囁き・22
不老不死を望んでいるですって?
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この世界の人間達の永遠のテーマなのね。
永遠に生きるという事が、どういうものなのかは私もよくわからないけれど、限りある命を生きるということは、輝かしいものではないかしら。
この国には、そういう漫画・アニメがあったわね。謎の女性と機械の体をただでもらえる星に、古めかしい列車に乗って旅をして、さまざまな人との出会いや別れ、摩訶不思議な事象を
たしか、こんな内容だったかしら? 一緒に観たアリスは、TV版や劇場版2作で涙を流していたわよ。
私達の世界でも、不老不死は一時期、議論を尽くしたテーマだったわ。そのひとつの答えが、年齢抑制プログラムオプションかしら。私が20歳の
それでも、死は避けられない事象……私達の世界では、死を迎えてもこの世界、この国のような葬儀という行事は存在しないわ。独立した個であるがゆえの死という現象にすぎないのよ。
病気や事故などの可能性が排除された世界で迎える死は、淡々としたものよ。ゆるやかに死を迎え、生涯を閉じる。それを感知した、シンギュラリティ・フォーメイテッド・レセルーション・システム・アフェアーが、どこで死を迎えても、遺体を回収して、焼却処理を請け負う。
体内に埋め込まれたインフォメイタル・パーソナライティア・メイレスを取り出し、私達の世界で最も高価な鉱石のアメルティアに封じ込める。外側は硬く、内部は絶えず虹色に輝き、流体する不思議なアメルティアの中で永遠に眠りにつく……細い円柱形のクリスタリング・カットされたアメルティアが、あなた達の世界でいうお墓であり、墓標ということかしら。
故人を
私達の世界の死というものは、こんな感じかしら。でも、例外条項も存在するわ。
いわゆる、人生を二度生きるという特権が与えられる個がいるということね。
条件としては、多大な功績を成し遂げた個や、影響を与えたアーティスト、連邦捜査官やそれを望む個……など、対象は多くはないけれど、制度としては確立されているわ。
私の、S級特別執行官という立場も、この特権を行使する権利が与えられているわ。
あなた達の世界で気嫌いされている、いわゆるクローン技術を用いて第2の個が創られ、保管される。
リ・インカネーショネル・セーバリング。
それがこの権利の名称……権利の宣言は、いつでも可能。宣言後ただちに、シンギュラリティ・フォーメイテッド・アドバンスド・レセルーション・システムセンターでスペアリングが創られ、センター内の深層部に保管される。スペアリングには新しいインフォメイタル・パーソナライティア・メイレスが実装される。
死を迎える時に最終確認を行い、権利を行使すれば、スペアリングと生体情報をリンクさせて、新たな個体との第2の人生が始まり、古い個体は破棄、焼却される。また、最終確認時に行使をしなければ、スペアリングは破棄される決まりよ。そして緩やかな死が待っている。
通常は、この要領で行うけれど、戦闘中や不意の事件、事故などで生命の危機が生じた時は、インフォメイタル・パーソナライティア・メイレスに意識をリンクして、緊急行使宣言を申請すれば、センターが感知して、瞬時にスペアリングに生体情報や記憶がロードされて権利が緊急行使され、新たな人生が始まる。
おそらく、先の戦闘で私の仲間も、この緊急行使宣言をして、今は第2の人生を楽しんでいるかもしれないわね。もちろん、この特権は無料ではないわ……私達の立場で1500……一般の個で3500パラアータル・マネリアルが必要よ。そして、この権利の行使は一度だけと決められているわ。
これを、この世界の人間は羨ましいと思うかしら? けれど、第2の人生を楽しく生きる個は、実はそう多くはないのよね。どうしてそうなるのかは、わからないわ。
私も、20歳の
それとも、あのアニメのように、限りある命を生きるのかしら……。
今度の女子会で、1000年以上生きているというエルフさんに、
この世界の、私達の世界の人間も限りある命を懸命に、楽しく生きることは、なによりも重要なものなのよね。
その意味では、この世界の葬儀というものと、
なんだか、少し切なくなったわ。
さぁこの次も、この世界のダメなところ
あなたのそばで……
囁いて……ア・ゲ・ル♡
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