第42話

「いま、コイツと話してるから、ドラは家の中に……」


 入ってと。カサンドラを家の中へ帰そうとしたが。ギンがカサンドラに気付き、アオの側にいるカサンドラに話しかけた。


「あ、あんただろ? 魔女様の孫って言うのは」

「ギン!」


「魔女様って、ルリアお祖母様のこと?」

「そうだ、頼む! 俺の弟を診てもらえないか聞いてくれ!」


 ギンは弟のことがあるからか、アオが止めても、カサンドラにさらに近付こうとした。だけどカサンドラは、ランタンの灯りの下でギンの顔を見て「あっ!」と叫び、眉をひそめた。


「貴方は! 前、冒険者ギルドで、アオ君に意地悪な事を言っていた人だわ。そんな人のお願いなんて聞きたくありませんが……弟さんは関係ないものね。話を聞くから詳しく教えなさい、ルリアお祖母様に伝えるかはそれからよ!」


 自分よりも背丈が高い、ギンの迫力に負けないカサンドラに。ギンはアオにはなした話をもう一度、話した。


 ギンの話を聞いたカサンドラは「弟さんはどのような言葉を話すの? メモは取ったの? いま家に誰かいるの?」と、更にギンに詰め寄る。そんなカサンドラをアオは止めて、手を引き、自分の背に隠した。


「アオ君? いま、彼の話を聞いているの」

 

「うるせぇ、そんな薄着で男に近付くな! 話は離れていても聞ける!」


 初めて聞いた、アオ君の怒りを含んだ声にカサンドラは驚き、アオの言うことを素直に聞いた。


「そうね……弟さんが、どのような言葉を話すか、メモに取ってあるかしら?」


 ギンはコクと頷く。


「誰かに聞こうと思って書いておいた……家に置いてある」


「だったら、今から彼の家に向かいましょう!」

「ハァ? シュシュは?」


「疲れているみたいで、ぐっすり眠っているわ。着替えくるから待っていて」


 二人を待たせてカサンドラは家に戻り、冒険のときに着ていたシャツとスラックスを履いて戻ってきたが。すかさず、アオ君はカサンドラのシャツのボタンを上まで止めて、渡した上着を着てくる様にいった。




「アオ君、これで良いかしら?」

 

「仕方がない。ドラはオレがダメだと言っても、ギンの家に行くんだろ?」


 少し機嫌の悪いアオ君の出した手に、カサンドラは手を乗せて、ギンの家まで移動した。ギンの家はアオの家とは違い二階建ての大きな家。彼の両親は冒険者で今夜は泊まり込みで、討伐のクエストに出ていると言った。


 部屋に入ると弟さんのだろうか、うめき声が聞こえた。


「ウッ、ウウッ、ドルゴラ……ロウ、アラ」

「ラハ? 目が覚めたのか?」


 ギンの弟、ラハの部屋に入ると彼は何か喚き、胸が苦しいのか……しきりに掻きむしっている。


「クグル、ナラムラ……アッ、アァ――ハァ、ハァ」


 ここ、カーシン国の言葉とは違う言葉。それを聞いたカサンドラは腕を組み、考える素振りを見せた。


「確か、クグル、ナラムラって……古竜語だったかしら? 訳すと『助けてくれ』と言っているわ?」


「古竜語? ドラは、この言葉がわかるのか?」

「弟が言う、謎の言葉がわかるのか?」 


 2人同時に聞かれ、カサンドラは頷いた。


「わかると言っても……ここまで。ルリアお祖母様に聞けば何かわかるかしら? 他の古竜語が書いてある紙とペンを貸してくださる。出かける前に渡されたお祖母様の使い魔を呼んで、この紙を運んでもらうわ」


 ギンから紙を受け取ったカサンドラは、弟さんが発した言葉が書いてある下に、ルリアお祖母様に宛てた手紙を書き。


 フクロウをここへ呼んで、手紙を送った。

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