第2話 中華圏西方の周王朝 ~白龍と白虎のまなざし~

 紀元前1040年代、ここは河西回廊。⒈

 河西回廊は、中華圏西方と中央アジアを結ぶ重要な交易路。

 オアシス都市楼蘭(クロライナ)を出発したキャラバン隊は、

 河西回廊の谷間道を通って、中華圏西方の私設狄道てきどう

 交易所に向かっている。⒉3

 キャラバン隊には、交易品(玉ヒスイ)を積んだ馬車やラクダが並び、

 キャラバン警備員が交易路を警戒している。

 突然、饕餮衆西方軍が悪鬼を従え、キャラバン隊を襲撃する。


 「フラワシ様、悪魔より我らを守り給え!」

 キャラバン隊長は、御守のフラワシに唱える。4

 すると守護霊フラワシが降臨。

 紀元前、中央アジア、オリエント世界ではゾロアスター教が信仰されていました。

 フラワシはゾロアスター教の守護霊です。

 フラワシは、日輪を手に持ち優美な翼を有している。

 「悪魔ども立ち去れ!」

 フラワシは、饕餮衆西方軍と悪鬼に向け日輪を掲げた。

 日輪は、目映い光を放った。

 饕餮衆西方軍と悪鬼は、目映い光を見て動きと止めた。

 さらにフラワシは、日輪より烈風を吹かせ始めた。

 饕餮衆西方軍と悪鬼は、烈風に吹き飛ばされどこかへ消えた。


「フラワシ様、ありがとうございます」

「信徒たちよ!さあ行くのだ!使命を全うせよ」

 キャラバン隊は、西回廊を中華圏西方の私設狄道てきどう

 交易所へ進んでいく。


 ここは豫洲、殷墟の王宮。

 殷墟で政務を続ける武王は、周軍の任務を解いた。5

 「もう戦は行わない」

 武王は、周兵士や葛氏軍、将氏軍などの西方の諸侯に宣誓した。

 武王は、兄弟の姫氏叔鮮しゅくせんと姫氏叔度しゅくどそして

 姫氏叔処しゅくしょに殷王族の監視を任せて周に帰国した。6,7,8


 呂尚は、周軍の任務を解かれた後、東方の青州営丘へ、

 姞克は、東北の薊へとそれぞれ赴任して行った。

 しかし丹は、兄武王の様子が気になるので、東方の兗州済寧の領地に

 息子の伯禽はくきんを赴任させた。


 ここは豫洲、洛邑。

 洛邑に到着した武王は、洛邑軍の任務を解いた。

 『周軍、洛邑軍の兵士を故国に帰郷させた。

 武王は、西岳、崋山で軍馬を放し、不戦の宣誓を行った。5』

 また武王は、崋山白龍観にも参拝し中華圏西方の守護霊獣白龍に対して

 不戦の宣誓を行った。

 

