第5話 魔族ってやつは許せないな
ここにきて移動してばかり。
景色が変わりに変わって頭がついてこない。
目の前には、まるでアニメかのようなご立派なお城があり、俺はその前にいる。
お城の前には階段があり、それを降りると城下町が続いている。
だがそれは幸せな景色ではなかった。
それもそのはず、城下町は火の海。
街の至る所で人々は逃げることしかできず、その絶望的な悲鳴、叫び声が聞こえてくる。
お城に仕えているのであろう兵士のような方々は城下町で市民の救難活動に勤しんでおり、
1人でも多く城の中へ避難させようとしている姿がみえる。
「なんだよ……これ 」
「ここはボクが神として見守ってきた街だよ 」
セレスティアの声が揺れ、その中に漂う辛さと苦しさが、こちらの胸に迫ってきた。
「どうしてこんなことに……」
「きっとあいつだ。嫌な気配がしたからここに戻ってきたんだ……」
セレスティアが指差す方角には、城下町の空……いや人が宙に浮いている。
あれは女性?
しかも現実世界でいう20代ヨーロッパ系色白美女という感じだ。
シルクのような黒いドレスを着ており、その上に黒のローブを羽織っている。
ただ角としっぽも生えているので、見た目だけで判断するとしたら『魔族』というやつか。
何にせよ、高笑いしながら城下町を火の海にしているやつが良い奴なわけがない。
「もしかしてあれが……」
「そう、魔族だよ」
俺は初めて見る『魔族』に対して恐怖ではなく、怒りと悲しみが入り交じったような感情を抱いた。
『魔族』全てがこんなことをする奴なのかは分からない。
しかし目の前のこいつだけは放っておいてはいけないと思った。
「君たちも早く城の中へ!!」
声をかけてくれた兵士は俺のことを引っ張って城へ誘導しようとしてくれているが、このままでいいのだろうかと考える。
もちろんあの『魔族』がダンジョンで倒したゴブリンと比べ物にならない魔力を持っているのは肌で感じている。
シルヴァンディアに来た時から思ってはいたが、ここにはとんでもない量の魔力が溢れているようだ。
ダンジョンに広がっていた魔力がほんの一部だと感じざるを得ないほど、この世界には魔力が溢れている。
このとんでもない量の魔力もあの時と同じように扱えるんだと俺の本能がそう言っている気がする。
だからなのか、あの『魔族』を見ても全く恐怖を感じないのだ。
「もうここは滅びるしかないんだ……うぅっ…… 」
セレスティアの涙声からは絶望が伝わってくる。
もう逃げることも諦めたかのように、その場で立ち尽くしていた。
そんなセレスティアの姿を見て、俺は決意した。
「よし、とりあえずあれをなんとかしてくるわ」
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