第48話
ルリアお祖母様が屋敷へとお戻りになったのは、一週間後だった。一度、ギンの弟、ラハに渡す魔道具を取りに戻ったみたいだけど。すぐカーシンへ行き、お祖母様はしばらく帰ってこなかった。
カサンドラ達は妹から贈られたドレスに絶句した。あまりにも酷いドレスだったが、シュシュは紙とペンを持ち新たなデザイン画を描きた。
「さすがシュシュね」
「あれが、こうなるのか?」
「なります! 必要な布などが入りますが」
「じゃ、買い物に行きましょう!」
ドレスを直すために必要な、布の材料を買いへタサの街にみんなで行ったり。時間があるときはカーシンへ冒険に向かい、カサンドラが欲しがった魔石ストーブをついに手に入れた。
タサの街で手に入れた情報誌に。アサルト皇太子殿下と、シャリィの婚約式の舞踏会の話が載っていた。
内容は、王都で有名な衣裳店のデザイナーに、舞踏会のドレスを頼んだとか。国一番の宝飾品を準備した記事が載っていた。
(これは……かなり、豪華な舞踏会になるわね)
あの日の後。カーシンのララサの街の冒険ギルドで、ギンに会ったとき、彼はパーティーの前でアオ君に土下座をして謝った。ギンのパーティメンバーも謝った。
カサンドラとシュシュは、これはアオ君が決める事だからと、なにも言わず見守った。ギンは、アオが辛いことがあっても。いつも笑顔で、自分よりも、大人なアオに嫉妬していたといった。
『何があってもへこたれない、アオが羨ましかった』
『そんなことない。オレだって、へこたれる時はある』
そして、あれから弟のラハは元気でモリモリ食事を取り、体も動かせるようになったと話した。
『そうか。ギン、よかったな』
『ありがとう。みんなと話し合ったんだが……アオがもしよかったら……パーティに戻ってこないか?』
『ギン、悪いが無理だ。オレはまだお前たちを許せない……許すには、もう少し時間がいる。許せる時がきたら、酒でも飲みにいこう』
アオの嘘のない言葉に、ギン達はなに言えなかった。
『わ、わかった……ほんとうに、すまなかった』
彼らにアオは「許さない」と言った。アオは、あれだけの事をされたのだ、カサンドラもその答えが正しいと思った。
♱♱♱
アサルト皇太子殿下とシャリィの舞踏会まで、後1ヶ月となった。カサンドラは慌てることも怖い夢を見なくなり、楽しい日々を過ごしているし、妹からきた手紙に返信をした。
本日はシュシュとタサの街からの帰り、庭で剣の訓練をするアオ君に声をかけた。
「アオ君! タサの街でいい怪鳥のお肉が手に入ったわ。今日の、お昼はオリーブオイルで揚げる鳥のフリート(鳥の揚げ物)にしましょう」
「お、いいな」
「ドラお嬢様、アオ君、天気がいいのでルリア様を誘い、庭のテラスでお昼を食べませんか?」
シュシュの提案に、カサンドラとアオは頷き。
昼食を作るために、キッチンで並んで昼食の準備をはじめた。今から作る鳥のフリートは、塩コショウをした怪鳥の肉に薄力粉をまぶして、卵にくぐらせて、熱したオリーブオイルで揚げる料理。
「ううん〜揚げ物の香りっていいわ。誘惑に負けて、食べすぎちゃいそう」
「お嬢様、大丈夫ですよ。食べ過ぎたら一緒に運動しましょう」
「オレもその運動へ、参加する!」
「えぇ、みんなで運動しましょう!」
3人で仲良く料理を仕上げて、テラス席に運んでいた。そのカサンドラ達の真上に、バサバサと羽音が聞こえカサンドラ、シュシュ、アオは空を見上げた。
「まぁ図鑑で見たことがある……真っ白で、大きなトカゲかしら?」
「えぇ、真っ白な、大きなトカゲですね……」
アオは驚き。
「ち、違う! あれはトカゲではない。ドラゴンだぁ!」
「「ドラゴン⁉︎」」
「【若人達よ……ここに愛しき、ルリアがいると聞いた、ルリアはいるのか?】」
その真っ白なドラゴンはたどたどしい、デュオン国の言語を話した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます