第8話「ゴ〇ゴム仕業だ!」「乾〇って奴の仕業なんだ」「おのれデ〇ケイド」「ユグド〇シル絶対に許さねぇ!」仮面ラ〇ダーって定期的に特定の何かに責任を押し付けるよね?




「な、なによ今の攻撃……本来のダメージより90以上もダメージが高かったし、3回ノックバックした……アレは何?」


【U_MAn】の声は震えており、何か信じられないモノを見たと言わんばかりの表情だ。



「グリッチって奴だ……簡単に言えば本来意図しないバグ、仕様だ。今回俺は散弾を発射する狙撃銃スリーティカーで、空中射撃した瞬間に格闘すると起こると言う現象が、海外掲示板レディッドで報告されていた。その元動画をタイマー片手にしておおよその入力受付時間を把握した。後は体が覚えるまでひたすら練習した」



もちろん。俺も成功率が100パーセントと言う訳ではない。今回は偶然うまくいっただけで成功率は一割程度しかない。そんな部の悪い賭けに勝ったのだ。



「ゲームの不具合を意図的に利用して、通常のプレイでは起こりえない現象を発生させ、ゲーム展開を優位に進めるなんて恥ずかしくないの?」



 ゲーマーとは概ね負けず嫌いの、ガキ見たいな性格をしている事が多く、責めることが出来る部分があれば、例えマナーの悪い行為であったとしても、それを容認すると言う悪習がある。


 例えば、FPSゲームなどで倒されても視点が残るゲームの場合キルされた後に、残る死体を打ったり、屈伸やジャンプなどをして煽ってきたりする。普通にやればマナー違反だが、不正行為をする者に対してソレをやっても問題視する声は少ない。



「恥ずかしくないね……プロゲーマーいわゆるスポンサーが付いた人なら、叩かれやすいグリッチは絶対にやらないだろうが……俺はプロじゃない。

YouT〇beやT〇itchなどで配信をしているストリーマーなんかは、喜んでネタにするんじゃないかな? そして俺はこのグリッチを君意外だと、対チーター戦にしか使っていないから何も問題はない」


「私には遠慮なく使ったじゃない!」


「プロは負けちゃいけないんだ。将棋だってチェスだって……プロなら大きなハンデがあったって勝つんだ。俺は俺のためにお前から要らないって言われたくないだから、禁じ手を使ってでも勝ったんだ」


「そんなことしなくたって、アンタを見捨てたりしないわよ……馬鹿ね。虫の人って……」



【U_MAn】は涙を流していた。化粧を落としていたこともあり、メイクが解けて美しい顔が酷いことになる事がなかった事が、唯一の救いであろう。



「馬鹿って言うな」


「バーカ。アンタ行間ぐらい読みなさいよ」


「行間って……文章かよ……それを言うなら空気とかじゃないのか?」


「それもそうね……ねぇアンタ。名前は? 私は、三ヶ日蜜柑みっかびみかん。三ヶ日みかんの三ヶ日に、果物の蜜柑アナタは?」


「俺は川橋豊かわはしゆたか



もしかして流行ってるのか? この珍妙な名乗り方が……まぁどの字を使っているのかと言うのは確かに分かりやすいが……。



「ユタカ……ユタカ君か……あ、良ければディ〇コードだけじゃなくて、ラ〇ン交換しない?」



俺の名前を噛み締める様に反芻する。女の子に名前を呼んでもらったのは、いつ以来であろうか? 多分高校以来の快挙だ。



などと俺が内心感動していると……ラ〇ンを起動して降り始めた。

俺がポカーンとしてその様子を見ていると……。



「何? ふるふるも知らないの? あ、もしかして通信会社の関係で使えないとか?」


「いや大丈夫だよ……」



あっそっか……このころはまだふるふる機能があったんだ。



「そう。って言うかラインのトプ画もオタクっぽい……これからは私のコーチングターンと言った所かしら」



【U_MAn】改め、三ヶ日みかんは右手を差し出し俺は、その手を熱く握り返した。

細く美しい白身魚のような白い肌はスベスベとしており、ずっと握っていたいと思うほどに柔らかく、何よりも暖かい気がした。



スマホのホーム画面に一軒の通知が入った。


みかん「鼻の下伸びてるぞ」



「うるせぇばーか」



コイツとなら俺はやり直せる。そんな確信めいた直観を感じていた。




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