第23話 選択
翌朝、冒険者ギルドに皆で向かった。中に入ると丁度、依頼が張り出された掲示板に冒険者達が群がっている時間帯だ。それを無視し、皆を併設された酒場で待たせた、イアン一人だけ受付に向かう。
「冒険者ギルドって凄いですね。朝からこんなに強そうな人が沢山」
「そうね、朝に依頼を受けて夕方には達成して戻るのが基本かしら」
「でも、あそこで依頼を取り合っているのは下級だけどね。もう私達は掲示板に余り見ないけど」
ティアラが初めての光景に驚き、キーラが冒険者の生活サイクルを説明する。そしてナタリーが、何故かマウントを取り、こっそりティアラの褒め言葉に耳を済まして、いい気になっていた冒険者達が落ち込むという一連の流れ。
「それじゃ、皆さんはもっと強いんですね」
「まぁね、これでも上級張ってるから」
「ええ!みんな上級に上がったのか?いつ?」
「ふふふ、丁度この依頼を受ける前にランクアップしたのよ」
「師匠もナタリーさんも凄いです!綺麗だし可愛いし強いし早いし魔法も凄いし!」
「えへへ」
「ふふふ」
アベルも皆のランクが上がっているとは知らなかった。以前は中級の真ん中辺りだったが、上級まで上がるスピードが早くて驚く。そして話を聞いたティアラの褒め殺しに、照れながらも笑顔が溢れ出てくるナタリーとキーラ。
そんな女性達とお近づきになりたい者達もいたが、ジャックが睨むと、近寄らずそそくさと去っていく。
ジャックはここでも盾役。寡黙だが仕事が出来る男だった。
「おいおい、楽しそうだな。何の話だ?」
「「なんでもない」」
「そうですか……」
いつの間にか帰ってきたイアンに、辛辣な仲間二人。絶対にティアラの褒め言葉を聞いたらイアンが調子に乗るのがわかっているからだろう。
「ははは……それでこれからは?」
「ああ、乗合馬車は問題ない。しかし道中に問題がある。ここから予定通り北に向かうが、途中の山でオーガの目撃情報が多数上がっているらしい。なので安全性はかなり厳しい。安全マージンを取るため山越えまでもう一組護衛を雇うか、俺達だけでいくか、一度東に向かって海岸沿いを北上する迂回ルートもあるが、どうするかアベルに相談しにきた」
「そうか……」
「オーガは一匹だけなら俺達でも問題ないが、複数だと少しキツイと思う。二人の安全も考慮するともう一組護衛がほしい。しかし、二人の旅を知る者は、少ない方が良い。この街の冒険者達はアベルを知らないから、正直信頼度が低い。迂回ルートは少し遠回りで時間はかかるが安全だ。海からの風は強いし寒いけどな。どうする?」
真剣に話し合うアベルとイアン。しかし興奮し思わず話に入ってしまうティアラ。
「えっ!海!見てみたいです。あっ、ごめんなさい……」
本で読んだことしかない海が見えるかもと、期待が膨らんで思わず言ってしまった後に謝るティアラ。
「ははは、なら迂回ルートで頼むよイアン」
まだ余裕があるだろうと、それを笑いながら、迂回ルートを選択するアベル。
「あいよ。ならそのルートで打ち合わせしてくる」
「よし、魚が食える」
イアンは再び戻り、ジャックは好物の魚料理が食べれることに期待を膨らました。
しかし確実に追手は迫っていたのだった。
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