第7話 エメラルド・ヴェールの英雄
倒した……。
ほぼ魔力という情報商材が俺にあの手この手で語りかけてくれたおかげだ。
脳にこの魔法がいいよと言わんばかりに流れ込んでくるのだ。
今回も思った通りにしたら聖属性魔法というものが思い浮かんだ。
「春陽くん、すごい! 聖属性魔法を扱える人がこの世にいるなんて……神でさえ、適性がないと使えない魔法だよ。 それに聖属性を主に使っていた女神族はもうこの世にいないはず…… 」
いつの間にか後ろには多くの人が戦いを見ていたようだ。
「すごい」「魔族を倒した人間が現れるなんて……」「魔法で雨を降らせるやつも初めてみたぞ……」
と、現実世界では受けたことのない歓声と賞賛の数々。
そんなにすごいことをしたのか、自覚はないが、何にせよ目の前の人の命を救えた自分をちょっとだけ誇らしく思える。
そう感傷に浸っていると、
「あなた様が、魔族を倒し、この街を救ってくれた勇者でございますか?」
俺がここにきて、目に入ってきた兵士とは明らかに違う位の高そうな兵士……いや、騎士様が声をかけてきた。
よくゲームでありそうなセリフ、さらには見た目も騎士さながら高貴な鎧、洋風で整った顔立ちに金髪ときた。
「勇者ではないですけど、はい、魔族はぶっ倒しましたね」
「やはりあなた様が…… 本来は私達翠影の守護騎士団が命を懸けてするべき仕事。本当にありがとうございました! 私はセリオン・グリンハートと申します。この翠影の守護騎士団団長を務めさせて頂いております。我が国の国王がぜひお会いしたいとのことですが、如何されますでしょうか?」
国王ときて、騎士団までときたか。
全く俺が知っている異世界そのものだな。
しかしこの国にきて間もないため、世界のことも知らない。
それ以前に作法もクソも知らないのに会って大丈夫だろうか。
失礼をして打首にでもあったりしたらどうしよう。
「春陽!ぜひ会いに行こう!!」
セレスティアは前のめりな姿勢をみせる。
「……そちらの妖精さんはどちら様でしょうか?」
セリオンは失礼ないようにと気を使っているのか、できる限り低姿勢な言い方でそう質問してきた。
この街の神じゃないのか。
全然知られてないとは、神は人に会う機会がないんだろうか。
「知らないのも無理ないね。ボクの名前はセレスティアだよ!」
すると、セリオン含む後ろで見ていた兵士達全員お互いの顔を見合わせ、驚きという感情を隠しきれていない様子だ。
そして皆落ち着きを取り戻したと思うと、一斉にその場で跪き、頭を下げたまま、
「これは大変失礼致しました。この目で神セレスティアを拝める日がくること光栄と存じます」
それを見たセレスティアはエッヘンと言わんばかりの態度。
やっぱり神様も慕われたら嬉しいものなんだな。
そして周りの反応、やはり彼女は紛うことなき神様なのだろう。
「では気を取り直して勇者様、セレスティア様、玉座の間までご案内します」
城の中はイメージ通り、煌びやかである。
玉座の間まで長い廊下が続いており、まっすぐ歩いているとちょうどセリオンが横並びになったので、
「あの……この国の人は神様と会ったことないの?」と耳打ちした。
「いえ、そんな神にお会いするなど、この魔力抗争が起きて200年1度も聞いたことがありません! 」
「えっとそれはなんで? 」
「勇者様は魔力抗争というものをご存知で? 」
「あーセレスティアからちょっとだけ」
「そうですか。神を殺すとその魔力は殺された側に所有権がうつります。 魔力抗争自体、神を殺して、その領土内全ての魔力を手に入れたいと考えた魔族が起こしたもの。そのため抗争以降、神は自分の領域を創りそこで過ごしており、人との接触を避けているのです。あくまで言い伝えではありますが」
そうか、それが最初セレスティアに呼ばれた空間ってわけか。
これからもあんなやつに狙われると思うと辛いだろう。
しかしなぜこのタイミングで魔族はこの街を襲ったのだろうか。
セリオンと話をしている間にこの先玉座の間であろう扉の前まで到着していた。
「勇者様、セレスティア様、こちらが玉座の間にございます」
目の前の大きな扉が開いた。
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