夜のバンジージャンプ
高度233メートルから見渡す夜の街は圧巻だった。
高層ビルの窓に映る光はまるで偶然作られたプロジェクションマッピングのように鮮やかな模様を見せている。街を歩く人々はまるでダニのように視界に映ることはない。俺は彼らに対して優越感を抱いた。抱くしかなかった。そう思わなければ、今にも恐怖ですくみそうだった。
「行きます! 5、4、3、2、1、バンジー!」
掛け声とともに俺は体を前に突き出し、真下に頭から落ちていく。綺麗な夜景は完全に消滅し、視界には暗い海が広がるだけだった。俺は恐怖から瞳を閉じ、視界を閉ざす。風の抵抗を感じていると不意に弾性力に引っ張られ、上へと跳ね上がる。刹那、轟音が鳴り響いた。反射的に瞳を開き、視界を開く。見えるのは夜空に浮かぶ美しい火の花びらだった。花火の発射タイミングと俺が上に上がるタイミングが同じだったようだ。
夜空に浮かぶ花火を追いかけるように、俺の身は引き上げられた。
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