第66話 まだまだ遊び足りませんわ
踊り疲れて我に返った時、リエンと人間形態のレボが目の前にいた。
二人は疲労困憊といった様子だが割と元気そうに見える。
リエンは大げさにため息を吐くと、少し恨めしそうに愚痴った。
「ひどいよな。俺達を忘れないでくれよ……」
「誠に遺憾」
レボも頬を膨らませて不満を訴えている。
私は意外そうな顔をして微笑んだ。
「あら、生きていたのですね」
「どうにかな。全力で防御したが、それでも死にかけた。間一髪だったぜ」
軽口を叩くリエンも、今回はさすがに肝を冷やしたらしい。
体内の魔力も枯渇寸前で、今にも倒れそうなのを気力で耐えているような状態である。
レボも一時は戦闘不能に陥っていたものの、人間形態を保てる程度には回復したようだった。
どちらも呆れるほど高い生存能力を有している。
リエンは感心と畏怖の入り混じった目線を向けてくる。
「まさか冥王まで殺っちまうとはなぁ……もう無敵だろ。魔力の質が以前とは別物だ」
「まだ制御できていませんけどね。実験と鍛錬が必要ですわ」
冥王から奪った力はあまりにも大きい。
質も極上だが、それ故に馴染ませるのが困難である。
今のところ安定しているものの、ふとした拍子に暴走する危険を孕んでいた。
今後のためにもコントロールできるように慣らしておかねばならない。
決心する私のそばで、レボが唐突に跪いた。
そしてはっきりとした声で宣言する。
「汝こそが心の支配者なり。我は忠誠を誓う」
「ふふ、光栄ですわ」
冥王の殺害を目の当たりにして、さらに意識が変わったのだろう。
ただの協力関係から、信仰や崇拝の類が芽生えたようだ。
レボはまるで神と対峙したかのような様子で私を見上げている。
正直、悪い気はしない。
従順な仲間がいるのは都合が良い。
私は歩き出しながら二人を手招きする。
足取りはとても軽い。
鼻歌を奏でつつ、スキップで焦土を進む。
「行きましょう。冥王の力を試さなくてはなりませんわ」
「どこで使うんだ」
「内緒です。着いてからのお楽しみですわ」
ミアの復活というイレギュラーがあったが、どうにか乗り越えられた。
冥王の力を丸ごと手に入れたことで、さらなる混沌をもたらすことができる。
世界は私のために巡っている。
まだまだ楽しみ足りない。
いつか滅ぶまで、存分に満喫しようではないか。
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