第133話:試作型魔盾

 ログイン127日目。発明家クランの人たちからのギミック追加アーティファクトの生産依頼はいろいろ来るけれど、新しく覚えた【魔装錬成】を試してみたい。


 お店の施設メニューに【魔装鍛冶用鍛冶場】が追加されていて、すでにある【代償鍛冶用鍛冶場】と統合もできるようなので、さっそく増設!

 ……って、け、結構値が張るね。【魔装鍛冶】はそれに見合うくらいの職業ってことかな。


 施設を統合して増設する場合は、最初にお店に鍛冶場を増設した時みたいな工事の期間も必要ないらしいので、そのまま生産作業に入れて便利。

 というわけで、ちょっとしたのデータのローディング時間を挟んで今の鍛冶場を『代償・魔装鍛冶用鍛冶場』にアップデート!

 さてさて、中はどんなかんじかな〜?



 代償鍛冶用の鍛冶場にもあった金属を溶かす炉と『捏造』で捏ねるための作業机、素材粉を作るための薬研? みたいなやつはそのままだね。まあ、なくなってたら困るけども。


 そして新しく、なんかでっかい機械? の箱みたいなものがドン! と置いてある。

 これが【魔装鍛冶】で使う器具かな。

 『魔剣ダインスレイヴ』もなんか全体的にメカメカしいかんじだったし、【魔装鍛冶】は作り方からしてそういうスキルなのかも?



 機械っぽい箱を詳しく調べてみると、上部はパカッと開くようになっていて何かを入れられそう。横にはレバーが付いていて、下部は骨組みと複雑そうな部品が組み合わさっているけど、これはどう使うのか完全に謎。

 

 【看破】で調べた限り、【魔装錬成】は『【入力】を基に魔装を【出力】する』というスキルなこと、判定にINTやMNDなどのステータスを使うことが分かっている。

 判定に使うステータスに関しては【代償鍛冶】の奥義【如何様】を使って無理矢理STR判定にするとして、【入力】ってなんだろう?

 

 うーん、考えてばかりいても始まらないし、とりあえずは試してみよう!

 何か入れられそうな箱の上部には、【鍛冶】の素材の基本である金属のインゴットを入れてみる。

 蓋を閉めるとチカチカと各所に付いたランプが点灯して機械が動き始め……途中で止まってしまった。


 同時に『【入力】内容が不正です。正しい内容を【入力】して下さい』というメッセージも表示された。

 むー、これは失敗だね。

 でも、おかげでなんとなく使い方が分かってきたよ。


 上部のスペースに入れたものが【入力】する内容で、【魔装錬成】は【入力】を基に魔装を【出力】する。

 そして【入力】が素材のインゴットではダメ……ってことは、たぶん入れなきゃいけないのは完成した装備品、もしくはレシピ本みたいな作る装備を指定するアイテムだよね。


 レシピを指定するアイテムが別枠だったら本当に手も足も出ないけど……それこそ試してみないと分かんないか。

 お店の在庫の中から売れ残ってる装備を入れてみて、もう一度トライ!


 入れてみたのは【大盾】、片手装備できる盾の中では1番大きいものだね。


 この大盾に付与した【代償】は【軽量代償】。

 これはSPDやAGIに強化が入る付与なのだけど、代償として装備者に設定されている『重量』の値が半減してふんばりが効かなくなる仕様になっている。


 『重量』は重いほど身のこなしの速さであるAGIの判定にペナルティが入り、代わりにノックバックなどで吹き飛ばされる距離が減少する。

 他にも盾役にとって『重量』が重いと得する事はいろいろあるらしいけど、軽くて得られるメリットってほとんどないんだよね。

 一部のフィールドの床を踏み抜かないことくらい?


 せめて回避型のプレイヤーが使う軽装備とかに付けたならマシだったのに、作ったのが効果の実験段階だったから【大盾】に付与しちゃったの。

 まあそういうわけで……売れ残るべくして売れ残っていた装備だね。


 この『軽量代償の大盾』を機械の箱の上部に入れて蓋をすると、再び機械が動き出す。

 今度は『【入力】内容が不正です』のメッセージは出ず、代わりに『魔装』に付ける効果の選択画面のようなものが出た。やった! なんとかなりそう!


 いろいろ表示されてはいるけれど、そのほとんどは暗い色で表示されていて選択できない。

 選択できるのは【魔装反射】・【魔装耐勢】・【魔装変形】の3つのみ。これは基になった装備によって違ったりするのかな?


