第8話 閻魔さんと友達になりたいの

 どういう風の吹き回しだろう?

 よく分からない。


「ええと、何で?」


 ……なんかしたかな?

 分からない。


 すると


「……私、閻魔さんと友達になりたいの」


 そう言って、微笑む。

 どこかぎこちない。


 ……なんか嫌な予感がするな。


 だから


「いいよ」


 そう言った。




 机をくっつけて、一緒にお弁当を食べる。

 まあ、私はおじやなので、国生さんみたいに上品には食べられない。


「お昼ご飯におじや?」


 国生さんが珍しいものを見る目で私を見て来たので


「栄養の吸収率の問題で、お父さんが」


 お父さんのすすめで、私は毎日おじやを食べている。

 タッパーの中身を私は見る間に空にした。

 そして炭酸を抜いたぬるいコーラを飲み。


 フーッ


 深い息を吐く。

 バナナを剥く、2本。

 そして二刀流で食べる。


「食べるの速いね」


 そう言われたので


「これは自分のための食事だからね」


 と、言ってから。


 今は国生さんと一緒に食べてるじゃん!


 と気づき


「あ、いつもはそうしているから、ってことだから」


 言い直す。

 ……ホントは、食べ方の問題だと思うんだけどね。

 かっこんで食べてるんだからそりゃ速くなるでしょ。


 私だって普通のご飯だったら普通に食べるよ。


 そしてバナナを2本食べ終えて、3~4本目に行こうとしたところだった。


「あっ!」


 国生さんが頭から机に突っ伏して。

 私のバナナと一緒に、自分のお弁当をひっくり返した。


 私はとっさに国生さんのお茶を机からサルベージする。

 液体は始末が面倒だからね。


「どうしたの?」


「うん、ちょっと急におなかが痛くなってしまって」


 そう、弱々しく笑う。


 私は


「そう」


 そう国生さんに返して。

 席を立つ。


 バナナは皮剥いていないのは普通に食べられるから問題ない。

 剝いたのは……2本、床に落としてしまった。


 まあ、大丈夫か。これも。


 私はそれを拾い、口に全て放り込み、咀嚼。

 美味いマズいは舌の上だけのこと。

 おなかに入れば同じだ。


 これ言うと、お母さん怒るんだけど、正直そう思ってるんだよね。


 だから、別に私は落ちたものでも食べられる。


 で。


 つかつかつかと、教室の隅でこっちをちらちら見ながら何か言ってる2人。

 五味山ごみやま九相くそう


 そいつらに、近寄って行く。


 そして。


 思い切り、脱力して。


 力いっぱい、ビンタした。

 五味山に。

 肩から背中を狙って。


 吹っ飛ぶ、五味山。

 そして


「あぎゃあああああ!」


 そして涙を流して床でのたうち回って苦しむ。

 肩と背中を抑えながら。

 この技は、痛いからね。


 鞭打って言うんだけど。


 まあ、どうでもいいや。

 要件。


「何してくれてんの?」


 ……自分でも信じられないくらい、声が冷えていた。

 こいつら、許せない。


 私は自分たちがさっき食事をしていた席を指差して


「アンタたち、国生さんを脅して、私の食事を邪魔させたでしょ!」




「な、何かショーコあんのかよ!?」


 九相がそんなことを言って来たので


「状況証拠で十分だってこと、わかんないかなぁ?」


 私はそう返した。


 そして続ける。


「国生さんは何か嫌なことを無理矢理やらされてるオーラを出してた。そしてアンタたちが、それをじっと見守っていた。この閻魔花蓮がそれを分からないとでも思ってんのッ!?」


 ……全部見抜かれている。

 それを悟ったのか、やつらは


「だったらどうだって言うんだよッ! お前の喰ってるモンなんて、ただのバナナとコーラだろッ!? ベンショーか!? いいぜ!? 千円で足りるだろそんなもんッ!」


 言って、財布を出そうとしてくる。

 金さえ出せば済むと思ってんだ……


「ふざけるなッ!」


 ビリビリッ!


 空気が震える。

 本気の発声。


 自分が抑えられない。

 だから、言ってしまったよ。


「お前らは、国生さんに自分のお弁当をひっくり返させたでしょ!? それがどんな思いか考えられないのッ!?」

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