第3章 地下アイドル・叛逆編
第84話「明らかになる全貌!奴らの名は叛逆者」
第2章のあらすじ
日に日に勢力を拡大させていく憎愚に対抗する為に全国の新鋭奏者達を集め合同強化合宿を行なっていた達樹達であったが突如地下アイドル達が襲来する。
地下アイドルの狙いは元々虹霓の世界にて活躍していたアイドル因子を宿す奏者達を集める事であり、虹霓のアイドル因子を持つ楠原隼人が攫われてしまった。更に絶望の余り精神を打ち砕かれてしまった石動聖愛も地下アイドルと共に消え去ってしまう。
更に使命を果たした地下アイドル達は置き土産として錬成された憎愚の巨大な塊である盡䖸ノ連成を奏者達へ繰り出す。
その絶望的な憎力の前に絶体絶命の危機に晒される達樹達であったが最愛恋が完全聖転換を発動。圧倒的な力を駆使しデコピン一発で盡䖸ノ連成を消し炭にした。
確実に動き始めている地下アイドル達の暗躍。そんな窮地にオレンジ髪のいかにも活発そうな好青年が達樹達の元へ駆けつけた。
――――――――――
「すみません。一足遅かったみたいですね……ここまで被害が出てしまってるなんて……!」
想武島へと海を駆け急いで向かっていた青年が現着。荒れに荒れた島を見た青年は力強く拳を握り締め表情からは悔しさが滲み出ていた。
「えっと……あんたは?」
「俺は
「久しいな日向。今回の件、何か知ってそうだな」
恋の問いに思い当たる節があると言わんばかりの色が見てとれた。日向は苦しい過去の記憶を辿らせながらも彼らへこれまでの経緯、彼ら地下アイドルの目的地を話す決断をする。
「はい。詳しい事は船内でお話しします。このままでは10年前の戦争をも超える被害が……そうなってしまえばこの国は確実に滅びます」
合同強化合宿は即刻中止となり奏者達は本州へ帰還し対策を練る為Delightの保有する大型客船「ミレニアムクルーズ」へ乗り込む。
負傷した奏者、抗者達は治療室にて処置を受けつつ帰還する中客船の大広間に集まったのは居残り組の隊長各位と輝世達樹と現状を知り寝てなんていられるかと強制的に治療を中断して居座っている市導光也。そして達樹達と同じく同じ隊の隊員を奪われてしまった八番隊姫村和斗と乾詩亜がこの場に身を置いている。各自思いが交錯する重厚な空気の中日向が口を開く。
「皆さんの前に現れたのは地上アイドルの陥落を願い地上アイドルへ復讐する為に暗躍する過激派地下アイドル集団。その名を
そしてその計画を確実なものとする為に奴らは数年もの期間、機を探り力を蓄え続けてきた。そして今計画を確実なものとする為に虹霓の力を集め始めた」
「虹霓?」
頭上に?マークを掲げる達樹。
アイドルの世界は大きく分けて7つの世界に分類されている。その内「救済」の世界から派生して産まれたとされてる世界の内一つが「虹霓」の世界。
楠原隼人の内に宿っていた灯野優菜や石動聖愛の内に宿っていたライア・ソルシェールなどが虹霓世界から魂体として転生してきたアイドルに当たる……という事を最愛恋から説明が入る。更に補足として十番隊隊長鳴瀬博也が解説する。
「合宿前にお前らも同一世界のアイドル因子を宿した奏者達と顔合わせしただろ。同一世界のアイドルとの交流は記憶を断片的に失っている彼女達の記憶従来の力の扱いやスペックを取り戻すことに大きく貢献するんだ」
博也が話し終わり再び日向が叛逆者達の現状を説明する。
「虹霓世界のアイドルの内前線で戦っていた主戦力となるアイドルは12人。その内奴らは8人分の虹霓因子を保持していた所に今回の襲撃で更に二人分の虹霓因子を手に入れた。内一つは幸い君の中にあるから一人分は不完全な状態だとしても叛逆者達の戦力はこの一件で更に強化されてしまった」
「俺の研究施設も襲われたみたいだしな。将人達がやられるなんて……向こうに相当な手練れがいるのは間違いない」
「そちらも把握しています。奴らが奪っていったのは「日輪の系譜」の始祖に当たる存在。
入夏陽毬は灯野優菜や柊陽菜達の世界の派生元である原点の世界。「救済の世界」における核たる存在。日輪の系譜の原点でもある彼女は数多くの異世界アイドル達にとって偉大な存在だと言える。
「それまでの複数の力を同時に扱う事なんて出来るわけ……と思ったけどここで憎力が出てくる訳か」
「はい。憎力を使い人間の限界の壁を無理やり超えさせる事で複数のアイドル因子の力を使役できるようにする。更にそれらの荒技は
「!……それってまさか!」
「はい。
「……復讐心に飲まれちまった訳か」
訳知り顔で事情を大方把握していく隊長達とは対照的に聞き覚えのない名前等、当事者ではなかった達樹達にとっては完全に置いてけぼりな為困惑の態度を示す。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。話に全然ついて行けねぇんだけど」
