『寝ずの番をする死神』


 寝ずの番をする

 蝋燭を二本守る

 剣を以て

 通夜の主演になったようだ

 皆が死者のために

 日常の仕事を放棄した

 気遣いを共有して

 日頃のぎすぎすを

 忘れたことにしてくれている


 眠らずに死者を見ている

 蝋燭の火を見つめる

 剣先をかざして

 通夜の主演になったようだ

 皆が死者のために

 日々の苛立ちを放棄した

 気遣いでいっぱいになりながら

 いつものごわごわを

 今だけはなかったことのようにしてくれている


 目を閉じたまま死を見つめている

 二本の剣をかたどった蝋燭の火を守り切る

 その剣で誰かを斬ることはなく

 通夜の主演になったようだ

 誰もが死者のために

 日常の小言を放棄した

 実は気なんて誰も遣ってはいないのに

 いつもの黄昏を

 亡き者の為に目を伏せてくれている

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