五龍の導師シルクロード戦記 第2部 東方五龍の中華圏と西方のオリエント世界

水守悟(みずもりさとる)

第1話 五龍の中華圏と周王朝

 ようこそ、紀元前のユーラシア異世界へ…

 紀元前1040年代、ユーラシア東方中華圏では。

 殷王最後の紂王ちゅうおうは、五つの徳目を軽んじ政治を怠った。

 紂王は、中華圏守護霊獣、青龍と赤龍によって天罰を与えられた。1

 しかし青龍と赤龍は、姫氏発きはつに対して、何も天命を与えて

いなかった。1


 ここは豫洲、殷墟の王宮。

 周国姫氏発は、殷墟の天の社を参拝した。

 そこで天命によって中華圏の天子となり、中華圏を統治する

 王族姫氏きしとなり周王朝を建て武王となった。2

 武王は、紂王によって捕らえられた殷の王族や殷の家臣を解放し

 鹿台に紂王が貯め込んだ財宝を殷墟の民に与えた。2

 

 殷墟の統治は、紂王の子である武庚ぶこうに統治を任せた。

 それに武王は、実弟たちに殷墟の監視を命じた。3

 この武王の判断が後に災いになる。

 

 周王朝は、殷王朝と同様な封建政治を引き継いだ。4

 周王朝を中心に王族、諸侯、家臣がそれぞれ国々を治める都市国家連合。

 中華圏にたくさんの国々が雑居している都市国家の連合体。

 つまり、周王朝は、都市国家連合体を5

 よって周王朝と反周王朝勢力とは、


 武王は、呂尚、耆国駐留軍指揮官丹、冀州封丘軍の指揮官姞克に、

それぞれ領地を分け与えた。 2

 呂尚には、東方の青州営丘を領地として分け与えた。6

 丹には、東方の兗州済寧を領地として分け与えた。7

 姞克には、東北の薊(けい)を領地として分け与えた。8


 周王朝は、東方である揚州、兗州えんしゅう、青州そして東北の薊へと

 拡大し、華東湾岸地域へ拡大していく。


 ここは東岳泰山、青龍観の本堂。 8

 青龍の木像は、青龍観主の歳星さいせいと会話している。

「歳星よ、斉国、魯国、句呉ごこう国の治山治水事業に協力し、使命を

 実行するのだ!」

「仰せの通りに行います、青龍様」

 歳星は青龍に応えた。

 東岳泰山青龍観は、青龍の治山治水の使命の実行を斉国、魯国、

 句呉ごこう国と共同で開始した。10

 しかし、饕餮衆東方軍の遼東半島城が在る。饕餮衆東方軍は北東遊牧民を従え

 揚州、徐州、青州の国々に襲撃の機会をうかがう。

 

 ここは豫洲、嵩山黄龍観、黄龍廟

 黄龍は、観主土黄と会話している。

「土黄よ、周王が中華圏の天子となったと聞いたか?」

「はい、黄龍様。殷はどうなりなしたか?」

「周王は殷の王族に殷墟を引き継がせた。

 殷の王族は、周王に従うことになったのだ」

「愚かな!殷の王族は、やがて周王に反抗するはずです!」

「そうだな。周王が五つの徳目を唱えるだけで中華圏を治めることができる

 と思っているのだ」

「そう願いたいですが…」


 中華圏守護霊獣五龍にとって周王朝は、五龍が目指す秩序ある国

「五つの徳目の国」とは、ほど遠い国の在り方です。

 

 ここは豫洲、黄龍鄭邑分観。

 五黄と葵は黄龍の木像と会話している。

 「五黄よ、鄭邑軍は殷軍に勝利したみんな無事だ」

 「ありがとうございます黄龍様」

 「周王が天子なった。中原は激変していくぞ。しかし、天子が交代しても

 そなたたちは治山治水の使命を実行し五つの徳目を会得するのだ!」

 「はい!黄龍様」

 五黄と葵は、鄭邑軍が無事だったので安心した。


 黄龍観は、殷によって頓挫していた黄河下流域、淮河流域と支流域の

 治山治水事業を周王朝と協力して再開する。

 なお…周王朝成立した時、荊州けいしゅうはまだ人口が少ない地域でした。

 赤龍観と赤龍治水治山技術集団の棟梁ほう氏は、中原に近い

 赤龍丹陽分観で、黄龍観の支援を受けながら、長江中流北岸と漢水の支流の

 治水治山の使命を実行している。

 

