11. 暗闇の中でさまよう魂

私は剣を構えながら言った。


「うっ、嘘でしょう?あんな可愛いキツネがヨツンなの?」


ヘルが言った。


「ローレン、合図したら、以前使った魔法でキツネの手前の地面を撃つんだ」


ローレンが手を伸ばして回しながら言った。


「え?あのキツネを狙うんじゃなくて?

うん、わかったよ!私はいつでも準備できているよ」


私は足元を見て言った。


「ん?地面が揺れてる」


ヘルも弓を引いて狙いながら言った。


「今だ!」


「突き刺す。鋭い槍! ハスピアート」


光の槍が地面に当たる前に、キツネは後ろへ飛び退いた。

魔法の光が地面に穴を開けたその瞬間、ヘルが撃った魔法の矢が穴に吸い込まれるように入った。

そして、すぐに低い悲鳴が響き、地面が揺れた。


グレンが言った。


「なに?まだ地面の下からか?」


バグナが言った。


「はぁ、これは、これは、私たちが峡谷を離れるのが嫌なのですかね。

しかし、私たちは前に進むべし。じゃあ、別れの歌を聞かせましょう」


穴から黒い形が飛び出した瞬間、キツネは飛び上がってその黒い形を攻撃した。

黒い形は力なく地面に落ち、すぐに穴の方に消えていった。


「あ、やっぱり、味方よね?あのキツネ」


ヘルが言った。


「敵ではないが、味方かどうかは分からない。フレア、君の方に行く。下だ」


「うわっ!」


黒い形体の攻撃を剣で受け止めながら言った。


「え?黒い顔?これ、以前出たヨツンだよね?」


横からヘルの矢が黒い形体に命中し、黒い形体は地面に落ちて転がった。


<グワァァァ>


穴から大きな音がして地面が揺れた。

大きなヨツンが地面を食い破って上がってきた。

目の前に現れたヨツンは赤い甲羅に包まれていた。まるで巨大な貝の口に整然と並んだ歯があるような姿だった。


「うわ!デカイ!これが本体なの?なんか固そうだよ。どう攻撃すればいいの?」


キツネは姿勢を低くして警戒する態勢をとり、うなり声を上げ始めた。


その瞬間、光っている壁のようなものが私の前に現れて、ヨツンの攻撃を防いだ。


「うわっ!シャーリン、助かったよ!あの黒いのはなんだ。本体はそこまで動かないのか」


私は剣でヨツンを攻撃しながら言った。


「えぃ、かたっ!背中の甲羅は厚いな!」


ヘルは甲羅の隙間を狙って弓を放ちながら言った。


「隙間を狙えばいい」


甲羅の間から出てくる黒い物体を剣で打ち払いながら言った。


「そんな簡単に言うなよ。ヘルみたいにはできないよ」


「フレア、離れて!」


<ぐっぅぅ>


私の頭の上を光のかたまりが飛んできた。


<ブオオオ>


大きな音を出しながらヨツンは背中から砂を撒き散らした。

しかし、その砂の壁を突き抜けて、ローレンの魔法は甲羅にキズをつけた。


<グワァァァ>


「ふん!どうだ!今回はちゃんと当たったよ!

ふぅー、やっぱり、呪文は無くしたいな。この感覚を覚えてやれば、できる。

これで終わらせるよ! 」


キツネの攻撃で気を取られたヨツンに再びローレンの魔法が当たった。

そして、固い甲羅にあながあいた。


「これなら、私もいけるよ!

