第23話 勇者の愉快な仲間たち来店 (前編)
深夜のコンビニバイト二十三日目。
「キャー!ぶつかるぅー!」
ピロリロピロリロ
女の子の高い叫び声が聞こえたかと思ったら、箒に乗ったピンクの人影が、コンビニに突っ込んできた!
「ひっ!?な、何!?」
箒は来店時にピタリと止まり、そこから放り出された人影は、勢い余ってコロコロ転がり、コンビニの壁に激突。
コンビニの床でぐったりと倒れている全身ピンクの...魔法使いみたいなコスプレしてる女の子に恐る恐る近寄る。
「あの...だ、大丈夫ですか?」
「うぅ...だ、大丈夫な訳ないでしょぉ...」
弱々しく答えて、立ち上がる──かと思ったらずっとその場に倒れている魔法使いのコスプレした女の子は、こっちをちらりと見て、
「女の子が倒れているのよ!手を差し出して「お嬢さんお手を貸しましょうか?」でしょー?」
うっわ...。
「何よ!その顔!」
怒りながら普通に自分で立ち上がった女の子は、腰に手を当ててプンスコと怒っていた。
「あたしは天才美少女魔法使いサッコ!あんたは、レディの扱いになれていないのね!いいわよ!気にしなくてサッコみたいな最っ高に可愛い魔法使いに出会っちゃったらウンウン、仕方ないわよ冷静な判断ができないわよねっ!」
全身ピンクの魔法使いはきゅぴーんと目元でピースしてラブリーポーズをキメていた。
緑のマッシュヘアに魔法使いっぽい三角のピンクフリルの帽子、ロリータ風というのだろうか、白とピンクのフリフリのでも魔法使いっぽいワンピースに趣味の悪いマンドラゴラとか、毒キノコとか描かれた缶バッチがいくつかついている。怖い。
背中には、変な色と柄のマスキングテープか何かでぐるぐると巻かれた魔法の杖らしきものを背負っていた。キャラクターのシールとか貼ってるよこの人...。
魔法の杖らしきものそんな風にデコったりしていいの?
よく見たら箒もなんかマスキングテープや包帯?らしきものが巻いてあってデコってある。
「魔法少女...ではなく魔法使い?」
「そうよ!ふっふっふ...」
ドヤって笑う割にファッションのセンスが俺みたいな常人には理解できない領域だ。俺こんな人原宿の特集の時テレビで見たぞ。
「俺ファッションとかよくわかんないんですけど、そんな風に魔法使いの杖とかデコっちゃっていいんですか?」
「男の子にはわかんないわよね!これはさぶかるファッションっていうの!ハラジュクを歩いていたら色んな女の子から声をかけられて、このファッションで人気者になったわ!サッコはファッションセンスがまじやばいらしいわよ!スターの素質があるのよ!すごいでしょー!ふっふっふ」
最近の女の子はわからないけどそのまじやばいってダサいの方なのか、可愛いの方なのかよくわからないな。
俺はこの子の格好にやばいとしか言えないけどもしかして他の人も同じ気持ち?
「喋ったら喉乾いちゃったー!飲み物買おっと」
そういや魔法使いサッコ...どっかで聞いたような気がする。
そういや...どこで聞いたんだっけ。アニメでそんなキャラいたっけ。
「はーい!可愛いサッコには~いちごみるくが似合う~☆」
いちごみるくを持ってくるりとターンしてレジにきた魔法使いサッコさんは、小さい気持ち悪い立体的なゴブリンの形のポシェットを出すと、口の中から小銭を取り出した。気持ち悪!
「はーい!お金」
あっ、ちゃんとお金払えるんだ。
「サッコはこっちの世界に来て雑誌のモデルとかやってるからね!えっへん!」
ん?こっちの世界...?ん...?あっ、あっー!!
「もしかして、勇者の愉快なパーティの仲間の一人?全身ピンクの魔法使いサッコ!?さん?」
「勇者?え?あんた勇者と知り合いなの?」
ここに来て初めて勇者パーティの一人と出会うことができた、勇者に連絡しなくちゃ!
「他のお仲間さんは?」
一応勇者の為に色々と聞いておかないとな。世界は狭いな。まさかこんなに早くお仲間がコンビニにくるとは。
「あぁ、いるわよ。三人で一緒に住んでるの。勇者とだけサッコ達は別れて三人は一緒にこっちに来たから」
「そうなんだ...よかった。勇者が前に君達がコンビニに来たら教えてって」
三人既にいるなら話は早い、三人とも勇者に会わせることができる!
「あぁ...そうなの。勇者がねぇ、まぁ、どっちでもいいけど...」
勇者には興味がないというように目をそらす魔法使いサッコさんに、少し違和感があったが、それより俺はさっきまでのぶりっ子キャラがブレブレなサッコさんに違和感を抱いてそれどころじゃなかった。さっきまでのぶりっ子はキャラだったんだ...。
ピロリロピロリロ
「おいおいてめー!どこに行ってたんだよ!」
薄紫色の短髪のいかにも男の子のような容姿だが、声が女性らしい全身赤い鎧を着た女騎士がズカズカと店内に入ってきた。
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