第56話 大きな事件

「久しぶりだな、春陽。 お前たちがアークスカイに向かったのは聞いていたが、こんなに早く会えるとはな 」


 そりゃアルカナの騎士団様だ。

 俺たちの動向は聞いているか。


「俺も会えて嬉しいよ。 それよりアルカナの騎士団長様がどうしてここアークスカイに? 」


「アルカナとアークスカイは転移装置で繋がっているだろ? それもあって同盟を結んでいるのだ。 そして俺たち緋光ひかりの守護騎士団はどちらの街の騎士団でもある 」


 なるほど。

 この騎士団2つの街を守ってるのか。

 それはかなり忙しそうだ。


「シリウスが今アークスカイにいるということは、この街で何か起こっているのか? 」


 カイルママからの話もあって、さらに騎士団まで来ているとなるとやはり内容が気になってくる。


「ああ本当は機密事項ではあるが、アルカナの英雄である春陽になら伝えても問題ないだろう 」


「あの、俺たちも聞いてていいんでしょうか? 」

 俺の後ろからカイルは、シリウスを騎士団長と知った上での気遣い方であると思わざるを得ないほどの弱々しい声でそう言った。

 ミアはさらにその後ろ、エレナは気にせずに干し空中魚を食している。

「ボクは神様だし、しっかり聞かせてもらうからねっ!」

 セレスティアは聞く気満々だ。


「ああ、もちろん春陽の仲間ということで信頼している。 もしかしたら君たちにも協力を得ることになるかもしれないしな 」


 シリウス単独でも解決が難しいかもしれないということを示唆するような言い方だな。

 それほどまでに難しい問題なのだろうか。


 俺たち皆(エレナ以外)が聞く準備が整ったことを確認したシリウスは、自分も話す準備を整えるかのように咳払いをしてから話し始めた。

「実はな───」



 ◇



 話をひと通り聞き終わったが、やはりカイルママの話とほとんどが重なっていた。

 1週間ほど前から突如、街の人が暴れだしたらしい。

 その人は一頻り暴れた後に気を失うようだが、その間、今まで見たこともないような馬鹿力に、闘争本能むき出しになるとのことだ。

 その一頻りといっても20分から30分と、時間にもムラがあってその間に街は半壊するレベルだという。


「もちろん俺たち騎士団が解決するつもりだが、お前たちも現場を見かけた時は協力頼む 」


「ああ、協力するよ! な、みんな 」

「もちろんだ! 」

「うん、私たちの街だしねっ 」

「神としても見過ごせないよっ 」


「といっても見かけたら、で良いからな お前たちはお前たちのすることがあると聞いている。 そっちを優先させてくれ 」


 俺も力を貸したいとは思うが気にしたところで、それがどこで発生するかも分からないんじゃどうしようもない。

 シリウスの言うとおり、とりあえずは自分たちのことを優先させるが吉か。


「わかった、じゃあ何か困ったことがあったら……」

 ドンッ───

 ドンッ───


 なんだ、2箇所から爆発音……!?

 しかも方向は全く正反対だ。


「なんだとっ! 2箇所同時に出現なんて今までになかったことだっ! くそ、騎士団だけじゃさすがに…… 」


「シリウス、早速俺たちの出番か 」

 本当に早速だな。

 しかしこれが魔族の起こしたことなら余計に放っておくわけにはいかない。


「悪いが、片方を頼んだ。 心配ないと思うが、無理はしないようにな 」


 俺たちは二手に分かれて事件現場へ向かったのだった。

 

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