果てしない火炎、ひげの熱い懐から広がり、 私の敵の前で、彼らを炎の舞に引き入れ」


私はヨツンの背中に飛び乗って、剣を甲羅のあなに刺した。


<グワァァァ>


ヨツンは大きな口を開けて暴れたが、すぐに体から火を噴き出して倒れた。

甲羅から黒い埃が出て、黒い顔も黒い埃になって消えた。


私はヨツンの背中から飛び降り、残った甲羅を持ち上げながら言った。


「重っ、この甲羅を持って帰る?なんか使えそうじゃない?」


ローレンが甲羅を触ってみながら言った。


「確かに、工房の《ロムー》が喜びそうだね」


キツネが私とローレンのそばを通り過ぎた。


私はびっくりして言った。


「あ、目が合った。あぁー、ローレン、キツネと目が合ったよ」


ローレンは荷車に乗りながら言った。


「ふーん、不思議なキツネだね。なんか話しかけてるようなんだな」


グレンが言った。


「ふん!早く行こう。もうヨツンと会うのはごめんだ」


荷車はキツネの後ろを追っていった。疲れてみた広い空はピンク色になっていった。


「おぉー、木がよく見えるよ。湖もある」


ローレンは本に書くのをやめて、遠くの木を見ながら言った。


「あ、本当だ。大きいね」


荷車はキツネを追い越して行った。


「あ、まだ目が合ってるよ。へぇー、あのキツネも湖の方に行ってるのか…

やっぱり、ただのキツネかな」


ローレンが言った。


「違う気がするな、理由はわからないけど」


荷車が湖に着いて、私たちは休むことにした。

キツネは私たちの反対側で水を眺めていた。


「あ、何するんだろう。おぉ、魚だ。こんな湖にも魚があるんだね。あっ、食べてる」


グレンは壺を荷車から下ろしながら言った。


「そうだな。昔はここで魚を釣って食べることもあった。

水もあるし、本当に助かっている場所だ。ここまで来れば、拠点には着くには問題ないね」


ローレンが立ち上がり、湖の方へ歩きながら言った。


「じゃあ、私たちも魚を釣って食べよう。あの肉は嫌だ」


「ふん!自分勝手にしろ。どうせ食料は保存したほうがいいからな」


「あ、水を飲んでる。可愛いな。あ、こちらを見てる。へへ」


シャーリンがグレンを手伝って壺を運びながら話した。


「しかし、ここは不思議などころですね。こんなに大きな木と湖があるなんて」


バグナが言った。


「初代魔法使いビドルフが発見したと言われていますね。

以前、私が歌った歌にも出てくるものですが、こうして見るのは私も初めてです。あ、素敵ですね」


私は周りを見ながら言った。


「ヨツンは来ないの?」


グレンは料理を準備しながら言った。


「この聖なる木の周りではヨツンが出たことはないね」


「あ、光ってるよ。ねえ、見て、光ってるよ。すごーい」


ローレンは自分が捕まった魚をシャーリンに渡しながら言った。


「ふむ、あのキツネはなんだろう」


シャーリンが言った。


「あのキツネはグレンさんがおっしゃったように、見るだけでも本当にほっとしますね」


「ふん!そうだろう。しかし、ただのキツネとはな」


私はキツネをぼーっと見つめながら言った。


「ただのキツネがあんなに光る?本当に神獣かな」


「ハハハ、そうかもしれませんね。あの光、姿はそう、《スキンラウフ》と呼びましょう。この聖なる木の下で、まるで自分の皇居に来て休むように見えますね」


私はたっぷり食べた後、たき火のそばで、バグナの話を聞きながら湖の反対側に赤く光るキツネを眺めつつ、眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よっしゃー」