 ここは冀州、北岳恒山黒龍観 黒龍廟

「辰星(しんせい)よ、周王は姞克に『東北の薊』を分封した、聞いたか?」

「はい、黒龍様。東北遊牧民族の勢力圏ですね」

「そうだ。冀州では北方、東北の遊牧民族との交流が盛んだ」

 「黒龍様は、北方、東北の遊牧民族を敵対視するのではなく、交流を持ち

 友好を図ることをお考えなのですね」

 「そうだ。中華圏北方、東北の発展に尽力せよ」

 「仰せの通りに行います、黒龍様」


 ここは冀州、黒龍耆国分観 11

 智徳、満堂、水月は黒龍の木像に話し掛けている。

 「智徳、満堂、水月、冀州黄河北岸邑軍は殷軍に勝利したみんな無事だ!」

 「ありがとうございます!黒龍様!」

 「周王が天子になったと聞いた。中原冀州は激変していくだろう。

 しかし、天子が交代しても、そなたたちは治山治水の使命を実行し、

  五つの徳目を会得するのだと忘れるな!」

 「はい黒龍様!」

 「ところで、北方草原地帯に追いやった饕餮衆が、体制を立て直し

 再び中原に向かうとしている」

 「彼らは死んだのではないのですか?黒龍様?」

 智徳が黒龍に尋ねた。

 「奴らは不死魔神である」

 「そうなのかぁ…」

 智徳と満堂は少し落胆しました。 

 でも4人は、冀州黄河北岸邑軍が無事だったので安心した。


 武王は、中原の諸侯に、帰国命令を発した。

 冀州黄河北岸邑郡の魯氏軍、箪氏軍、諸氏軍、朱氏軍は中華圏安寧と

 新しい時代の到来を信じて殷と戦った。

 魯邑の英と叔父の創は、冀州の耆国と黒龍の耆国分観に立ち寄り、

 智徳と再会した。              

 「兄上、叔父上、無事を黒龍様に祈りました!」

 

 箪氏の領主も、黒龍耆国分観に立ち寄り、満堂と水月と無事の再会を喜んだ。

 周王朝時代、北方草原地帯の遊牧民は、交易を求めて、冀州唐国(後の王族国晋)  と交流を持っている。12


 交易品であるシルク(絹織物)、漆器、刻漆器、陶磁器の生産量が、北方遊牧民との交易より増加していく。

 やがて黒龍観と王族国晋は、中華圏北方の恒山に交易所を設置し、中華圏北方、

 東北の草原地帯へと交易路開拓を行う。


 ここはユーラシア北方、草原地帯。

 さて黒龍が、耆国の大行山脈の鉱山地帯より北方へと追われた

 饕餮衆北方本軍は、北方の草原地帯で体勢を立て直す。   

 饕餮衆は、北方遊牧民族を従え再び冀州へ襲撃の機会をうかがう。

 

 饕餮衆北方長は

「我々は不死魔人である。中華圏は、五龍と五龍観の導師のものではない!

 我々は、北方遊牧民族と共に、中原へ侵入を目指す。 

 そして蚩尤を、復活させるのだ!

 我々は、中華圏の国々の王を従わせ人間どもを従えるのだ。

 我々は、中華圏のすべてを我々のものにするのだ!」


 「黒龍が怖いけど…ハッハッハ( ̄∇ ̄;)」

 饕餮衆北方本軍の蚩尤兄弟魔神たちと悪鬼たちは、長の演説に沸き上がった!


 そして中原豫洲。

 豫洲黄河南岸邑郡の鄭邑軍、蔡氏軍、羅氏軍が、黄河岸街道を凱旋した。

 五黄と葵は、街道で平伏し唯、弐に凱旋を賞賛する。

 「見事です兄上、おめでとうございます」

 「ありがとう吾」

 唯が嬉しそうに返事した。 

 豫州黄河南岸邑の鄭邑軍の唯、弐と蔡氏軍、羅氏軍は中華圏安寧と新しい時代の

 到来を信じて殷と戦った。

 しかし、豫洲に姫氏王族国が次々勃興する。

 そして王族国晋は、中華圏の中心地中原冀州、豫洲への政治、経済、

 軍事的影響力を拡大させていく。12


 第2話 中華圏西方と周王朝 つづく


 本文の『』は引用

 文末の数字は解説と引用

 第1話解説と引用を参照

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