第4話真北

「家屋の配置は真北(しんぼく)に合わせています。


真北は住宅地図の北ではなく、5%右に振っていますからお間違いなく。


 それをひたすら進むと、正確に北極点へ到達します。」


 そこまで説明された来場客は、信用しない訳ではなく、契約に繋がる再来場率は100%近くまで上がっていた。


 直近の先輩や上司を抑え入社1週間でここまで説明出来るとはと、見学会に居合わせた工務長の丹浦(にうら)も舌を巻いていた。


 新井田の新築請負契約数は月平均2本だったが、毎月コンスタントに契約実績を上げているので、それだけではなく、解約率は断トツに低かった。


 沖縄那覇の国際通りの回転寿司チェーンは、那覇でしか獲れない魚を裁いて食わせてくれる。新婚旅行を沖縄に選んだ理由は新井田の女が居なかったからだ。


 ここでしか味わえない寿司に舌鼓を打ち寿司を堪能していた。


 新井田真琴と柊木奈津子(ひいらぎなつこ)は、奈良県と東京都の遠距離恋愛の末、

結ばれて今日この日に新婚旅行で、那覇のホワイトホテルに宿泊していた。


 その事を同僚から聴いたひとみは般若と化していた。

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