私は荷車から降りて、後ろで来てるキツネを見た。


「へ、私を見てるよ」


グレンが言った。


「まさか、ここまで付いてくるんなんて、あのキツネは何が目的だ」


ローレンは後ろのを指差しながら言った。


「食べ物じゃない?この肉、私は飽きたけどね」



グレンは手を上げて,まるでうんざりしているかのように言った。


「ふん!お前は本当に…」


私は止まって見るとキツネも止まって私を見ていた。


「へ、ローレン!この子、私が歩くと歩くし、止まると止まるよ」


ローレンはこっちに手を振りながら言った。


「フレア、あなたのことが気に入ってるみたいね。ゆっくり歩こうって言ってるみたいよ」


「ローレン、どうやってわかるの?」


「なんだかそうやって話してるみたい」


グレンが言った。


「そろそろだ。あそこに見えるのが拠点だ。そして、その先に見えるのが【ナグルファル】だ」


拠点は赤い石で作られた高い壁で囲まれていた。同じく、石で作られた門は壊れていた。

私たちは荷車から降りて拠点に入ることにした。


「うわ、高い壁だね。森は?え、あれが森なの。なんかすごく暗いし、全部がりがりに乾いた木だけみたい」


「ふーん、木に見えないな。あの黒いのは昨日食べた魚の骨みたいね」


「スキブー、こっち来てよ」


「え?スキブー?」


「あ、名前つけたよ、スキブー。可愛い名前でしょう」


拠点はいろんな建物があったが、壊れてる所が多かった。


バグナが言った。


「あ、この立派な石は、もしかして、ビドルフが【ナグルファル】を発見した時に休んだ石ですかね?ビドルフの旅の歌に出ますよ」


グレンは言った。


「ふん!それは知らん。ここがこの拠点の真ん中だ。

10年前、みんなそのまま捨てて逃げたと聞いた。しかし、変わってないな、この風景」


ローレンはかっかりした声で言った。


「あ、拠点で一番期待していたのは宿屋だったけどな。天井にあんなに穴が空いていたらな。結局、今日も外だね」


「あ、そうか。ずっと、外で寝てるよね。確かに、暖かい部屋で寝たいよね。シャーリンもどう?」


シャーリンは微笑みながら言った。


「私は大丈夫ですよ」


「何があってこう壊れてるんだ。時間が経ったからとはいえ、不自然だな」


ローレンは何かを探してるように周囲を見渡して言った。


「やっぱり、ヨツンじゃない?」


私はぞっとしながら周囲を見渡して言った。


「あぁ、門が開いてるよね?今もヨツンがいるのかな」


ヘルが言った。


「ここに我ら以外の気配はなさそうだ」


「あ、あれ、ゴーレムよね?倒れてる?」


ローレンはゴーレムを見つめながら言った。


「ん?破損はあるけど、これくらいなら動くはずだと思うけどな。ふむ、どうして動かないんだろう?あ、完全に壊れてるのもあるね」


「このゴーレムたちは誰が作ったの?」


グレンはあたりを見回して話した。


「いろんな魔法使いが作ったと聞いたね。 中には初代魔法使いのボルバフが作ったものもあると聞いた」


「あぅ、びっくりした。このゴーレムは人そっくりだね」


グレンがゴーレムの方に来て言った。


「ああ、このゴーレムは知っている。 これがボルバフのゴーレムだ。 彼は古代英雄の姿をしたゴーレムを作ったそうだ。 いつも門扉の前に立っていたやつだった。 どうしてここまで入ってきて倒れているんだ?」