「あぁ。焔さんってのは何者なんだ?」
(それ以外も訳わかんねー事だらけなんですけど)
引っかかる所そこだけかよ!よくわかってないの俺だけ!?と達樹は光也に対し心の中でツッコミを入れつつ辺りを見渡すと和斗の全く思考が追いついていないような挙動不審ぶりを見て一安心し肩の荷が降りる。
「10年前。地下アイドルという概念は無く知名度もろくに無い超マイナーな文化だった。そんな下火ので中で少しずつ地下アイドルという文化を開拓していったのが
……と恋が語る。続けて専門的知識を幅広く理解している博也が解説する。
「同時に救済世界のアイドル因子を宿す奏者でもあった。焔さん達との邂逅により新たに俺達の認知してきたアイドル因子の世界とは全くの別枠の世界がもう一つ存在する事を知った。
当時彼らとは一悶着ありはしたものの友好な関係を築き上げ憎愚撲滅に向けて手を取り合う中だった……」
「だった……?」
「高月焔は殺された。ある一人の地上アイドルの手によって」
「なっ……!?」
「憎愚に魂を売り、身に余る力を身につけたそいつは焔さんだけでなく救済世界のアイドルを宿す奏者達をも皆殺しにした」
「そんな……」
「だがそんな非道な行いを見過ごす訳がない。そいつは責任を持って俺達が始末した。今更何に復讐しようってんだ」
憎愚の邪悪な意思に染まり人間を捨てた焔の仇は既にこの世を去っている。復讐するべき相手は既にいないはずだと一海は意見する。
「あいつは焔さんが死んだあの日からずっと自分自身を責め続けていました。どれだけ時が経ってもその自責の念は風化する事はなくいつしか快晴は俺たちの前から消えた」
それから時が経ちつい数日前、日向は憎力を手にした快晴と邂逅。そこで快晴の心内と計画を知るも自分の計画に賛同しないとわかると戦闘となってしまう。
憎力とアイドル因子を力を掛け合わせた快晴の力は圧巻そのもので日向は絶体絶命の危機に陥るが日向はギリギリの所で逃走し難を逃れていた。
「あいつはとてつもない力を手に入れていた……憎愚の力を完全に使いこなし憎しみと復讐に心を囚われてしまっていた。今のあいつは仇がどうかなんて関係ない。怒りがとめど無く膨れ上がり抑制が効かなくなってる。放っておけば今いる地上アイドルは一人残らず叛逆者によって殺されてしまう……!」
「そんな事させるかよ!!」
達樹がいても経ってもいられず大声を荒げて叫ぶ。ごちゃごちゃ絡み合う情報量の中一つだけハッキリと理解した。奴らを放っておけば地上アイドルの命が危ない。それは即ち幼馴染である桂木莉乃の命が危険に脅かされている事にもなるからである。
「勿論、俺も見逃すつもりは毛頭ない。全力を尽くして叛逆者達の計画阻止に助力します」
日向は達樹の熱意の籠った言葉に一瞬にして善性を秘めた人間性を感じとり快く解答する。
「日向の中に宿ってるアイドル因子の
「まじっすか!?」
「恐れ多いけど少しでも君の助けになれたら幸いかな。よろしく!」
達樹と日向。二人の桜と日輪の正統後継者が熱い握手を交わす。
「本州に到着次第奴らの拠点を探す。今も本州組が捜索してるが奴らがいつ動き出すかわからないからな」
「それに関してですが一つ候補があります」
叛逆者達の計画実行のタイミングに一つ候補が上がっていた日向が口を開く。
『JAPAN iDOL FES 2023』。大手アイドル事務所が集っての合同ライブが10日後に東京で開催されます。恐らく奴らはこの日に間に合わせるためにこのタイミングで動いたんじゃないかと」
「……かなり濃厚だな」
「おそらく大きな動きがあるのはこの日。10日以内に敵の居場所を見つけて総出で叩けば不意をつける」
「よし!やる事は決まったな!!」
成すべき事を見据えた輝世達樹達。叛逆者達の計画を阻止するために、そして仲間を救う為に乗せたミレニアムクルーズは本州へ向け急行する。
―――― to be continued ――――
あとがき的な補足
【それぞれの世界の名称一覧】
A時空
「絆の世界」以下の世界の元となった核となる世界。(天瀬桜や青凪千聖、桜達の後輩である春風大我、綺羅琴音などが元いた世界)
「
「
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B時空
「救済の世界」以下の世界の元となった核となる世界。(高月焔の内に宿っていた入夏陽毬などが元いた世界)
「
「
「
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