第37話 第2試験通過者
肩を組んだ2人が待機室まで帰ってきた。
「……いやぁ負けた負けた! はっはっはっ! 」
「いやいや、2人ともすごい試合だったよ!」
「特異魔法同士目が離せませんでした!」
「お疲れ様でした!」
カイルは元気いっぱい笑って出迎えてくれた人達に対応しているが、少し無理をしているように見える。
ミアは力を使い果たした様子でぐったりって感じだな。
何にせよ2人ともお疲れ様。
「ミアさん、カイルさん 」
「「……はい? 」」
そう呼ぶのは魔術学院の医療班のようだ。
さすがにこの疲労具合では治療してもらった方がいいだろう。
さっそく2人は医務室へ移動となり、軽い治療を受けることになったようだ。
◇
「ミア、カイルお疲れ様! 2人ともかっこよかった 」
「さすが私の次席とその……次次席だ! 」
次次席という単語があるのか分からないが、俺とセリアは治療を終えた2人に労いの言葉をかけた。
「ああ、2人ともありがとう!! 」
「……お2人程ではないですが 」
2人とも少し元気になったようだな。
安心したよ。
「むっ!どうやら俺たちの治療の間に試合も進んでいるようだな! 」
カイルの言う通り治療の間に2試合終わった。
さすが上位陣といったところで、五大元素魔法を聖級まで身につけている奴がいたりと見応えのある試合だった。
「ええ、次は5試合目よ 」
セリアがそう言うと、ミアの目がグッと見開いたような気がした。
「ミア? 」
「……いえ、友達が出るなぁと 」
「ああ!ライラ・ストームのことか! 奴は強いぞ! 」
カイルが強いというと少し気になるな。
「私もあの人とは戦いたくないわ。 いい人なんだけどね 」
セリアにもそう言わせる相手ともなると余計に気になってきたが、戦いを見れば分かるか。
◇
『5戦目 ライラ・ストーム VS グレース・アロー 始めっ!』
試合が始まった。
獣人の女性といっても納得してしまうような逞しい肉体のライラに対し、どちらかというと細身でありながら色白美肌の巷でいう草食男子といわんばかりのグレース。
もちろん勝つのは体格ではないが、差はあるな。
まず動いたのはライラ。
「いくぜ!! 召喚魔法【⠀ケルベロス 】」
すると何もないところから徐々に胴体、3つの頭、3本の尾の順に形成されていく。
「ガルルルルルッ! 」
グレースも負けじと、
「くっ! さすが早いな! 氷超上級魔法【 フリーズオーラ⠀】」
彼の元から闘技場全体が氷の場と変わっていく。
もちろんケルベロスも凍らされるが、莫大な咆哮により、その氷も破壊される。
だが、その隙に放った氷上級魔法【 グレイシャルスフィア⠀】で創った氷状の巨大矢がケルベロスに貫通。
「ガウッ……」
ケルベロスは消滅した。
「よし、まずケルベロスを仕留めたぞ ……!? 待て、ライラがいない…… 」
「グレースよ、ケルベロスに気を取られすぎだ! 」
「グハッ! 」
ケルベロスに気を取られている間に、ライラは素の身体能力でグレースの背後に回り、近接攻撃を繰り出しまくった。
素といっても何らかのエーテルバフを纏っているのかと思わせるスピード、威力を兼ね備えているようだ。
さすがにあれが10発近く入ったかと思うと、グレースは気を失った。
『第5戦 勝者 ライラ・ストーム 』
ウォォォォ───
この試合は5分とかからなかったな。
とても白熱した試合だった。
そしてまた知らない魔法が2種類もあったな。
「……召喚魔法も氷魔法も特異魔法とやらなのか? 」
「いえ、氷魔法は水と土の混合魔法よ! 2つの魔法適性がある者のみ使える魔法ってことね 」
もう当たり前のようにセリアは隣で解説してくれる。
「にしてもグレースもそうだが、ライラって人ものすごく強かったな! 」
「……はい、ライラちゃんは魔力量関係なくあの打撃力なので、戦ったら私はきっと勝てません 」
やはりそれほどの実力なんだな。
◇
6戦目以降はランダムに行われ、試合によっては一瞬で終わるもの、10分きっちり使うものとそれぞれの戦い方をしていた。
過ぎると早いもので25試合全てが終わり、残りは試験突破者の発表のみとなったため、みんなソワソワしているようだ。
『えー第2試験突破の10名をモニターに映します 』
タカハシ ハル
セリア・ウィンドウィスパー
ミア・ローズ
カイル・ブレイズ
ライラ・ストーム
サイラス・ホープ
グレース・アロー
ローラン・ウォード
ガレン・ライダー
ケイン・ファイアウィスパー
『以上の生徒は闘技場まで来てください。 残りは直ちに帰宅してください 』
負けたやつはすぐに帰る……か。
第1試験のときもそうだったが、試験とはやはり残酷なものだな。
周りを見ると悔しさのあまり泣き崩れている人や、嗚咽をもらしているような人だっている。
アーカシスからの誘いだったにせよ、魔術学院の生徒じゃない俺が出て本当に良いものだったのだろうか。
そんな悔しい思いをしている生徒の中、手放しに皆喜べないのだろう。
誰もが言葉を発さないまま俺たちは闘技場へ向かった
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