私たちは大きな石の方に戻ってどうするか話し合った。


「ふーん、やっぱり使えるものはなかったな」


「ふん!10年間放置されてる。当たり前だ」


「あ、ここも夜は寒いね。スキブー、こっち来て。寒くないの?」


バグナがスキブーを見ながら言った。


「信頼されてますね」


「ん?私は何もしてないよ」


「ハハ、変わらない姿でずよ。それが信頼に繋がります」


スキブーが急に森の方を見ながら、うなり声を上げ始めた。そして鳥の鳴き声のような音が聞こえてきた。


「うっ、なんだ?」


ヘルが立ち上がり、言った。


「この音だ」


ローレンが言った。


「あっ、ヘルが聞いた音ってこれなの?森からだ」


グレンは暴れてる動物の方にいきながら言った。


「ふん!薄気味悪い音だな。昔はこんな音聞いたことがないよ。おい、大丈夫だ」


「うっ、この音はなんだ。スキブー。あんたも怖いの?えっ?あれはなんだ?!」


グレンが荷車から降りながら言った。


「ヨツン?ここにヨツンが来たのは見たこともない!どういうことだ!」


ローレンが叫んだ。


「グレン!下がって!シャーリン」


シャーリンの魔法で周りが明るくなってきた。


「トカゲ?ドラゴンじゃないよね?」


こちらに向かって歩いて来る黒いトカゲの姿と、その後ろにはいろんなヨツンが見えた。ヘルはいつの間にか、大きな石の上に上がり、矢を放ってヨツンを攻撃し始めた。


グレンは驚いて言った。


「ドラゴンじゃない。あれはトニーが倒したことがあるヨツンだ」


<ゴゴゴゴッゴ>


「ん?あ、ゴーレムが動くよ!」


ゴーレムたちはヨツンに向かってゆっくり歩き始め、それを見たヨツンは叫びながらゴーレムを攻撃し始めた。


ローレンは手を上げて話した。


「これは驚いた。こんなの初めて見るよ。とにかく、まずはヨツンを倒そう」


ヘルの青く光る矢とローレンの魔法で多くのヨツンが倒れた。そして、大きな人型のゴーレムの拳で先頭にいたヨツンが倒された。


「はあ、はぁ、もうこれで終わりかな?」


ゴーレムはその場でまだ何もなかったように倒れた。ローレンは不思議に思い、色々試してみたけどゴーレムは動かなかった。


「ふーん、わからないな。シードホートに戻ったら聞いてみよう」


バグナが言った。


「ハハハ、もしかしたらこんな戦いが毎晩行われているんですかね?あの音はまるで呪いの叫びみたいですね。変わらぬ戦いの…」


私は森を眺めながら、怯えて言った。


「あぁ、あの森にはまだこんなヨツンがいるのか?」


ローレンはヨツンが倒れた場所を歩きながら言った。


「フレアはここでグレンと一緒にいれば?」


「え?いやいや、行くよ!」


「ふん!自分の体は自分で守れるよ」


ローレンは森を眺めながら言った。


「まあ、あのゴーレムたちがいるからここは安全だろうね」


バグナは興奮して話が止まらなかった。その話を聞きながら眠れない夜を過ごした。


ーーーーーーーーーーーーーー


ローレンが森の前で森を眺めながら言った。


「ふぁー、これは闇の森を思い出すな」


私はスキブーを見ながら言った。


「う、ちょっと怖いな」


ローレンが言った。


「バグナ、演奏やめて、ヨツンが来ちゃうよ」


「あ、これは失礼しました。しかし、この演奏で前に進めるでしょう。ここで待っていても何も起きないですし」


ローレンは魔法の蝶を作り出して言った。


「ヘル、あの蝶を追って。みんなはヘルの後を追って」


私たちは静かにヘルに付いて行った。濃い霧が低く地面を覆っていて足元がよく見えなかった。

木はまっすぐ立っておらず、地面に向かって曲がっていた。木の枝はでこぼこしていて棘のようで、どこが幹でどこが枝か分からなかった。木々の間からは沼が見えた。


小さな小川を渡りながら言った。


「あぁ、この水は飲めないよね」


「ふふ、この黒い色を見ただけでも無理じゃないかな」


「動物もいないね?」


「まあ、蛇とトカゲはいるけどね」


道が木の下に入り込むようになっており、骨のような木々が絡み合っていた。


(まるで墓に葬られるようだな。

これはどこまで続くんだろう。霧で前がよく見えないな。

みんな、よくもこんな状況で前に進めるな。

この不安はなんだろう。

この先には何があるんだろう。

あのヨツンとは戦いたくないな。

うぅ、剣が重い。

嫌だな。ここから逃げたいよ。

はぁー、剣を捨てて昔の生活に戻りたいな。

冒険って、こんなに疲れるものなのか。

知らなかったよ。あ、お母さんが作ってくれたご飯が食べたいな。

この剣を持つのも疲れた。

お父さんを手伝って槌を持っていれば良かったのに。

なんで、その時、家を出たんだろう。

うん?

誰かが私を呼んでる?

あ、この森から出たいな。

ん?あれは?黒い影?

来るな!

あ、あ、黒い影が私を攻撃しようとしてる。

来ないで!)


私は思わず剣を振り回した。


「フレア!」

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