第351話 VSライトヘビー級ドン4
「危なかったぁ…」
「いや、ほんとにな」
俺は椅子にドスンと座ってホッと一息。
意識もしっかりしてるし、ダメージ自体も特にない。頭を少し揺らされただけで、これもこのインターバルで回復するだろう。
「何が悪かったかな?」
「フリッカーを見せすぎたな。恐らく向こうの陣営は、拳聖が様子見してる間にフリッカーを掻い潜るタイミングを身体で覚えて、一撃で仕留めるつもりだったんだろう。フィニッシュにアッパーを使ったのも、スリッピングアウェイを使わない為だろうな」
「何かを狙ってると思ったけど、いつもと違う動きをして、俺に探らせるのが狙いだったのか」
「ああ。後、お前は色々考え過ぎだ。今回の試合は単純だ。力で捩じ伏せろ。お前のいつもの慎重な姿勢も悪い事じゃないが、今回はそこを狙われてる。拳聖が序盤から猛攻を仕掛けるのは、対戦前から相手に過度な喧嘩を売られた時ぐらいだからな」
むむむぅ。
俺のそういう性格まで込みで作戦を考えてきてたのか。ドン選手は映像ではもっとイケイケな選手だったから、ここまで作戦を練ってきた事にびっくりだ。
流石アメリカでもトップクラスに大きいジムに所属してるだけの事はある。多分、トレーナーが優秀なんだろうが、そのトレーナーの案をしっかり遂行出来るドン選手もヤバい。
「第2Rからはお前から仕掛けろ。フリッカーのタイミングを掴まれてるからと、消極的になったら、それこそ相手の思う壺だ。相手に策を使わせる暇を与えるな。正面から力で叩き潰せ」
「がってん」
☆★☆★☆★
「危なかったぁ…」
「いや、ほんとにな」
場所は変わってドン陣営。
奇しくも拳聖陣営と同じ事を言って、ドンもベンチに座る。
ドン陣営が立てた作戦は完璧だった。
最後の最後まで上手くいったと言っていい。拳聖の対応力を超えて、顎にアッパーを当てて、フラつかせる事に成功。
しかし、そこから勝機に逸ったのがいけなかった。慣れ親しんだスタイルで仕留めにかかったドンに拳聖からの手痛いカウンター。
あの時点ではまだダメージはあったはずなのに、綺麗にクロスカウンターを合わせられ、頭を揺らされてフラつき、逆にドンが一気にピンチになってしまった。
あそこでゴングが鳴ってなかったら、どうなってたか分からない。
「理不尽すぎる。確かに俺も少し焦ったとはいえ、いきなりカウンターを合わせてくるかよ」
「まあ、向こうも映像研究はしてるはずだからな。想定通りのタイミングで来て、反射的にカウンターを合わせたって感じだろう。流石にフラつきまでは演技じゃないだろうからな」
「……やっぱり理不尽じゃねぇか」
「……そうだな」
拳聖の理不尽さを再確認したドンとトレーナー。
とはいえ、あの一撃で決まったら嬉しかったが、この後が無策という訳でもない。
「ケンセーがこの後どう出てくるかだな。また様子を窺ってくるか、フリッカーをやめてオーソドックススタイルにしてくるか。これならなんとかなるが、一番面倒なのは正面から突っ込んでくる事だ。純粋に力勝負に持ち込まれたら、正直なす術がない」
「これから戦うってのに消極的な事を言うんじゃねぇよ」
「現実はしっかり受け止めるべきだ。正面からじゃ勝てないから、こうやって策を使ってる訳だろう? だから、次のラウンドからお前がやる事はひたすら疑心暗鬼にさせて、まだ策を用意してると思わせる事だ。なんとしても拳聖に安易に突っ込んで来させないようにしよう」
ドンとトレーナーは最終確認をして第2Rに臨む。
そしてゴングが鳴った瞬間、拳聖はドン目掛けて一直線に突っ込んできた。
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