第50話 やっぱり友達っていいな
セリアと話を終えた俺は再びパーティ会場へ足を運んだ。
するとアリアンサ学院長が前で締めの挨拶のようなものをしており、もう宴が終わることを告げられている。
そして料理も片付けられ始めているぞ。
うう、俺まだ食べてないのに……。
「春陽様、どうぞこちらへいらして下さい 」
前で先程までスピーチをしていた彼女が俺のことを呼んでいるようだ。
嫌な予感がするな。
だが、もうすでにアリアンサが声をかけてきた時点で参加者全員から注目を浴びてしまっている。
仕方ない、前に行くしかないな。
「では、本日の主役、春陽様に挨拶をしてもらいましょう 」
パチパチパチッ───
おれこういうの苦手なんだけど。
そんな気持ちをアリアンサは分かっているのか、ニヤリとしながらマイクを渡してきた。
「えーっと俺はみんなと魔術対抗試験でしか関わっていません。 でもそのイベントだけでも、この学院が如何に優秀で、そして楽しい学生生活が送れるのかすごく伝わりました。 本当は生徒として入学したいくらいですが、俺は世界を救うという役目があります。 そんな役目はちゃちゃっと終わらせてくるので、その後またみんなの仲間に入れてください 」
アルカナに来てからはとても楽しかった。
学生の様子を見ていると、自分が現実世界で高校に通っていたことを思い出したりもした。
カイルやミア、ライラにセリアと友達も増えたし、みんなで学校に通えたら楽しいだろうなと思ったため、そのままそれをスピーチで話したのだ。
「よっしゃぁぁ、春陽さんがんばれぇぇ!! 」
「俺達も待ってるぞぉぉ! 」
「いつでも戻ってきてねー! 」
歓迎してもらえてるみたいでよかった。
……そういえばミアもカイルもエレナも見かけないな。
◇
ようやくパーティも終わった。
スピーチの後、引き続きファンクラブ?の相手をしたり、改めてライラやセリア、グレースといった顔なじみと話をしたりと少し忙しかったがそれも落ち着いたため、部屋に戻ろうとしているところだ。
結局あれからカイル達の姿を見ていない。
どこに行ったのやら。
なんだかんだ部屋の前まで来れたな。
今日は何故かとても疲れた。
まだ数日はアルカナに居座ると思う。
しっかり身体を休めてアークスカイへ行けたらいいな。
カイルには悪いが、先に部屋へ休ませてもらうぞ。
ガチャ───
パンッ───
パンッ───
パンッ───
「主様ぁ! 」
「春陽! 」
「春陽さん! 」
「「「お疲れ様でしたァァ 」」」
「うおっ!びっくりしたァ! 」
部屋に入ると、突然クラッカーのような音が鳴り、既にカイル、ミア、エレナの3人が部屋で待ち受けていたのだ。
そして、部屋のテーブルにはこれでもかといった量の料理が並べられている。
どれもパーティにあった食べ物のようだ。
「春陽、忙しくて飯も食えんかっただろ。 ミアがその様子を見てて、部屋に後で準備してあげようってさ 」
「私だけじゃなくてみんなで決めたでしょっ 」
「エレナもご飯たくさん運んだんだよっ 」
「……みんな、ありがとう 」
最高の友達が俺のためにここまでしてくれた。
現実世界でここまでしてくれる友達は果たしていただろうか。
いや、もちろんいなかった。
本当にこの学院に来れてよかったと感じている。
しかし、あと数日で2人とも別れなければいけないと思うと寂しさが込み上げてくるな。
やばい、色々考えると涙で前が見えなくなってきた……。
「おい、春陽! 何を泣きそうになってるのだ! 」
「いや、こうやって集まれるのも最後かなって思うと少し寂しくなっただけだよ 」
「あれ、春陽さん聞いてないんですか? 」
「えっ何を? 」
「俺とミアも旅についていくんだが? 」
「……聞いてないですけど? エレナ!知ってたか? 」
「うん、聞いてたよ! カイルにぃは要らないけどね! 」
「ちょっとエレナお嬢、冷たいこと言うなよ〜! 」
いつの間にかカイルとエレナも仲良くなってるし、俺だけ知らなかったし、これは仲間はずれですか?
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