第29話
「上手やなぁ。初心者とは思えへんわ」
そりゃ初心者じゃないもん。元ホルン奏者だぞ。
「いえいえ、そんなことないです」
「ちゃんと音トレてるしなれるのも早いやん。それだけで吹部では即戦力!」
「ありがとうございます」
吹部の勧誘はほぼ嘘の羅列だから信用できないんだよなぁ。
「あっ、もう時間か。マッピとか洗っとくし音楽室もどり〜」
「わかりました」
最初は若干怖かったがどんどんいつもどおりに戻っていった。恐らく二条さんって部活の時に鬼怖くなるタイプなんだろうなぁ...
***
「じゃあ二回目の楽器を配るので確認して下さーい!」
今度は...テナーサックスね。okok。
「テナーの人ーこっちきてー」
セミロングの若干脱力系の女性がテナーの案内をしてくれるみたいだ。
「スリッパはいてきて」
「はい」
先ほどと同じようにスリッパを履いて先輩についていく。今度は一人らしい。
「部活入るの?」
「はい。ただ吹部とバスケ部のマネージャーで迷ってて」
「ふーん」
なんだか少し話しづらいな。
「テナーの練習場所はここ」
テナーサックスの練習場所はさっきより超短い距離だった。
「ユーフォは違う人が教えてたらしいけどテナーは今日一人しか居ないから私が教える」
「わかりました」
強豪の割に人少ないよな。桐ヶ谷って。
「まずこのリードっていうのなめといて」
そう言って薄っぺらい木の板を渡された。
なめる?なめるって?これを?
「なめるっていうより口の中に入れて舌で湿らせる感じかも」
「わ、わかりました」
なんだそれ。サックスってそんなのいるのか。
「で、このリガチャーでマッピとくっつける」
先輩は自分のやつで実演してくれた。
サックスってこんな構造になってるんだ。
「じゃあ鳴らしてみて」
「はい」
ピーッ
「??変な音する」
俺、前世から木管の才能なかったしなぁ...
「ちょっと貸して」
そういって俺の手からマッピを取り、先輩が吹く。
ちょ、まって、間接キスなんだけど?恥ずかしいんだけど!
ピーッ
「やっぱリードがおかしい。私のリード貸すから舐めといて」
そういってまたリードを渡される。
先輩のってことはこれも...間接キスだよな。
「どうしたの?時間ないから早く」
ええい!どうにでもなれ!
「じゃあ私がやるからちょっとまっといて」
そういって先輩はリードを俺の手から取って先ほどと同じ動作をする。
「はい。もっかい吹いてみて」
「はい」
ブーッ
「よしよし」
先輩はなにか納得した様子だった。
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