証明
深い夜の雲間に消えた月は、
この日、遂に訪れることはなかった。
今、その在処を知る者は誰一人としていない。
世の人々は、
明日の夜には月が訪れることを知っている。
明日の夜が訪れることを知っている。
だが何故、明日の夜が訪れると言えるのだろうか。
今、明日の夜を報せるものはない。
明日の夜の在処を知る者はない。
世の人々はそれを知らずに夜を迎え、それを知らずに夜を明かす。
今、月の所在を知る者は私だけだ。
私だけが夜の在処を知っている。
私だけが月の行方を知っている。
あの薄雲から洩れる光が私に影を落とし、確かな存在として明日を報せてくれる。
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