第18話 気弱なメイドさん
「えーっと始めますね。僕らの企画はお菓子パーティーです」
「はい。そういうわけで次の企画はハロウィンらしくお菓子パーティーです。お二人さん、用意してくれたものを見せてください」
企画者と司会者の三人がニヤニヤしている。良い予感はしない。
「じゃじゃーん! trick or treat ということでいたずらとご褒美のロシアンルーレットをやろうと思います」
二人が袋から取り出したのはわさび・からし・ニンニクのチューブ3本。え? ニンニク!?
「進行役の私から一つ。先ほどのゲームで同立優勝した
「いんすか、
「うん。やろっか。じゃあ、用意してもらった、紙皿にいたずらを含んだ五つのお菓子を1つずつ乗せるので選んで……。いや、やっぱり五分の一は高すぎるから私も選ぶ側に回ります」
「えー! 僕なんか悪いじゃないですか」
そりゃやりにくいだろう。雫…食いたいのか。
「大丈夫だよ」
「わ、わかりました。あ、みなさん、持ってきているお菓子も出してください」
各々が買ってきたお菓子を出す。
「ガム、クッキー、チョコ、パイ、…。使えそうなのは、由紋さんのお手製クッキーと、我が親友が持ってきたアップルパイだけですね。まー、企画チームが持ってきたプレッツェルで何周かすればいいですかね」
まずクッキーとプレッツェルで一周ずつする話になった。
「ねー、香くん」
「うん?」
目を合わせて驚いた。
「間違えたわ。ねー、メイドさん」
あれ?
「魔法をかけてくれないかしら? 『萌え萌えキュン』って」
ふーー。大丈夫。断れる。気弱な僕は卒業した。もう弱くない。あれ、断る方が弱いのか。
「い、いくよ」
******雫側の視点です******
え、やるの? と、止めた方がいいのかな? メイドに仕立てたのは私だし、もし彼が断れずにやろうとしているなら、わたしのせいになる。
「……」
「おいしくな~れ。萌え、萌え、キュン!」
数秒の沈黙の後、彼の声が聞こえた。
成し遂げた……。香くんが。少し照れていたのが私には刺さってしまう。今彼の顔にあるやりきった感から、覚悟も感じる。よくがんばったね。私は飛び出て彼を抱きしめた。
「香くん。がんばったね」
なでなでしてあげる。
チッ
気を取り戻しすぐに彼から離れた。さて、六分の一のロシアンルーレット。こ、怖いな。自分で混ざったんだけどね。
「せーの」
里美の合図で全員クッキーをかじる。
「かっらーい」
どうやら里美が当たったらしい。からしだったんだ。
「あと半分、食べなきゃだめー?」
「私せっかく作ったんだけどなー」
面白がってゆんちゃんが言う。
「もー、俺が食ってやるよ」
野田くんは大きな口を開け、それを空中に放り投げた。パクリ。
「かっれーな!」
わざとらしく言う野田くんの顔は直視できなかった。
「だ、大丈夫? これ水! でもありがとう」
ガブガブガブ。
「う、いいんだよ」
なんだか私は彼女たちに見せつけられたような気がして少し腹が立った。
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