143.鉄壁ガード発動のニワトリスたちと、ホテルに戻った俺
セマカさんたちはついさっきこの街に着いたばかりで、ホテルはまだ決めていなかったらしい。だったら部屋も余ってるから一緒に泊まればいいんじゃないかと思ったんだけど、俺たちの部屋って無料にしてもらってるからどうなんだろう。そんな話を道すがらした。
「同じ部屋でもいいけどぉ……だったら私たちは別に料金を払った方がいいわよね」
「そうだな」
リフさんとセマカさんが話すのを聞きながら、そう考えられるっていいよなと思った。
得をしようとは思わないけど、誰かの部屋に間借りできたら部屋代が浮くかも、とか俺ならすぐに思ってしまう。
そういえば彼らはAランク冒険者だし、貴族なんだよなぁ。金に困ったこととかなさそう。(俺の偏見だ)
セマカさん、リフさんも一緒にホテルに戻ると、イハウスさんが迎えに来てくれた。
「オカイイ様、オトカ様、従魔のみなさまお帰りなさいませ。そちらは……」
「知り合いだ。同じ部屋に泊めてもいいだろうか? 金は払わせる」
「ご一緒にお泊まりですね。料金は必要ございませんので、何日でもご滞在くださいませ」
イハウスさんはそう言うと恭しく頭を下げた。
一泊大銀貨四枚の部屋がただとか。もうなんか感覚が麻痺してきたなー。これが当たり前とは思わないようにしよう。(何度目かの戒め)
「あらぁ、オカイイたちの部屋に間借りしちゃっていいの? 太っ腹ねぇ」
リフさんがそう言って笑った。しゃべり方はアレだけど、黒髪の美女っぷりが素晴らしい。
リフさんに見惚れていたらシロちゃんに後ろからつつかれた。俺はホテルの中でも
「いてっ、シロちゃん痛いよー」
後ろにいるからだっこできない。つらい。あとで思いっきりだっこしてやると思った。
離れに案内されると、セマカさんたちは居間の中を見回した。
「いいところを借りたんだな」
「ああ、従魔がいるからな。ホテル側の配慮だ」
離れには部屋がいくつもあるから、セマカさんとリフさんが泊まっても余裕だったりする。最初羅羅には別の部屋を使うかどうか聞いたら、「主の側にいなくて何とする!」って怒られてしまった。寝る時ぐらい気が抜ける方がいいと思ったんだけど、そういうものではないみたいだ。
イハウスさんがお茶を淹れてくれ、お茶菓子を出してくれた。
お茶をしながら明日のことについて話すことにした。
ちなみに、羅羅から下りた後シロちゃんを捕まえようとしたけど、ぴゅーっと逃げられてしまった。俺がだっこしようとしたのがバレたらしい。夜寝る時はくっついてきてくれるんだけど、普段はつれないよなぁ。
でもぴゅーって逃げたけど、離れたところで振り返ってコキャッて首を傾げるのがかわいい。
「シロちゃーん、おいでー」
「ヤダー」
「そんなー」
ってことで、傷心の俺はソファでクロちゃんをだっこしている。いつもだっこさせてくれるクロちゃんが貴重です。愛してます。
俺の隣にはセマカさん、そのまた隣にリフさんが腰かけている。俺の隣にリフさんが座ろうとしたらクロちゃんが「ダメー」と言ったからだ。
クロちゃんガードは鉄壁である。
「明日はダンジョンへ行くんだったか」
「ああ、ここから一番近いキールダンジョンへ向かう」
「キールって確か二層しかなかったけど、すごく広いんじゃなかったかしら?」
「ああ、かなり広い。だがオトカには機動力があるから、見てくるだけなら泊まらなくても済むだろう」
「朝早く出れば……日が変わる前には戻ってこられそうね。一日がかりだけど」
大人の足で歩いて一日半て聞いた気がするけど、それでも日帰りするのかと思った。どんだけシュワイさんたちは速いんだろう。
「せっかくテントも買ったんだから一泊してきてもいいんじゃないか?」
「それは野宿する際に使えばいい。不測の事態に備えただけだ」
「それにしちゃ高い買物だな」
セマカさんが笑う。俺もそう思う。内心頷いた。
「……キタニシ町は魔道具が豊富だからな。いるうちに買っておく方がいいだろう」
「それはそうだな」
午後は明日の荷物の確認をし、明日は早く出ると決まった。いつもより早い時間だが、イハウスさんが対応してくれるらしい。なんだったらお弁当も用意すると言ってくれたけど、それは断った。
ホテルの食事にはうちの従魔たちとシュワイさんが狩ってきた魔獣の肉を使用してもらっている。セマカさんもリフさんも魔獣の肉に舌鼓を打った。
「こんなうまいものが食えるんじゃ、もうオカイイたちからは離れられないな」
「そうね。どこまでも付いていくわ」
セマカさんとリフさんが真面目な顔で言うから笑ってしまった。俺はいつも通り魔獣の肉を切り分けて庭でごはんをあげた。ピーちゃんには野草や毒草などを。ピーちゃんは人に飼われていた期間が長いから火が通ったものも食べるみたいだけど、基本は生がいいらしい。
「ドクー、ナマー、オイシー!」
「あー、毒草って火を入れてもあんまり毒性は抜けない印象だけどやっぱ少しは抜けるもんなー」
俺はできれば火を入れた方がいいけどね。これは味覚の問題かもしれないと納得した。
夕飯後、支配人のキスイダネカさんが挨拶に来た。その際にセマカさんが料金を払う旨伝えたが、丁重に断られてしまった。
支配人が戻っていった後、
「おい、オカイイ。いったい何をしたんだ?」
といぶかしげな顔でセマカさんに聞かれた。
「たいしたことはしていない」
「嘘だろー」
どうやら相部屋の場合料金が発生するのは当たり前なのだそうだ。そう考えるとあの支配人は太っ腹かもしれないと見直したのだった。
次の更新は、18日(月)です。よろしくー
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