Funky Dealer3

いい感じで切るとこが見つからなかったから、ちょっと短めに切ってます。





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酒。


それは人を狂わせる、悪魔の飲み物だ。


理性を薄れさせ、意識を蕩けさせ、自制心を削って剥ぎ取る、人を堕落させるためにある、そういう飲み物だ。


かくいう俺も、前世では何度も何度も酒で痛い目を見た。


百害あって一利なし、ろくでなしの大好物、親不孝の大定番。


と……そこまで言えば言い過ぎだ。


酒は適度に付き合えば、気持ちいいもの、乙なもの。


問題はその酒が、今世の俺ではまだ飲む気にもなれないその飲み物が、どうにも厄介な女を強く引き寄せてしまう事だった。



「酒はいいのぉ、仕込む音にすら心が弾む」


「あんまり顔を近づけるなよ」


「酒の方とて妾の麗しきかんばせが見たかろうて」



そんな世迷い言を呟きながら、イスローテップはだらしない笑顔で俺がかき混ぜる樽の中を覗き込んでいる。


俺の研究室に置かれたドでかい酒樽。


そこに寄せて置いた移動式の踏み台階段の上は、俺と彼女と錬金術師として教育中のミメイの三人が乗っていて、もうぎゅうぎゅうだった。


そんな三人が見つめる樽の中では、麦汁の糖がアルコールと二酸化炭素に分解され、ぼこぼこと泡が浮いてどんどん酒ができあがっていっている。



「フシャ様ぁ、今これって何をやってるの?」


「あー、精霊が鍋の中で麦汁を酒に変えているから、それに力を貸しているんだ。ミメイも一緒に棒を持って魔力を流してごらん」


「うーん……」


「精霊さんに頑張れって言ってやりな」


「頑張れ頑張れ……精霊さん……頑張れ頑張れ……精霊さん」



短いおさげの髪を振りながらそうつぶやくミメイの手を上から握り、反応を促進する魔力波を流し込んでいく。


理屈はわかっていなかろうとも、然るべきタイミングで然るべき質の魔力を流せば錬金術は成立する。


化学反応を超短縮できるこの錬金術のスキルにかかれば、はっきり言って酒作りなんてちょちょいのちょいだ。


なんなら発芽と梱包が一番時間がかかるぐらいで、仕込み自体は錬金術師ならば誰にでもできるような、なんでもない作業なのだった。



「蒸留はするのであろうな? 妾は火が着くような酒が好きでなぁ」


「しないよ。一樽目は練習だ、港にでも持って行って皆に飲ませるさ」


「錬金術師の作る酒は、雑味が少ない良酒になる。蒙昧な者共に飲ませるにはちともったいないのぉ……どうじゃ? 妾に差配を任せてはみんか?」


「駄目駄目、酒好きに任せたりしたら一人で好きなだけ飲んじゃうだろ」


「酒とて妾に飲まれたがっとる」



樽に体重を預け、尻を振りながらそんな事を言うイスローテップ。


その背中の上に、乳白色の茶の入った茶碗が乗せられた盆がぬうっと現れた。


それを持つ腕の先を視線で辿っていくと、メイドのリザが樽の横に立ってこちらを見ていた。



「フシャ様、奥様がお茶をと」


「ああ、ありがとう」


「おお、気が利くではないか」



イスローテップは樽の中を覗き込んだまま手を上にあげて茶を催促するが、茶の入った茶碗は二つしかない。



「お茶が二つしかないぞ」


「夫の仕事を邪魔する耳長エルフに飲ませる茶はないと、奥様が言っておられました」


「邪魔などしておらんとも」



いいや、邪魔だ。


俺はリザからお盆を受け取り、そのままイスローテップの背中の上に乗せた。



「何をする」


「動くと酒樽に茶が溢れるぞ」



そう言うと、彼女の背中はぴたりと動かなくなる。


よしよし、イスローテップは酒で動かせるんだな。


覚えておこう。



「リザ、下で火の番をやっているイサラにもやってくれ」


「畏まりました」


「ミメイ、お茶を頂こうか」


「はーい」



俺たちはこうして時々小休止を挟みながら、酒の仕込みを続けたのだった。






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突発性難聴になって難儀していました。

幸いすぐに耳鼻科に行ってステロイド薬を処方されたため、だいぶ回復してきています。

みんなも耳が塞がった感じがして耳鳴りがしたと思ったら、48時間以内に耳鼻科に行こうね。

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