 白龍観主太白は、武王の不戦の宣誓を見守っていた。

  「白龍様、周王が不戦の宣誓を行いました」

  「そうであるか太白、中華圏がどう変わるか周王の政治を見守ろうではないか」

 西方の渭河流域の諸侯、家臣、葛氏軍、将氏軍は、武王の不戦の表明に感動した。


 ここは雍州、周都鎬京、王宮。

 武王と丹は、鎬京の王宮に久しぶりにも戻った。

 2人は緊張の糸が切れた。 すると…

 「父上!無事の御帰還おめでとうございます」

 武王の子で、成王と叔虞しゅくぐが王宮の玄関より駆けて来た。

 王宮の玄関には、王后邑姜ゆうきょうが立っている。9,10,11

 子どもたちを見て武王に笑顔が戻った。

「叔父上も無事の御帰還おめでとうございます」

「二人ともありがとう!」

 丹に笑顔が戻った。


 ここは渭河上流域、白龍隴西分観。

 桃白と沢は、分観の山門で領主葛氏と長男実の到着を待っていた。

「父上、兄上ご無事で何よりです」

 「ありがとう桃白、沢」

 四人は久しぶりの再会。


 葛氏は、武王が不戦の宣誓を崋山で行ったことを桃白、沢に語った。

 桃白と沢は、その宣誓に対する喜びを共有し、周国境防備軍が国境警備の任務を

 続けることの重要性を強調した。

  「我ら渭河流域の諸侯と家臣は、周都鎬京の防衛任務をつづけるつもりだ」

  「中華圏西方は、我ら渭河流域の諸侯と周王によって発展するぞ!」

 葛氏は、中華圏西方の発展を願った。


 しかし、隴西地域に秦邑が勃興する。

 秦邑(国)は、中華圏西方の隴西、隴南、狄道そして河西地域を拠点に、

 中華圏と中央アジアとの接続要衝地域を領有する。

 秦邑(国)は、西伯姫昌の戦略の模倣を行い、雍州、梁州を領有する

 野心を抱くようになる。

 ただ、西伯姫昌が行った、五つの徳目の政治の実践を、秦国の歴代

 当主たちは実行しなかった。

 歴代秦当主たちは、中華圏西方の壁になること西方の覇者になろうとした。

 中華圏の交易の主導権を執る野心を抱く。

 そしてさらに秦国は、中華圏の中心地である中原の支配を目指す。


 ここは洮河とうが上流域東岸、私設狄道交易所。

 中央アジアタリム盆地、オアシス都市ホータンよりキャラバン隊が、

 中華圏に交易にやって来た。12

 

梁氏宗家当主と仲間の豪商たちは、ホータンキャラバン隊長と面会している。

 キャラバン隊長は不満をぶちまけています。

 「ここは狭い!治安が悪い!在庫が少ない!」

 「どうすればいいのですか?」

 梁氏宗家当主は、隊長に尋ねた。

 すると。

 「お前たちが黄河と呼んでいる河まで来い!」

 「河西ですか?」

 「不満か?なら我々がキャラバンサライを建設しょう」

 「周王の許可が必要です」

 と梁氏宗家当主が返答した。

 「王の許可を取れ!」隊長が言った

 「仰せの通り伝えましょう」


 河西地域は、商業路シルクロードの一部分を形成する重要な国際通路であり、

 そして中央アジアへの接続要衝です。

 紀元前より中華圏にとって河西地域は、政治、軍事、経済的な要衝であり

 西方遊牧民族や西堯族との係争地でもありました。


 梁宗家当主は、「河西地域、周王朝公認交易所」新設許可を武王に申請する。

 武王は、河西交易所に対して4つの条件で許可した。


 ⒈ 河西交易所は、中華圏の商人が運営を担うこと。

 ⒉ 河西交易所は、周王朝とホータンとの共同事業であること。

 ⒊ キャラバン隊は、周朝廷発行の通行許可証を携帯すること。

 ⒋ 交易所には周国境防備軍が治安維持のために常駐する。

 梁宗家当主は、周王朝公認河西交易所建設のためにホータンのキャラバン隊長と

 交渉を開始する。


 ここは雍州、周都鎬京、王宮。

 その頃武王は、鎬京で勢力的に政務を続けていた。

 しかし武王は、この周王朝の危うさを感じていた。

 2頭の龍が牧野の戦場に降臨。

 中華圏東方守護霊獣青龍と中華圏南方守護霊獣赤龍の2頭の龍が

 五つ徳目を軽んじた紂王に天罰を与えたからだ。

 武王は、龍から何も命を与えてられていないことに不安を感じていたのだ。

 休むことなく政務をつづける武王に、丹は心配し休む様に勧めた。


 武王は丹に心境を明かした。

 父文王は、五つの徳目を政治で実践していて殷王朝の諸侯は姫昌を慕い聖人

 として崇めて帰順した。

  「余は、父文王のように五つの徳目を政治で実践していているだろうか…」

 武王は自問自答する。しかし父文王の足元へもよりつけないと思う。

  「余は、五つの徳目を政治で実践するには何が足りないかと考えると、

  政務をつづけるしかない」 

 この時、丹は、王宮で武王の政務の補佐することを決心する。


 その武王を、中華圏西方の守護霊獣白龍と白虎が見つめていた。

「周王武王によって時代の転換が訪れたな…」

 「ハイ、白龍様」

 白龍が白虎にそう言った。


 第3話 周王朝東方の内乱~殷王族の報復~  つづく


 本文の『』は引用

 文末の数字は解説と引用

 第2話解説と引用を参照

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