第67話 初代様の実力

「では初代様。ひとつお手合わせお願い致します!」


 最初に動いたのは咲さん。

 流石は、阿比須族滅流の継承者。


 私の数歩先を行ってる人。


 彼女は赤の六道プリンセス……バーサーカープリンセスの姿で、初代様に立ち向かって行った。


 まずは素手で。


 まずは素手にてつかまつる。それが阿比須の流儀なんだね。


 咲さんは、まずは打撃系奥義を使わず、タックルを仕掛けた。

 おそらく奥義の鉄身五身を使用しながら。


 だって阿比須真拳同様、脇が空いてるもの。

 普通に考えると急所がら空き。


 鉄身五身アリでないとあり得ない構え。


 打撃を喰らおうと、一切通じないから、このタックルを止められない。

 それに体格差と、バーサーカープリンセスの特殊技能プリンセススキルで、潜在能力解放がある。


 とても厄介なタックルだ。

 中断させられない上、捕まったらほぼ終わりだから。


 咲さんとしては「攻略できるものならやってみろ」と言いたいんだろうか?


「おおおお!」


 雄叫びをあけながら迫る咲さん。

 初代様は動かない。


 半身で構え。

 まるで居合腰のように腰を落とす。


 そして


「阿比須族滅流奥義! 繰手狩一撃クリテカルヒット!」


 居合で言えば胴薙ぎ。


 胴薙ぎの手刀。


 鋭い一撃だ。

 侍の斬撃のように。


 けれども所詮手刀。

 鉄身五身の相手では無い。


 ……そのはずだった。


 咲さんは直前で、その腕で自分の絶対急所である頭部を庇う動きを見せた。


 それが、ギリギリ間に合った。


 次の瞬間。咲さんの両腕はそれによって深く傷つけられる。

 まるで刀に斬りつけられたように。


「!」


 咲さんは悲鳴をあげなかった。

 ただ、タックルを停止し、踏みとどまり。

 跳び退る。


「……鉄身五身をしているからと、防御が成ったと思い込んだか? 甘いわ」


 初代様は酷薄な笑みを浮かべて、咲さんの未熟さを指摘する。

 咲さんは特殊技能プリンセススキルで再生しながら


「私の常駐鉄身五身は、対戦車ライフルをも弾くのに……!」


 冷や汗を流しながら。


 常駐……?

 ということは、咲さん、実は24時間365日、休みなしで鉄身五身やってたの!?


 ……何のためか分からないけど、これが上級の阿比須の使い手ってこと……?


 私の数歩先を行く女性……咲さん。

 そのさらに上をいく、優子……初代様!


「対戦車らいふるとやらがどれほどのものか知らぬが、鉄身五身で守った身体を、同じ鉄身五身で守った手刀で打ち破った。単純な理屈じゃ」


 初代様の、未熟者を叱責する熟練者の言葉。

 私は絶望的な気分になる。


 そんな人間が妖魔獣になってしまった……!


 恐ろしすぎる!


 そこに


「咲ーッ!」


 少年の声がした。

 切羽詰まった。


 咲さんはそれに反応し、振り向いた。


 そこにいたのは、可愛い小学生男子。

 美少年。鬼畜ショタの疑いがもたれる咲さんの恋人。


 萬田君。


「トモくん! 危ない!」


 そんな言葉。

 だけど彼はそれは一切無視し


 走りながら六道ホンを取り出して、変身コードを撃ち込み


『Standing by』


 萬田君は高く六道ホンを掲げて宣言した。


「変身! 六道シックスプリンセス!」


『Complete』


 そして光に包まれ、彼は初代様に突っ込んでいった。

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