神ノ遊戯
菅原 高知
第1話 プロローグ
吹き荒ぶ六華。
結界で外界と隔絶していた社の敷地にも死の風が舞う。
その中心にいるのは一人の少女と貴族然と佇む初老の男だった。
「私たちの間に卑怯な勝負は要らないっ。正面から正々堂々と、互いに持てる全てをぶつけるっ。そして――勝つのは私だ!」
少女――
自分の言葉で、自分の気持ちに気が付いたのだ。
『ハハハっ。不遜! だが、よくぞ申したっ。それでこそ我が依り代なり。心のままに、想う存分死合うがよいっ』
望の覚悟に、これまで取り繕っていた、神――背後に佇んでいた老人の化けの皮が剥がれ落ちた。
振り返らずとも、伝わってくる。獰猛に笑い、楽しむ神の顔。
――荒神
望は知らず、額から汗を流した。
それは、待ち望んだ戦いに挑む興奮の為か。
はたまた、己を鼓舞する神の気に当てられたのか。
望の口元は――知らず笑みを
ここに、人と神の縁が実を結んだ。
「であれば公よ。有らん限りの
『ああ、無論だ。お主がどうなろうとも我が力存分に貸し与えよう』
互いに気高く、獰猛に笑いながら、魂が呼応し合う。
台風の目であった安全地帯。
無風領域に風が舞う。
いや、違う。
望が風を纏っている。
そして、その風が無風地帯であったこの場の空気を吸い寄せ、圧迫し始めた。
台風の目と外界が混じり合っていく――白い死の世界。
望から発せられる圧し潰されそうな程の圧と、空気が圧縮されつつある圧。
心身共にかかる重圧に剣は戦いの終わりが近い事を感じ取っていた。
望は今では暴風をその身に纏っていた。
荒れ狂う風は刃となって、望の白い肌を切り裂き続けている。その証拠に、望が纏っている風は赤く染まり、巫女服と相まって幻想的な光景を創り上げていた。
「我が名は菅原望っ。
望は
どうどうと胸を張り、自らの意志を宣言する望。
その身体は荒ぶる風雪に裂かれ傷き、流れた鮮血が赤風となり艶やかな長髪乱す、
その姿は――美しかった。
「っ――」
望の勢いにつられて剣も口を開こうとしたが、顔を歪めて開きかけた口を閉ざした。
今の剣に語れる言葉は――ない。
出来ることは唯一つ。
己の全てを『
相対する二人は最後の一撃に想いを託す。
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