第28話 不屈の女子力

 とゆーワケでブルーへの聞き込みが終わったのでお次は――

「じゃあ次はグレー頼めるか?」

「はい。お任せ下さい」

 と次はグレーちゃんへの聞き込みが始まった。


「私の能力は代償を支払う事によって強力な魔物を呼び寄せる事が出来ます。所謂いわゆる召喚魔法と言うヤツですね」

「召喚魔法か……さすがにスーツへの応用は難しそうだな?」

 と少し残念そうな小豆ちゃんだけど。

「しかしそれは置いておくとして、代償を支払うとは穏やかな響きではないな……代償とはなんなのだ?」

「えっと、私の体の1部です」

『えっ?』

 平然と答えるグレーちゃんに、小豆ちゃんだけでなく私とキリンちゃんの声が重なる。

「そ、それは大丈夫なのか?」

 心配する小豆ちゃんをよそにグレーちゃんはパタパタと手を振り。

「あ、大丈夫ですよ。基本的に使うのは髪の毛とか爪ですから。それでも十分強力な魔物を呼び出せます」

「ああ、なるほど」

「でも、直接命に関わるような――例えば血や肉、骨や歯グキなどを使えばより強力な魔物を召喚する事も出来ます」

 は、歯茎?

「そしてもし命――私自身を代償に捧げればどんな者でもひと口で丸呑みにする最強と言われている魔神『死相脳労シソウノウロウ』を呼び出す事が可能です」

 死相の……歯槽膿漏しそうのうろう! それは命じゃなくて歯グキを捧げた時に出てこようよっ! てか歯槽膿漏だから噛まずに丸呑みっ!?


 と私は1人で勝手に驚くも話は進み小豆ちゃん。

「なるほど。それはなるべく使わずに済んだ方がいいな?」

 ――同感ね。

「とりあえず召喚魔法をスーツに取り入れるのは難しいという事がわかった。しかし話自体は興味深かったので礼をいうぞグレー」

「いえいえ、どういたしまして」

 と頭を下げるグレーちゃんを確認した後、小豆ちゃんがラストの聞き込み相手であるレッドへと体を向ける。


「じゃあ最後は俺だな」

「宜しく頼む」

「うむ。実は俺には――俺よりも圧倒的に強い幽霊。その幽霊が守護霊としてとり憑いている。生前は俺の世界で世界最強の軍人と言われたヤツだ」

『はぁ?』

 私と小豆ちゃんとキリンちゃんが一斉に頭に疑問符を浮かべる。

「知っての通り俺は元の世界で勇者をしていたが、正直なところ俺が魔王と戦わなくとも、俺の守護霊が魔王と戦っていれば俺の世界はもっと簡単に救われていた。――というより、その屈強な軍人の守護霊が憑いていたからこそ俺が勇者に選ばれたのだ」

 ちょ、それは初耳なんだけど。てっきり実力で勇者になったんだと思ってた。

「いや、言っている事はわかるのだが――いろいろと腑に落ちんな? 特に最強の軍人の守護霊が勇者に憑いていたのに魔王とは戦わなかったのは何故だ?」

 確かに! と言いたくなる小豆ちゃんのツッコミだけどレッドは慌てず騒がず冷静に。

「うむ。尤もな意見だな。だがこれには理由があって――端的に言うと俺の守護霊は最強だが異様に女子力の高い軍人だったのだ」

 何言ってんだコイツ?

 ……と私が首を傾げていると。

「それはつまりオネェ軍人という事か?」

 という小豆ちゃんの質問にレッドは左右に首を振り。

「いや、オネェではない。普通の逞しいおっさんの軍人だがいかんせん女子力が高過ぎて軍人のクセに人殺しより家事をしている方が好きという変わった軍人なのだ」

 いや言い方! まるで軍人さん全員が快楽殺人者みたいな言い方すなっ!! そりゃ軍人さんだって人殺しと家事なら普通は家事選ぶでしょ?

 ――けど。

「少し譬えを挙げれば、その女子力の高さから戦場にはエプロン姿でやってくるのが常。『武器は現地調達で間に合う』と言って家からはフライパンやヘアアイロンといった道具しか持ってこない始末」

 あ、でも立派な変態だった……。

「そしてその戦場では戦闘よりえスポットを探している時間の方が長い」

 あんたの世界インスタあったの? あ、いやえるって別にインスタとは限らないか……。

「更にその戦闘でも――一度ひとたび戦線に立てばかすり傷一つ負わずに洗濯物を干すというつわもの

 戦場で何やってるのその人? 女子力とか関係なくない?

「まあ、そんな事から付いたアダ名が『不死身の女子力』」

 名誉か不名誉かわかりにくい異名ね……まあ不名誉だけど。

「……と。これでわかったと思うが俺の守護霊は圧倒的な強さを兼ね備えているが、その女子力の高さ故に戦闘より美容コスメを優先してしまうため稀にしか戦わん、家事の合間に気紛れでしか戦ってくれんのだ。無論、俺がピンチの時には力を貸してくれるがな」

 いや幽霊が美容する意味あるの? 肌荒れたりするの?

「なるほど話は大体わかった」

 わかったの小豆ちゃん!?

「とは言えスーツのパワーアップの参考になるものはなかったな? 結局3人の話を聞いて役に立ちそうなのはブルーの足が臭くなるくらいか……?」

 いや、どっちかって言ったら女子力の方が役に立たない? 変身したら女子力上がる方が私と小豆ちゃんとしては正解でしょ?


 ――というワケで結局。翌週までに私と小豆ちゃんのスーツはパワーアップしたけど、聞き込みの甲斐はなく普通に大幅なベースアップで終わった。

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