 うーん、どれにしよう……。まず、【魔装反射】と【魔装耐勢】はどっちも攻撃を受け止めてどうにかするかんじの効果っぽいよね。

 2つとも【盾】としてはスタンダードな効果といっていいと思うんだけど、逆に【魔装変形】は効果名が全く【盾】らしくなくて予想がつかない。


 ……うん、他2つは普通に作ればそれなりの装備になりそうだし、まずは【魔装変形】の『魔装』を作って効果を解明しておこう!

 【盾】が変形して何になるか気になるしね、やっぱり剣とかの武器かな〜?




 表示されているメニューから【魔装変形】を選択すると、『【魔装錬成】を使用しますか?(【入力】に使用したアイテムは消費されます)』というメッセージが出てきた。

 あ、やっぱり【入力】に使った装備は消費しちゃうんだね。これは初回の警告アナウンスかな。


 素材にする装備は別に惜しくないのでもちろんYES! 選択の実行とともに、新しいメッセージが表示される。


『【入力】内容の構造を解析しています……【残り時時間 35:59:59】』


 へー、時間がかかるものなんだね……って、さ、36時間!? 時間がかかり過ぎでしょ!


 さすがに1日半なんて真面目に待っていられないよ! ここは【横着】のスキルを使って待機時間をスキップさせてもらおう。

 【横着】を使えばプレイヤーの選択を挟まない待機時間は即終了。便利だね〜、品質が下がっちゃうのさえなければ完璧なスキルなのに……。


 【入力】内容の解析が(ちょっとズルをして)無事に終わり、【出力】の段階に入る。

 側面のレバーを一定のリズムで倒すと下部の機械が動き、徐々に『魔装』を【出力】していくみたい。

 判定自体は【代償鍛冶】の奥義【如何様】による必要ステータスの変更と【魔装鍛冶の極み】の判定補正によって甘々だから、それほど苦労せずに作業を進めることができた。

 平面から少しずつ立体的に『魔装』が作られていく姿は3Dプリンターみたいだね。


 そうしてできたのがこちら。


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【試作型魔盾(代償)】 耐久:390/390

DEF+104 SPD+24 AGI+32

魔装変形 軽量代償

[説明]

ある女ドワーフが作った盾型の魔装。

変形することで、装備者の道を切り拓く。

通常より軽やかな動きを可能とするが、重量は代償となった。

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 えっと……アイテム名は【試作型魔盾】? 名称変更もできるみたいだけど、めんどくさいからとりあえずこのままで。


 げっ!? 【軽量代償】が受け継がれてるじゃん!

 【大盾】使いのプレイヤーにとって嬉しくない効果が受け継がれちゃった……。

 元々実験目的で作ってるとはいえ、売れそうにない要素が増えるとげんなりするなぁ。

 性能は、元の装備と比べてそれほど変わってない。

 これは【横着】で過程を省略したことによる品質の悪化と判定の補正による品質の上昇でトントンってことかな。


 さてさて、最後の問題は【魔装変形】がどんなものなのかってとこだよね。

 『道を切り拓く』かぁ……これまでの経験から、素直に武器になってくれなさそうな文言だと思うのは私だけかな?


 いそいそとフィッティングルームに入った私は、【試作型魔盾】を装備して効果を使ってみることにした。


「【魔装変形】!」


 『魔剣ダインスレイヴ』の【魔装抜剣】を使った時のように【試作型魔盾】はガシャガシャと変形を始め……最終的にカヌーっぽい1艘の船へと姿を変えた。


 ふ、船……? これは予想外だったなぁ。

 大盾の持ち手の部分は分離して漕ぐためのオール……パドルっていうんだっけ? になっているし、【盾】の【魔装変形】は船になる効果みたい。

 明らかに戦闘向けじゃない、珍しい効果だね。『道を切り拓く』っていうのも、移動手段としてっぽい。


 【魔装錬成】で作れたってことは、こんな効果の付いたアーティファクトもあるんだろうか。

 せっかく手に入れたアーティファクトの効果が『船に変形する』って、結構なハズレ効果な気がしない? いや、便利ではあるんだけどさ……。

 

 まあでも、実験段階で効果が分かって良かったよ。

 実際に作った【試作型魔盾】には【軽量代償】なんてものが付いちゃってるけど、効果自体は携帯型の船としても使えるし、便利グッズ枠で売れそうだね!

 

 

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