暗狭熱溶


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暗い中で、ジィィーーー……と何かが振動するような低くて長い音が聞こえる。


無垢な恐怖心にジリジリと焦げ目をつけるような、ひどく狭い場所に閉じ込められたような、足の裏が溶けて爛れてぶくぶくと形が消えて動けないような、沸騰した脳が耳からこぼれて肩をつたって足元の赤い鉄棒に焼かれるような、そんな気分だ。


よく知ってる、身近な音であることは確かなのに、いくら考えてみてもなんの音か思い出せない。情景が脳内で像を結ばれるより先にぐるりとかき混ぜられて、額に垂れてくる。


「あつい」と声を出すために口を開けたら、そのまま下顎が糸を引きながらゆっくりと落ちていった。


穴だけになった喉からひゅーひゅーと息が漏れる。喉の穴が溶けながら大きく開いていき、高い音から低い音へ。


ひゅーひゅー

ほーほー


ふくろうの鳴き声みたいだな、と思っていたら、目玉の内側がぼこりと泡立った。



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