男女比がおかしい世界で陽キャになりたい!

月乃糸

第1話

 気がつくと、俺は赤ちゃんになっていた。


「*&$"#'~)%&>!!」


「&$#_>*`<)~|"!$!!!」


 何言ってるか全然わからないが、赤ちゃん生まれましたよおめでとう的なアレかな。もしかして日本語通じなかったりする?

 もしそうなら頑張って覚えるかぁ〜...


 俺には赤ちゃんになる直前の記憶があまりない。最後に悲鳴が聞こえたくらい。

 痛かった記憶も苦しんだ記憶も燃えるような暑さや凍えるような寒さを感じたこともない。なにもなかった。その前日までの記憶はあるのに。


 ま、とにかく転生してしまった以上前世のことを気にしてもしょうがないだろう。せっかく転生して人間関係もすべてリセットされたんだ。前世よりもっと努力してカーストを上げてやる。

 陽キャになって彼女を作って充実した人生を送ってやる。




***



奏音かなとかえで〜、ご飯よ〜」


 あれから6年、俺は奏音という名前で今世を生きていた。

 心配だった言語の問題は全くなく、恐らく産まれたてで耳がよく聞こえなかったため言葉がよくわからなかったというのが答えだろう。


「「「いただきます」」」


 転生してきたこの世界は今現在西暦2134年、前世と歴史は陸続きになっているようだ。


「このからあげ美味しい!」


「ふふ、よかった」


 でも、ここ100年で大きく変わったことがあった。

 それは男女比。1:1ではなく1:449になっていることだ。449人の女性に対して1人の男。それが人為的なものなのか自然発生的なものなのか人智を越えた特別な存在によるものなのか、まだ世界的に分かっていない。

 しかし、2024年から男児の出生率が減少していったことだけが分かっている。

 それにプラスして、2072年の世界的な戦争によって男性の数がすごく減少。2つの相乗効果で男性がものすごく少なくなったらしい


「姉さん、僕の分の水も汲んできて」


「はーい」


 俺には姉がいる。お目々ぱっちりでかわいらしい小学2年生だ。

 断じてロリコンではない。

 姉は早熟の天才で小学2年生にして数検3級を保有していて、現在準2級の勉強をしている。ガチの天才だ。

 断じてシスコンでもない。

 俺も取ろうと思えば数検3級など余裕で取れるだろうが、それで取ったところで前世ブーストがかかっているだけでフェアではない。しかも姉さんの最年少記録を破ってしまって申し訳ない。

 断じてシスコンではない。


「はい」


「ありがとう」


 こんな世界で、俺が求めていたことはできるのだろうか?

 まぁ頑張るしかないか。


 しかし...男児の義務教育は中学校からで小学校以下は登校禁止なんだよなぁ。

 あぁ〜、あと7年暇だなぁ。

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