第75話 ファイナルシーズン

 レッドの世界の戦隊シリーズ「標準戦隊阿部零次」も無事大団円? を迎え私達の悪役もお役目御免となった。


 後輩達に道を譲り、レッドの世界での役目も終え、いよいよもって私達おかず戦隊ごはんですよはやる事がなくなったので実質解散状態となった。


 なったはずなのに――クセとでもいうべきなのかな? 土曜のいつものあのファミレスに……ミーティングがあるワケでもない、誰かが来ているワケでもないのに私は1人で店に来ていた。

 まあ、来たところで本当にやる事がないのでご飯でも食べて帰ろうかな……なんて考えていた時だった。


「居たっ! 探しましたよピンクさんっ!」


 聞き覚えのある声と呼ばれ方に私が入り口の方へと視線を向ければ――そこに居たのはプリティーで癒しキュアな元地底人アイドル「パンケーキ・ストロベリー・セイント」略してパンストセイントのリーダーであるアイリアちゃんだった。


 アイリアちゃんは私と目が合うと一目散で私の下へとやってくる。

「ピンクさん探しましたよ。今までどこで肉汁を売ってたんですかっ!?」

「に、肉汁……? あ! 油売ってたって事?」

 いや確かに肉汁って油というか肉の脂って一面はあるけどさ……。まあ今はそれはいいとして――

 あ〜そっか! 私達ここ何週間かは最終回が近かったから土日ずっと泊まり込みでレッドの世界行ってたんだっけ……だからアイリアちゃんは土曜にここに来ても私を見つけられなかったって事かな?

「あーごめんね。最近ちょっと異世界に行ってて忙しかったんだよね」

「肉汁を売りに異世界まで行ってたんですか?」

「いやもう肉汁から離れて……」

 でもまあ、冷静になって考えたら肉汁抜きにしてもトンでもない事口走ってるな私。

 とは思いつつもアイリアちゃんは一応察してくれたのか。 

「わかりました。ピンクさんもピンクさんでまた何か脳汁の出そうな厄介な事に巻き込まれていたんですね? で、その用事はもう済んだんですか?」

 肉汁から離れたと思ったら脳汁て……いやもういいやシカトしよ。

「うん。もう終わったけど……何かあったの? 私の事っていうかたぶん私達の事を探してたみたいだけど?」

「はい。その様子だとまだ何も知らないみたいですね? わかりました。大事な話があるのでちょっといいですか?」

「もちろんもちろん。どーぞどーぞ」

 という促しにアイリアちゃんが私の前の席に腰を下ろした。


 そして一息吐く間もなくアイリアちゃんが口を開く。

「率直に言います。ピンクさん達がいない間にごはん戦隊おかずファイブさん達が何者かに襲撃されて壊滅しました」


 ……はっ? ……えっ?


「壊滅っ!?」

「はい。といっても別に殺されたワケじゃなく、ボコボコにされて変身能力やコクと香り、上品な加齢臭などヒーローとしての能力を失ったので実質壊滅したと言える状態です」

 ……うん。まあ確かにそれは壊滅したと言ってもいいかもしれないけど、香りと上品な加齢臭って意味被ってない? ……突っ込むところそこじゃない気もするから突っ込まないでおくけど。

 ……なので。

「えっと。おかずファイブをそこまでボコボコに出来るって事は、メンズ・ブルマに代わる新しい敵が現れたって事?」

「はい。多分そうなります」

「どんなヤツ? それともどんなヤツら? かアイリアちゃんは知ってるの?」

「知ってます。何を隠そうおかずファイブの人達がやられた時、ギリギリのところで彼女達を救出したのはたまたま山本さん家でゲリラライブをやっていた私達パンストセイントだったので」

 し、知ってるかどうか半々くらいの気持ちで訊いたのにスッゴイ偶然! たまたま地下アイドルの正義のヒーローがそんなところでゲリラライブやってるなんて九死に一生ものねおかずファイブは。

「で? どんな感じの敵だったの?」

 私の質問にアイリアちゃんは一つ頷き。

「はい。えっと……敵は間違いなく10代から90代の間で男性もしくは女性。単独である可能性が高いですが組織的な可能性も捨てきれません。そして計画的な襲撃である事はまず間違いないですが突発的な可能性もあるかな……と?」

「つまり何もわかってないって事ね?」

「そうです。ただ、今のはさすがに冗談ですが謎が多いのは事実で、わかっているのは20代前半くらいの若い女性の2人組、もしくは3人組だったという事です」

「えっ? ちょっと待って。若い女性? って事は冗談を抜きにしても怪人じゃなかったって事?」

「はい。少なからず見た目は怪人ではなく普通の女性でした」

 普通の女性ってなると怪人というか敵というより、個人的におかずファイブに恨みをもってる人って可能性もあるのか。じゃあ。

「2人組か3人組か判別がつかない理由は?」

「はい。私達が見ていた限りでは、おかずファイブさんと戦っていたのは2人だけで、残った1人は2人と一緒に行動をしていたようにも見えますが、会話すらしていなかったので本当にコミュ障なだけの仲間なのか、一般通過マダガスカル人かまでは判断出来ませんでした。もちろん戦っていた2人は普通に会話をしていましたし」

 なるほど。2人は戦っていたし会話もしていたから間違いないとして、要は残った1人は何もしてなかったけど最後一緒に撤退とかしたから仲間の可能性があるってところなのかな?

 と私が思考を纏めているとアイリアちゃんが続ける。

「なので敵が組織的なものなのか、その2人もしくは3人だけなのかもわかりません。しかし最も重要なのは――」

 重要なのは?

「その戦っていた2人ですが……私の見立てではレッドさんやブルーさんと互角の強さだと思います。私達もおかずファイブさん達を救出するのが精一杯で、戦っても勝てる気配が微塵もありませんでした」


 !?

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