海神村正史

 妹のよりがいなくなったのは、クリスマスの夜だった。

 俺が一瞬目を離したすきに声もなくいなくなって、それきりだ。父さんには殴られたし、お袋はあれ以来ずっと泣いてばかりいる。

 妹がいなくなったのは俺のせいだから俺がネットで聞いてみる、とSNSにも捜索情報を書き込んでみたが、からきし駄目だった。Twitter上での人捜しというのは思った以上に難しい。俺はあとから知ったのだが、ストーカーなどが人の善意を利用して標的を捜すのに使うこともあるらしく、警察署の番号を載せていてもなかなか拡散してもらえないのだという。

 それでも少しは拡散されたが、RT数が増えるにつれてバッシングや無関係の心ないリプライが多数届くようになった。その都度対応していたが、お袋や父さんにはとても見せられない内容も多く、俺もだんだん疲れてしまった。労力に対して大した情報は得られないとわかってからは、自力での捜索や警察への対応に家族一同かかりきりになった。そのうちTwitterそのものを触るのも億劫になってしまった。数少ない友人との交流は別のSNSがメインになった。今はもう通知もオフにして、ほとんど開いていない。どうせ大した情報は来ないのだ。情報提供は、警察署へ来るものだけで十分だった。

 藁にもすがる思いでいる父さんとお袋に申し訳ないという思いはあったが、Twitterでの人捜しをやめてから、俺は少しだけ夜も眠れるようになった。それでいいと自らを納得させた。

 依代がいなくなってもう1年が経つ。


 通知をオフにしているはずのTwitterのポップアップ通知が来たのは、そんなある日のことだった。

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