第3話 世界救う? 俺が!?
強い光が差し込む。
ダンジョンから脱出して遂に外へ出ることができたのだ。
だだっ広い大草原に、雲ひとつない青空。
それだけだと明らかにここは地球だと感じることができる。
……空に島が浮いていなければ。
さらに言えば、ダンジョン内に満ちていた魔力も順調に視えている。
しかも更に密度が圧倒的に濃い。
「出たのは良いんだけどね、どうすりゃいいのよ……。」
ゲームであればこの辺りでチュートリアルがあったりイベントが発生したりするものだ。
しかし残念ながらここは現実。そういうわけには行かない。
「せめて衣食住は確保しなければ……。」
とりあえず近くを歩いてみた。
360°見渡してもThe・大草原。
そして少し先の空に島が浮いているだけ。
「やっと逢えたね。」
なんか聞こえる。
周りを見渡しても誰もいない。
余計怖いじゃないか。
「あ、ごめん、姿見えないよね? ちょっと待って。」
声のする方をみると、そこには大きな水たまりがあった。
雨だって降っていないし、足元だってぬかるんでるわけでもない。
明らかに不自然なものである。
「ん? ここから声するよな…… 」
すると、動くはずもない水たまりが人間サイズへと大きくなり、俺の身体全身を包み込もうとしている。
「ちょっと待って! タンマ!タンマ!」
逃げる間もなく俺はそれに飲み込まれたのだった。
◇
ん……ここは、どこだろう。
俺はどれくらい眠っていたのか。
目をしょぼしょぼと開くと、またまた違う景色。
しかし、なんというか落ち着く場所だ。
その理由は簡単、この場所はまるでひとり暮らしの若者が住んでいるようなワンルームほどの広さで、木造っぽいような作りになっているからだ。
こーゆー部屋はよく日本で見たことがある。
ちょっとじめっとしており、埃っぽいのは気になるが。
「やあ。ボクの姿を見て驚いた?? どう見ても神様でしょ? 」
「いや、誰がどう見ても妖精だと思うけど。 」
目の前の彼女は妖精っぽいサイズ、妖精っぽい羽と妖精というには十分すぎる姿だった。
俺の言葉が不服だったのか、この小さな神様は両頬を膨らませてムスッとしている。
「そんなこと言っていいのー? ボクの助言がなかったらどうなってたことか 」
…………!?
やっぱりこの声を聞いてからずっと引っかかっていたが、どうやら幻聴だと思っていたあの声の主が目の前のこの妖精だったらしい。
たしかに俺はあの声がなければ今ここにいない。
紛れもない命の恩人に俺は感謝するべきであり、何か形にするべきだと思う。
「この度は命を助けて頂いてありがとうございました 」
俺は神に対する感謝の示し方が分からないが、とりあえず片膝を地面につけ、頭を下げてみた。
というと、満足そうに顔をほころばせて
「ふふんっ、どうってことないよっ! そうだ、自己紹介をしなくちゃね。 ボクの名前はセレスティア。ティアって呼んでね! 」
どうやら感謝の示し方が合っていたとは思わないが、間違ってはいなかったようだ。
しかしこの神様、俺をここに呼んだということは何か用があるのか。
見る限り優しそうな神様だし、この世界のこととかちょっと質問してみるかな。
「あの……ティア様? 俺はこの世界のことが来たばかりで全くわかりません。 色々教えては頂けませんか? 」
「様も敬語もいらないよ、春陽。 なんでも聞いて! ボク頼りになるんだからっ」
目の前の妖精……いや、神様はそう言ってドンッと自信満々に自分の胸を大きく叩いた。
思ったより強く叩いてしまったのかゴホッゴホッと咳き込み、痛そうにしている。
大丈夫か、この神様。
◇
俺はセレスティアにいくつか質問をした。
「ティア、まずここはどこなんだ? 」
「えっとね、神様の領域だよっ! 」
つまるところ神様だけが入れる場所とのことらしい。
神が許可したら人間も入れるようだが。
「……領域? また現実離れしててパニックだなぁ 」
「そりゃそうだよ、春陽はまだシルヴァンディアにきてすぐなんだから! 」
「シルヴェ……え? なんだって? 」
聞き慣れない単語が出てきた。
「春陽、君がいるこの世界のことだよっ 」
やはり地球ではないか。
どうやらここは剣と魔法のファンタジー的な世界らしいな。
まるでライトノベルの設定みたいだ。
「魔法が使えたり、神様がいる時点で地球ではないか 」
そもそもダンジョンに迷い込んだ時点で覚悟はしていたが。
「春陽の世界には魔法や神様は存在しないんだね! ちなみにだけど、エルフや魔族って種族もいるんだよ? 」
おお、聞いたことあるな。
まぁせいぜい俺のはアニメの知識でだけど。
「春陽、他に質問はある? 」
「……えっとそうだなぁ。 あ! あのダンジョンはなんだ? 」
「ああ、あれはボクも初めて見たんだけど、どうやら別の世界と繋がってたらしいね! でも春陽はこの世界に来るべくして来たんだよ? 」
え、来るべくして?
俺は来たくなかったが……。
「ふふんっ! ボクの『予見眼』では君が世界を救ってたんだよっ!! 」
何を自信満々に言ってるんだ、この神様は。
「救うって何から? 」
「魔族だよ! 」
やはり魔族って悪いやつなのか。
強そうだから怖いんですけど。
どうやら魔族とは200年前、後に魔力抗争と呼ばれる戦いを繰り広げていたらしい。
そこで元々7人いた神様が2人に殺されたようで、残り5人の神様も狙われているとか狙われていないだとか。
なんとも不確かな情報だ。
そしてセレスティアは俺にお願いがあると言っていた。
「で、ボクのお願い聞いてくれるの……? 」
そんな捨てられた子猫みたいに上目遣いの視線を送られると、なんでも聞いてやりたくなるのが男の性だ。
「そうだな。ティアには助けてもらったし、俺ができる範囲なら協力するよ。」
「やったぁ!! じゃあね〜、ボクと一緒に世界を救ってよ! 」
やっぱりそうなるのか。
もう話の流れ的にそうだもんな。
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