第12話 爆弾発言

「……ふむ」



そんな三人の様子を興味深そうに眺めるハラドは自分なりに分析する。


(おそらく、仮にも侯爵令息であるカリブラからすればプライドが傷つけられたであろうし、ソルティアからすればいい嫁ぎ先を譲ってもらえるようなもの。この二人と長く付き合ってきたアスーナだからこそすぐに分かるんだろうな……)



ハラドの見解は事実であった。だからこそ、この後の展開も予想できる。ハラドもすぐに行動に移せるように身構えることにした。カリブラが怒りに任せて暴挙に出る可能性を考慮できるからだ。



「カリブラ様のほうに婚約破棄される理由があるから何様も無いでしょう。婚約破棄のドッキリなどという悪質な行為をなさる殿方など御免被ります」


「ドッキリが悪質!? 面白そうだからと思ったんだよ!」


「あんなものが面白いと思うなど幼稚を通り越して異常です。貴族令息どころか紳士として勉強し直した方がいいのではなくて?」


「お、お前っ!」


「っ!」



カリブラは顔を真赤にしてアスーナの方へ踏み込んできたが、ハラドが立ちふさがるように間に入った。アスーナとハラドの予想通りカリブラが手を出すと思ってのことだ。



「どけハラド! これは僕とアスーナの問題だ!」


「だからといって必要以上に近寄るなよ。ここはパーティー会場なんだからさ」


「だから何だ! 僕とアスーナの婚約の問題なんだぞ!」


「婚約の問題なら俺も関係している」


「何?」



ハラドが自分にも関係があると言うのでカリブラは訝しんだ。何がどう関係しているのか分からないのだが、肝心のハラドがニヤリと笑って説明を始めた。


その直前、ハラドはアスーナに向けて一瞬だけ笑みを見せる。アスーナもまたハラドが口にしようとしていることを悟って頷いた。カリブラに対する爆弾発言だ。



「実は先程、アスーナ嬢が婚約破棄されたと聞いてフリーになったみたいだからチャンスだと思って婚約を申し込んだのさ」


「何だと!? 僕の婚約者に!?」


「婚約破棄したんだろ? ドッキリだけどさ?」


「ああそうだよ! ドッキリだったんだよ! それなのになんで人の婚約者に手を出してんだよ!?」


「アスーナ嬢のような女性と婚約できるチャンスを見つければ動かない手はないだろ?」


「お前、公爵家だからって……!」



カリブラの怒りの矛先がハラドに移った。しかも、アスーナに対する以上の怒りを抱いたのか目が血走り始めた。そんな男たちをよそにソルティアが信じられないような目でアスーナを凝視しながら詰め寄った。



「お姉様どういうこと!? あの公爵令息のハラド様に婚約を申し込まれたって!?」


「ええ、だからそれを受け入れたの」


「そ、そんな! お姉様にはカリブラ様がいるじゃない!?」


「ドッキリの婚約破棄をされたわ。フリーになったと思ったから受け入れたのよ。当然でしょ」


「そ、それは……」


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