第 62 話
「ハッ!!」
「っ!!」
“スッ!!”
残り5人となり、セラフィーナは次のターゲットとなる男に接近する。
それに対し、男は手に持つナイフでセラフィーナを斬りつけてきた。
その鋭い攻撃に、セラフィーナは僅かに目を開き、しゃがみ込むことで攻撃を回避した。
「フッ!」
「うおっ!?」
「っ!?」
しゃがみ込んだ反動を利用して、セラフィーナは男の顎目掛けて掌底を放つ。
男は、その攻撃を仰け反ることで回避した。
どうやら、指示を出しているリーダーらしき男に近付くほど、敵の実力が高くなっているのかもしれない。
「シッ!」
「うごっ!?」
ここまでの相手よりも実力が上なのは理解した。
だからと言って、打ちのめすことに変わりはない。
仰け反った男がバックステップして距離を取ろうとする前に、セラフィーナは素早く腹に拳を打ち込んだ。
「ハーッ!!」
「っ!?」
他の相手をしているところを狙っていたらしく、セラフィーナの攻撃終わりに別の男が攻撃をしてきた。
たしかに、誰であろうとも攻撃終わりは避けにくい。
男のナイフが、セラフィーナの顔へと迫った。
「ガウッ!!」
「ぐあっ!?」
男のナイフはセラフィーナに届かない。
その直前に、リベルタが男へ体当たりをしたからだ。
「ふざけんな!! てめえら何してんだよ!?」
体当たりされた男は、仲間の2人に抗議する。
自分たちがセラフィーナの相手をしている間、リベルタの相手は2人に任せていたからだ。
「いきなり消えたと思ったら、そっちに移動してたんだよ!」
「そいつも闇魔法使いなんだ!」
抗議を受けた2人は、すぐさま反論する。
自分たちは、セラフィーナを助けに行かないようにリベルタの相手をちゃんとしていたからだ。
しかし、僅かな距離を取ったところで、リベルタが影の中に沈んでいった。
そして、どこに行ったのかと思ったら、セラフィーナの方へと現れていたのだ。
影から影へと移動する。
闇魔法使いが行う逃走方法だ。
そのことから、男たちはリベルタもセラフィーナ同様闇魔法を使えることを悟ったようだ。
「グルル……!」
「チッ!」
体当たりをされた男はすぐさま立ち上がり、リベルタの追撃に備えてナイフを構える。
仲間の言う通りなら、闇魔法使いの1人と1匹の相手をしなければならないということだ。
人間の闇魔法使いなら何度も始末したことがあるが、ここまで強力な戦闘力を持っている相手なんて初めてだ。
しかも、魔力を大量消費する闇魔法を使用したというのに、この1人と1匹は息切れをしている様子がない。
つまり、まだまだ魔力は残っているということだ。
予想以上に厄介な相手だと分かり、体当たりを受けた男は思わず舌打ちをした。
「おいっ! こいつらは絶対逃がすな!」
「「「はいっ!」」」
闇魔法使いを相手にする時、一番面倒なのは影を使用しての転移だ。
魔力の消費量から、転移できても近くでしかないが、一瞬でも姿を見失うことに変わりはない。
その隙をつかれたら、逃げられてしまうこともあり得るからだ。
この1人と1匹がこの場から逃走されてしまったら、討伐隊を組まれ、この場にとどまることなどできない。
せっかく作り上げたアジトをまた一から探して作り上げないとならなくなる。
そうならないためにも、この1人と1匹は逃がすわけにはいかない。
そのため、リーダーらしき男は完全にセラフィーナたちを仕留めることに意識を変えたようだ。
仲間たちを痛めつけられてこともあるため、男たちはその指示を待っていましたというかのように返事をした。
「大丈夫。逃げたりしないから」
なぜ自分が逃げなければならないのか。
そんな指示を出している意味が分からず、セラフィーナは逃げるつもりがないことを男たちに伝える。
「こいつ!」
「ふざけんなよ!」
「調子に乗りやがって!!」
火に油を注いだかのように、男たちはセラフィーナの言葉に腹を立てる。
闇魔法使いだと分かれば、魔法による攻撃に警戒する必要はない。
そのことが分かれば、自分たちにも戦いようがある。
先程もセラフィーナをあと一歩まで追い込んでいたのだから。
それなのに、逃げる気がないと舐めているかのような態度をされたことが、男たちは気に入らなかったようだ。
「行くぞ!」
「「おうっ!!」」
1人の声掛けを合図に、残りの2人が動く。
「っ!?」
リーダーらしき男以外の3人が、そろってセラフィーナに向かってきた。
自分の近くにはリベルタもいるというのに、何を考えているのか。
そんなことを思いながらも、セラフィーナは3人の接近に警戒した。
「「「ハッ!!」」」
「っ!?」
距離を詰めた3人が一斉に襲い掛かってくる。
セラフィーナのその考えを否定するかのように、3人はいきなりその場から方向転換した。
3人が自分ではなくリベルタの方へと向かって行ったのだ。
「ハッ!?」
「っ!!」
何が狙いなのか分からず、セラフィーナは3人の動きに視線を向ける。
そんなセラフィーナに対し、突如魔法による火球が飛んできた。
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