ライク・ダンジョン

イヌハッカ

第1話

 さっき起こったことをまとめる。


 まず俺は路上で空腹にあえぐ孤児だった。孤児院の生活なんて、ろくなものじゃないと思っていたから、貧民街でひっそりと暮らしていた。


 腹が減って、パン屋から出てきた客の黒パンをひったくったら捕まり、店主と客に殴り殺されたのが俺の人生の終わりだ。


 死んだ俺はいつのまにか、神様を名乗る男の前にいて、これからどうなるかを伝えられた。

 神様が言うには、これから俺は暗い地下迷宮に閉じ込められ、そこから抜け出すまで閉じ込められたままらしい。


 なんでそんなことするのか、と聞いたら特に理由はない、と言われた。聖職者が語る神様が、本当はこんな野郎でざまぁみろと思う。


 迷宮を抜ければ楽園にたどり着く、と言い残して神様は消えた。そうして俺は、いつの間にか自分が廃墟の一部屋に一人で置き去りにされたことに気がついた。


 知らぬ間に木綿の服を着ているし、鋭そうなナイフもすぐそばに置いてあった。鞘を取り付けるベルトを丁寧にまとめてあり、明らかに俺のために用意されていることがわかる。


 そんな振り返りを5回も繰り返して、俺は事態のヤバさに気づき始めた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る