プロローグ②
美しき青年治『治療術師』は負傷兵の治療を終え、言われた通り血に汚れたローブを脱ぎ、自身に浴びた返り血を清め、自分が
「すみません、お待たせしましたサヨさん。」
「導管忘れてたろ。」
「・・・・・・、忘れてないですよ。」
さきほどの施術に際しての自信に満ちた物言いが、愛玩犬が飼い主に
「しかしいつ見ても君たちの施術とやらはすごいね。外傷治療の専門家顔負け。」
「なんですかそれ?」
小夜が言った言葉が理解できず青年治療術師はその美しい顔をしばしゆがめた。しかしすぐに表情を戻し明るく小夜に語り掛けた。
「何はともあれ、サヨさんの知識が無ければあの兵士は死んでいました。血脈の圧力が下がって、危険な状態でした。状態を安定させてから、サヨさんの教え通り血止めして、傷口もきれいにしてから繋ぎましたよ。さらには
彼の話を要約すると、先ほどの負傷兵はショックと呼ばれる血圧低下状態にあった。けがの無い手足を持ち上げたことにより、一時的にではあるが体内の血液循環が改善し意識が回復した。その後止血を行い傷口を洗浄して汚染組織を取り除き、最後に『治療術』なる施術で足を繋いだということだ。
青年治療術師は快活に続けた。
「でもサヨさんの理念を実践できる私、ヴィルヘルム・アイントホーフェン。こんな弟子を持ってサヨさんは幸せですね。」
「弟子を取った覚えはないよ。」
「そんな~、頼りにしてますよ、
またも呼ばれたくない呼び名で呼ばれた小夜はむすっとしながら足早に青年治療術師ヴィルヘルムを置き去りにした。自分の半分ほどの背丈しかない小夜をヴィルヘルムは追いかけた、まるで置き去りにされた子犬のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます