!?)


どこかで見た光線が一本飛んできた。


勇者(これって…あいつだよな?)

トキラ(間違いない…魔王が撃ってる!)

戦士(という事は…魔法使いと僧侶が危ない!?)

勇者(いや、死んだらあの世に戻ってそれから教会で蘇るだけだし大丈夫じゃないか…?)

トキラ(とりあえず行ってみましょう!)


魔王の光線を弾きながら進んでいく3人。

そして、通路の先で3人が目にした光景は…


次回に続く

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