エリム・ノイヌーヴの甘い囁き♡

囁き・1

　はぁ……帰りたいわ、元の世界に……。

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　しかし、この地球ってところは科学文明のレベルが低いわね。

　最初に転移してきた時は、軽く絶望したわ。

　それに、この洋服っていう肌に装着するものはなんだかスースーして、私が愛用していたヒートアンド・クーリングマニューバ・ジップスーツとは雲泥の差だわ。

　まぁ、文句ばかり言っても始まらないから、この世界のダメなところを言っていくわね。

　神様？　いったい何かしらそれは。なんだかこの世界では、仏教・キリスト教・イスラム教・儒教・ヒンズー教やら、他にもいろいろな「宗教」が存在するのね。

　そんな実体のない「もの」に縋（すが）って滑稽だと思わないのかしら。この世界の人類は何度も戦争を繰り返してきたらしいわね。

　なかには、宗教が違うだけで殺しあうなんて、非科学的な行為だわ。もう、神はいないと気づくべき時がきているのよ。

　そう自覚しないと、この世界の人類の進化はここで停滞するかもしれないわね。

　私はこの世界にきて間もないけれど、神様なんてなにもしてはくれないわよ。その神様って存在が、戦争・争いを止めてくれたかしら。私が元いた世界では、神なんて概念はなかったわね。あなた達が言うＡＩ？　なるものが近いのかしら、超シンセティック・シンギュラリティ・セーフテッド・システムによって、犯罪も摘み取られ、星系間戦争なんてものもないし、ヒトは独立した「個（こ）」であり、最大限に尊重され、自立権が与えられ、この世界よりも遥かに高度な文明と生活を享受しているのよ。

　神が入る隙なんてないわ。この世界のこんな話をしたら、私のいた世界の人達は、笑ってしまうでしょう。

　それでも、最近は星系間テロリストが勢力を拡大し始めて、脅威になりつつあるのよ。

　どこの世界にも、今のシステムに抗（あらが）う組織は生まれるもの……だから私はＳ級特別執行官になって、彼らと戦っていたのよ。なのに、この世界に転移なんか……。

　弱気になってはいけないわね……この世界を楽しむくらいの気持ちでなければね。

　もう一度言うわよ……神を信じるのは勝手だけど、なにもしてはくれないわよ。もう、わかっているはずよね。所詮、神は「権力」なのよ。

　神というまやかしで人を束ね、従順にする便利なツールなの。

　あまり、のめり込まないでね。

　さぁ、神社で参拝も済ませたし、拠点として買ったタワマンに帰ろうかしら……あら、このラブライブ！　かすてらまんじゅう、美味しいじゃない。疲れた体に沁（し）みるわね。この世界の甘いものは、嫌いじゃないわよ。

　さぁこの次も、この世界のダメなところ

　あなたのそばで……

　囁いて……ア・ゲ・ル♡