第3話


 突然意識を失った私を心配してかしばらく休むようにとお父様とお母様に言われた。せっかくなのでお言葉に甘えさせてもらうことにしたのだが、そのおかげで今の状況と記憶の擦り合わせをすることができた。


 どうやら私は『きら星』の世界に転生してしまったようだ。しかも悪役令嬢であるルナリアの母親として。まさか登場人物の親世代に転生したなんて思いもしなかった。


 ルナリアの母であるオルレシア・ミラスティ、今はまだオルレシア・バレンティノであるが小説の中には名前はでてこなかった。しかし婚約者となるレナルド・ミラスティの名前はルナリアの父親として何度か出てきたのを覚えている。そこから導き出すと私はレナルドから愛されず病んで自害してしまう母親だと思われた。名前も出てこないモブではあるがルナリアの人格形成に多大なる影響を与えた人物でもある。


 しかし私が思ったことは



「せっかく生まれ変わったのに若くして死ぬの?え、嫌なんだけど」



 これに尽きる。私は長生きしたいのだ。


 今の私には前世の記憶も今世の記憶もある。このまま小説通りになるのも嫌だし、愛のない結婚なんてしたくない。

 もちろん貴族だからそんなわがままを言えないのは分かっているができることなら愛のある結婚をしたい。なんせ私は前世では未婚の独身だったからそれなりに結婚には夢を持っているのだ。

 それに愛のある結婚ができれば我が子が悪役令嬢にならないかもしれない。



「小説のストーリーが変わっちゃう可能性はあるけど…まぁそんな先までは心配していられないわ!大切なのは生きている今なんだから!」



 そうして私はこの日から幸せな結婚を目指して動き始めるのだった。

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