カレーをかけてくれないかの話

 結局、カレーって最強なのだという当たり前の事実に気づいてしまう。米、パン、うどん、パスタ、そしてナンを始めとしたあらゆる炭水化物を己の色に染め上げる料理。それがカレーだ。喫茶店の具が溶けた甘さと辛さが混ざっているカレー、スパイスの風味が強い、ネパールやインドを彷彿とされる象の絵とか飾ってある店でナンと食べるカレー、こってりしていて色が濃く、具がゴロゴロとしたホテルのカレー、なじみの食堂で好みのトッピングと食べるカレー、和風だしが香る刻んだ青いネギが風味を添えるカレーうどん、そして冷蔵庫から引っ張り出した適当な素材を駆使して作り出し、数日に渡って食卓を支える家カレー。カレーといってもかなりバリエーションがある。ここに挙げたものは、ほんの一例だが、当然味が違う。


 そう、我々はカレーに囲まれて生きている。でもカレーは自由だ。スパイスにこだわっても良いし、市販のルーを買って具と溶かすだけでも当然美味しい。だから最近ようやく気が付いた。自分はカレーが好きだった。割とトップクラスに。今まで気取って寿司とか焼肉とか、すき焼き、天ぷらとかオムライスとか気取ったことを言っていたが、カレーだ。自分のベストアンサーはカレーだった。


 だから、ここに素朴な願いを書いておこうと思う。もし、俺が死んだら棺にカレーを入れてくれ。棺いっぱいに。花とか良いから、隠し味の牛乳とリンゴすりおろしとかを入れてくれ。参列者でおたまを、かわりばんこに持ち替えて一回一回カレーを棺に注いでくれ。なんなら焼香とか良いからスパイスをつまんで棺に入れてくれ。そして、俺とカレーを一晩寝かせて、次の日。火葬してほしい。一番おいしい状態のカレーとあの世に連れて行ってくれ。奪衣婆とか閻魔大王に振舞ってやろうと思うから。


 遺されたみんなは、カレーの具にまみれて少し黄ばんだ俺のスパイシーボーンを拾うことになると思うが、気にしないでくれ。壺にもスパイスとか入れてくれ、主にガラムマサラ。ここまで書く程度にはカレーが好きだが、実際にやったらターバンを付けた俺が夢枕に立って、インド映画よろしく踊りまくってお前らを寝かせないことだろう。カレーは生きてる間に食いたい。なので、みんなは俺にカレーをおごってください。以上。

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