第38話

 アオは自分のクエストをしつつ、水を得た魚のように自由に動き回る、カサンドラとシュシュのあとを追った。


 この調子だと、カサンドラは目を離した隙に可愛いといって毒草、毒キノコを触りかねない。案の定、カサンドラは真っ白な花をみつけて、手を伸ばしていた。


「ドラ、その花は毒だ、触るな!」


「え? 真っ白で可愛いのに……」


「ドラお嬢様、この花もしや『ミミリお嬢様は推理がしたい』に出てきた……毒花スズラの花ではないでしょうか? 細い花茎に鈴のような壺型の真っ白な花下げると、本に書いてありませんでしたか?」


「まぁ! シュシュのいう通り。この花が本に出てきたスズラなのね?」


 今、カサンドラのシュシュが今ハマっている。お茶会に参加した屋敷で事件が起こり、ミミリお嬢様が難事件を側近のロールと解決する、大人気ミステリー小説だ。


「そうだ、その花はスズラであってる。花には触るなよ。隣の青いキノコにもな」 


 カサンドラは伸ばした手を引っ込め、うなずいた。

 

「わかりました、触りません。私、そろそろスライムを倒す、クエストをはじめたいです。私とシュシュにスライムの倒し方を教えてください」


「よし来た! ドラ、シュシュ、よく聞けよ。スライムは肉体の中央付近に、極小から巨大な核を持っている。倒すときはその核を、この様に攻撃するんだ」


 アオ君は実演付きで、カサンドラとシュシュにスライムの倒し方を教えた。それを見て頷き。


「スライムの核を攻撃するのですね」


 前に買ったナイフを構え、カサンドラがスライムを切るもポヨヨン、ポヨンと弾んでしまい、スライムの核にあてることは難しい。カサンドラとシュシュは何度挑戦しても、ナイフが核まで届かなかった。


「シュシュ、なかなか難しいわね」

「はい、ドラお嬢様」

「でも、あきらめませんわ!」

「私もです!」


 カサンドラとシュシュはスライムを倒している。2人は1時間かけてなんとか、3匹のスライムを倒すことに成功する。


 その倒したスライムが消えたあと、地面の上に赤色スライムからは赤い石、青いスライムからは青い石が落ちていた。


「アオ君、これって前に魔石トースターで使用した、赤い魔石に似ているのだけど……」


「そりゃ、似てるな。魔石は魔物を倒して手に入れるんだ。スライムを倒して手に入れた魔石は、クエストの報告のとき冒険ギルドの受付嬢に渡すから忘れずにな」


「わかったわ」

「はい、わかりました」


 カサンドラとシュシュはクエストを終えたスズ、チロ、アオに見守られながら。それから2時間をかけて10匹のスライムをどうにか倒して、魔石を10個集めた。


 常日頃、別荘で体を動かし鍛えている2人だが……戦い慣れていないからか、ヘトヘトでその場に座ってしまう。


「ふぅ、ふぅ……けっこう疲れましたわ。ここらで、お昼休憩にしませんか?」


「ハァ、ハァ、私も疲れました……お腹も空きました」


「いいな。スズ、チロ、森の外でお昼にしよう。ドラ、シュシュ、オレに捕まれ」


 ありがとう。と、アオ君の出した手に捕まり、カサンドラ達は森の外で向かった。



 本日のお昼は。カサンドラとシュシュのお手製のお肉、野菜のサンドイッチ、レモン水、フィナンシェと紅茶。


 スズとチロが持ってきたのはカサンドラの好きな、アンコのパン、チョコのパンだった。

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