五日目『元日の街ブラ』
5日目。1月1日。元旦の朝である。
私と友人はそこそこの寝坊。9時くらいに起きる。昨日も少し呑みすぎた。
新年だからといって、特別な挨拶なんかはしない。
そんな静かな新年に友人はこう
「ちゃんぽんが食いたい」と。いきなり何を言い出すんだコイツは。
「あー?ま、この辺なら『井手ちゃんぽん』が旨いかなあ」『井手ちゃんぽん』は佐賀に本店を置くチェーン。
「そこ行こう」彼は『井手ちゃんぽん』を食う気満々である。
私達は身支度を整えると、筑紫野市に向かう為に電車に乗る。
この路線は。以前仕事の通勤の為に使っていた。少し憂鬱である。
筑紫野市
着くと閑散とした駅が広がっている。
私は閑散とした駅の風景を見て思う、そうだ今日は元日だ。『井手ちゃんぽん』が営業しているかどうかかなり怪しい。
その嫌な予感は的中した。
駅から少し歩いた所に『井手ちゃんぽん』の店舗はあったのだが…1月2日からの営業である。
これで私達は昼飯を一度逃した。
少し険悪な雰囲気になる。
「元旦だから店やってる訳ねえやん」私は友人に言う。
「んあ。なあ、小田っち。今から近所の山にアタックせえへん?」彼はスマホの画面を見せる。表示されているのは2駅ほど先の基山の山。
「せん。面倒くさか。行きたきゃ自分で行かれえ」
「小田っちのケチ」
私と友人は離れて歩く。この時はマジでAに一人で登山に行かせるつもりだった。
だが。彼はちょぼちょぼ私に着いてくる。結局は2人で駅へ。
私が北九州方面のホームに行くと、Aも着いてくる。
「山行くなら佐賀方面や。反対のホーム」
「…やっぱ山はええわ。装備が心もとない」
「あっそ。んじゃあ。昨日見た釣り動画のサビキの上カゴを買いに百均行くぞ。博多や」
私と友人は博多駅へと向かう。
博多の駅も。元日だからか閑散としている。
どの商業施設も営業をしていない。
私達は百均に行く為にバスターミナルへ。
バスターミナルは元日だというのに元気に営業をしている。
とりあえず百均でサビキの上カゴを買う。そして昼飯を食う為に上層階に行ったのだが。
上層階のレストラン街も営業をしていなかった。
これは昼飯難民の兆候である。拙いぞ。
「こりゃ拙い」私は言う。
「拙いな。元日やべぇわ」
「とりあえず、デイトスの麺街道行っとくかあ」デイトスは新幹線改札の近くにあるお土産専門の商業施設であり。そこには麺街道という九州各地のラーメン店を集めた階がある。
デイトスの麺街道が営業していないかハラハラしながら向かう。
…嫌な予感は的中しなかった。無事に営業中。
周りにはコロコロを転がした帰省客が
私とAは前から目をつけていた久留米の『モヒカンラーメン』に入店する。当然、列はあったが。
そう言えば。『モヒカンラーメン』の列を探している最中。
友人が一瞬私から離れた。何をしているのかと思えば。
どうやら麺街道の人混みの中で有名なラッパーを見つけたらしい。名前は忘れた。
彼は憧れの人に会えたせいか、目をキラキラさせながらモヒカンラーメンの列に並ぶ。
「小田っち。やべえ人に会った」
「はあ?俺から離れた時?」
「そう。〇〇〇の●●●さんが居ってん」
「あ、そう。俺ヒップホップ知らんし」
「クソぅ。伝わらんか。いやあ。写真撮っとけば良かったなあ…畜生、列離れて良い?もう一回声かけたい」
「面倒くせえけん止めれ」
友人はソワつきまくっている。ラーメンの事なぞどうでもいいらしい。
列は30分後には解消される。
私と友人は『モヒカンラーメン』の店内に入る。
「いらっしゃーせえ!!」店員の元気が良い。
事前に買った食券を店員に提示すると。3分以内に着丼。これまで行ったラーメン屋の中で一番早い。
私が頼んだのはチャーシュー麺。丼の周りにチャーシューが
私は早速スープを
うん。旨い。これなら久留米ラーメン初心者にも推しやすい。
スピード提供の店。私達もスピードを上げて食い、替え玉をしてさっさと店を去る。
デイトスを出たら、私と友人は駅をブラブラ散策―と思ったら。
新幹線の改札でラッパーと遭遇。名前知らんけど。
友人は無理して話かけ。私は彼とラッパーの写真を撮る。
友人はしばらくラッパーと話し込んでから分かれる。
「いやあ。福岡で高槻の星のラッパーと会えるとは。小田っちと居ると良いことあるなあ」
「お前が俺の運気吸い取ってるんじゃね?」
「かも知らん。いやあ。写真撮れて良かったわ」
「はいはい。良かったねえ」
私と友人は博多の街を散策し。
そのついでに地下鉄に乗って天神へ。
天神の街も。元日だからか閑散としている。
私達は新天町の喫茶店で茶を啜り。
適当に街を巡って帰る。その最中に古着屋でお互いのコーディネートをしたりして遊ぶ。その時、私はそこそこ良いセンスを発揮したらしい。
天神から中洲に移動し、私達はキャナルシティに寄り。
ウィンドウショッピングを楽しんだ。いやあ。お金ないって辛い。
そして。キャナルから歩いて、博多駅に戻って今日は終了。
なんだか中学生の休日みたいな過ごし方をしてしまった。
だが。30になった今でもこういう事は楽しいもんだ。
一人ならようせんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます